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【アプリ紹介】介護そっとねっと 元理学療法士のエンジニアが、介護家族の孤立をなくすアプリを作った理由



はじめに

前回の自己紹介記事で、「次は介護家族向けSNSを作った話を書きます」と予告していました。

今回はその話です。

僕がいま開発に携わっている「介護そっとねっと」というアプリ。在宅介護をしている家族同士が、匿名でつながれるコミュニティSNSです。

なぜ元理学療法士のエンジニアが介護のアプリを作っているのか。どんな設計思想で、どんな技術で作っているのか。開発のリアルを書いていきます。

(↓↓アプリダウンロードはこちらから↓↓)


理学療法士時代に見た、患者の"家族"の姿

リハビリの現場では、当然ながら患者さんが主役です。

でも7年間現場にいて、ずっと気になっていた存在がいました。患者さんの家族です。

毎日面会に来るお嫁さん。仕事帰りに駆けつける息子さん。「先生、家ではこんな感じなんですけど大丈夫でしょうか」と、不安そうに聞いてくる奥さん。

僕が「大丈夫ですよ、順調ですよ」と答えると、少しだけ肩の力が抜ける。でもその表情の奥に、ずっと疲れが溜まっているのが見えていました。

「大丈夫です」と言いながら、全然大丈夫じゃない人たち。

家に帰れば介護が待っている。相談できる人がいない。同じ経験をしている人が周りにいない。「自分が頑張らなきゃ」と思い続けて、ふとした瞬間に心が折れそうになる。

当時の僕には、その人たちに対して何もできませんでした。リハビリの専門家であって、家族の心のケアをする立場ではなかったから。

でも「いつかこの問題に向き合いたい」という気持ちは、ずっと残っていました。


「相談先がない」という問題

エンジニアになって、改めて介護の分野を調べてみました。

介護の情報サイトはたくさんあります。制度の解説、施設の検索、専門家への相談窓口。情報を「知る」ためのサービスは充実しています。

でも、一つだけ見当たらないものがありました。

「今日つらかった」を、ただ聞いてもらえる場所。

Facebookグループはある。LINEのオープンチャットもある。でも実名やアカウントが紐づくSNSでは、介護のリアルな悩みは書きにくい。「親の介護がつらい」と書いたら、誰かに見られるかもしれない。

既存のサービスは「情報提供」が中心で、「感情を共有する場」 が圧倒的に足りていなかった。

じゃあ、作ろう。

技術は手元にある。介護の現場感覚もある。エンジニアになった理由が「仕組みで届けられる範囲を広げたい」だったのなら、まさにこれがその仕事だと思いました。


「介護そっとねっと」のコンセプト

ビジョンは一つだけ。

「介護家族が孤立しない社会をつくる」

既存のSNSの上に介護コミュニティを作るのではなく、介護家族のためにゼロから設計した匿名コミュニティSNSです。

名前の「そっと」には、「そっと寄り添う」「そっと立ち寄れる」という意味を込めています。無理に明るくしなくてもいい。読むだけでもいい。ここが、介護をしている人にとっての小さな居場所になればいい。


イメージキャラクターの羊の”そっとん”です!

「いいね」ではなく「わかるよ」にした理由

設計で最初に決めたのは、リアクションボタンの名前でした。

一般的なSNSでは「いいね」が基本です。でも介護の文脈では、それが合わない場面が多い。

「今日、母に怒鳴ってしまった」という投稿に「いいね」は押せない。でも「その気持ち、わかる」とは言える。

だから「介護そっとねっと」のリアクションは 「わかるよ」 にしました。

これは単なる言葉の違いではなく、コミュニティ全体のトーンを決める設計判断です。

「いいね」が主軸のSNSでは、明るい投稿やポジティブなコンテンツが評価される。でも介護の世界では、つらいことを正直に書ける場所のほうが価値がある。

「わかるよ」が最初のリアクションであるコミュニティなら、暗い話題も、弱音も、罪悪感の告白も、安心して投稿できる。感情が主役になるUI設計を、ボタン一つから始めました。

感情タグで「同じ境遇の人」とつながる

投稿にはテキストだけでなく、感情タグをつけられるようにしています。「つらい」「うれしい」「感謝」「不安」「怒り」など。

これには2つの意図があります。

一つは、投稿のハードルを下げること。長い文章を書かなくても、感情タグを選ぶだけで「今の気持ち」を表現できる。「今日のひとこと」的な気軽さで参加できるようにしたかった。

もう一つは、同じ気持ちの人とつながりやすくすること。「不安」タグの投稿を読んでいる人は、自分も不安を抱えている人。タイムラインを感情で絞り込めることで、「この人は自分と同じだ」と感じられる出会いが生まれやすくなります。

将来的には、介護歴や介護の種類(認知症、身体介護、遠距離介護など)も組み合わせて、より近い境遇の人同士をマッチングする仕組みも考えています。


匿名で安全な場所を、技術で守る

「感情を共有する場」を作るなら、安全性は妥協できない

介護の悩みはとてもデリケートです。実名では言えないことを書ける場所だからこそ、その場が荒れたら終わりです。一度でも「ここは安全じゃない」と感じたら、二度と戻ってきてもらえない。

だから安全設計にはかなり力を入れています。

完全匿名の設計

プロフィールに必要な情報は、アイコン・介護歴・地域だけ。実名も顔写真も不要です。

匿名だからこそ言えることがある。「施設に入れたいと思っている自分は親不孝なのか」「もう限界かもしれない」。そういう本音が出せる場所にするために、匿名であることは設計の根幹です。

三重のモデレーション体制

匿名コミュニティは、放置すると荒れるリスクがある。だから防御の仕組みを複数のレイヤーで用意しています。

1層目: 自動検知
禁止ワードのリストを用意していて、投稿時に自動でチェックがかかります。重大度やカテゴリで分類しているので、即座にブロックすべきものと、目視確認が必要なものを分けて処理できます。

2層目: ユーザー報告
投稿やコメント、ユーザーに対して報告ボタンを設置。「この投稿は問題がある」と感じたユーザーがワンタップで通報できます。

3層目: モデレーションログ
すべてのモデレーションアクション(警告、非表示、凍結など)を記録しています。「なぜこの投稿が削除されたのか」を後から追えるようにすることで、運営の透明性を保ちます。

「医療助言ではない」という線引き

介護の相談をする場を作ると、どうしても医療的な助言に踏み込むリスクがあります。

「こういう薬がいいよ」「こういう治療法があるよ」――善意の投稿であっても、それが医療行為に該当すると法的な問題になる。アプリストアの審査でも、メンタルヘルス・医療系のアプリには厳しい基準があります。

だからアプリ内では「ここは医療助言の場ではなく、感情を共有する場です」という位置づけを明確にしています。初回利用時のガイドツアーで説明し、公的な相談窓口へのリンクも常に提示しています。

安全な場所は、技術と設計で守れる。 ここは手を抜かないと最初に決めました。


小規模チームでの技術選定と開発のリアル

このアプリは、少数精鋭のチームで開発しています。少人数だからこそ、技術選定は「やりたいこと」ではなく「限られたリソースで最も速く・安全に動くもの」で選びました。

技術スタックの選定理由

Next.js(フロントエンド + API)
Reactベースでフロントとバックエンドを一体で開発できること。SSR(サーバーサイドレンダリング)でSEOにも対応できること。この2点が決め手でした。2人チームでフロントとバックを別々のフレームワークで管理するのは現実的ではないので、Next.jsに寄せる判断をしています。

Supabase(データベース + 認証)
PostgreSQLベースのBaaS(Backend as a Service)で、認証・データベース・ストレージ・リアルタイム機能がワンセットで使えます。SQLを直接叩けるので、ORMだけでは対応しきれない複雑なクエリにも柔軟に対応できる。Firebaseと迷いましたが、リレーショナルDBが必要なコミュニティアプリではSupabaseのほうが相性が良かった。

Prisma(ORM)
TypeScriptとの型安全な連携が大きい。スキーマ定義からTypeの型が自動生成されるので、DBのカラム名を間違えるようなバグがコンパイル時に防げます。2人チームでは「バグを事前に防ぐ」仕組みの価値が特に大きい。

フィーチャーフラグで段階リリース

新しい機能を出すとき、全ユーザーに一斉公開するのはリスクがあります。

だからフィーチャーフラグの仕組みを入れています。「この機能は全体の10%のユーザーにだけ表示する」「特定のユーザーにだけ先行公開する」といった制御ができる。2人チームでも、安全に段階的なリリースができるようにしています。

通知の設計

コミュニティアプリにおいて、通知はユーザーが戻ってくる理由そのものです。

「あなたの投稿に"わかるよ"がつきました」「同じ気持ちの人が新しい投稿をしました」。こうした通知が、アプリを開くきっかけになる。

ただし、通知が多すぎると逆効果。特に介護で疲れている人にとって、アプリからの頻繁な通知はストレスになります。だから通知の頻度は控えめに、文言はやさしいトーンに統一しています。

Claude Codeを使ったAI駆動開発

開発のワークフロー自体にもAIを活用しています。

Claude Codeを使って、設計の壁打ち、コードの生成、テストの作成、ドキュメントの整備まで幅広く活用しています。チームの開発速度を、AIが3〜4人分に引き上げてくれている感覚です。

特に効いているのが、設計判断の壁打ち。「このテーブル設計でスケールするか」「この通知の頻度はユーザーにとって適切か」といった問いを投げると、考慮すべき観点を網羅的に返してくれる。最終判断は人間がするけれど、判断材料を集めるスピードが圧倒的に速くなりました。


30〜60代に「使い続けてもらう」ためのUI設計

ターゲットは40〜60代の在宅介護をしている家族。多くはSNSに詳しくない層です。

「ダウンロードしてもらう」だけなら、LPや広告で何とかなる。でも使い続けてもらうには、最初の体験で「自分にも使える」と感じてもらう必要がある。

初回の体験設計

アプリを開いて最初に目に入るのは、ガイドツアーです。「ここは匿名で安全な場所です」「まずは読むだけでも大丈夫です」という安心メッセージから始まる。

多くのSNSは「まず投稿しよう!」と促しますが、介護家族は最初から発信する気持ちの余裕がないことが多い。だから 「見るだけ」でも十分に価値がある設計 にしています。他の人の投稿を読んで「同じ思いの人がいるんだ」と感じるだけで、孤立感は少し和らぐ。

やさしいトーン設計

通知文、ボタンのラベル、エラーメッセージ。すべて「やさしい言葉」で統一しています。

たとえばエラーが出たときに「エラーが発生しました」ではなく、「うまくいきませんでした。もう一度試してみてください」。細かいことだけど、疲れている人にとっては、画面の言葉一つで気持ちが変わる

テーマカラーはオレンジ系で、温かみのある印象に。マスコットキャラクターも配置していて、アプリ全体が「やさしい雰囲気」になるよう意識しています。


まとめ

理学療法士の7年間で見た「家族の孤立」という問題を、エンジニアとして技術で解決しようとしています。

  • 「わかるよ」ボタンと感情タグで、感情が主役のコミュニティを設計した

  • 三重のモデレーション体制で、匿名でも安全な場を技術で守っている

  • 2人チーム × AI駆動開発で、限られたリソースでプロダクトを作り続けている

  • 30〜60代が使い続けられるUI設計を、画面の言葉一つから考えている

まだ小さなコミュニティです。でもここから一人ずつ、「孤立しなくていいんだ」と感じてくれる人を増やしていきたい。

フィールドは変わったけれど、「誰かの困りごとを解決したい」という根っこは、理学療法士の頃とまったく同じです。


介護そっとねっとについて

「介護そっとねっと」は、在宅介護をしている家族のための匿名コミュニティSNSです。

同じ立場の人とつながりたい方、介護の悩みを誰かに聞いてほしい方。よかったら覗いてみてください。

よければこちらの記事にも詳細が載っています。
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