訪問リハビリスタッフが災害時に備えておくべきこと

〜在宅で暮らす利用者の命と生活を守るために理学療法士ができる準備〜

地震、豪雨、台風などの自然災害が発生した時、訪問リハビリスタッフの役割は「普段のリハビリを継続すること」だけではありません。

在宅で生活している高齢者、障害のある方、医療的ケアが必要な方は、災害による環境変化の影響を大きく受けます。

特に訪問リハビリでは、利用者の身体機能・生活環境・家族背景を把握している専門職として、災害前から備えることが重要です。



1. 利用者の「災害時リスク」を把握する

訪問時から以下の視点で評価しておくことが重要です。

身体機能面

* 歩行能力
* 移乗能力
* 階段昇降能力
* 車椅子操作能力
* 床からの立ち上がり能力
* 持久力
* 呼吸状態

例えば、

「普段は杖歩行だが、停電時に夜間トイレまで安全に移動できるか」

「エレベーター停止時に避難可能か」

という視点が必要です。



2. 災害時要配慮者としての課題を整理する

特に注意が必要なのは以下の利用者です。

高リスク例

* 脳卒中後遺症
* パーキンソン病
* ALSなど神経難病
* 脊髄損傷
* 重度心疾患
* 呼吸器疾患
* 認知症
* 小児疾患
* がん終末期
* 人工呼吸器・吸引など医療ケアが必要な方

災害時には、
「移動できない」
「薬が不足する」
「電源確保ができない」
「避難所生活が難しい」

などの問題が起こります。



3. 個別避難計画を意識する

訪問リハビリスタッフは、利用者ごとの避難方法を考える必要があります。

確認ポイント:

□ 避難場所
□ 避難経路
□ 移動手段
□ 介助者の有無
□ 福祉用具の必要性
□ 緊急連絡先
□ 医療情報

特に車椅子利用者では、

* 段差
* 道路状況
* 避難所トイレ環境
* 休めるスペース

まで考えることが大切です。



4. 福祉用具・装具の災害対策

災害時には福祉用具が生活維持に直結します。

確認しておきたい項目:

車椅子

* タイヤの空気
* ブレーキ
* クッション状態

装具

* サイズ
* 破損
* 代替手段

電動機器

* バッテリー
* 充電方法
* 予備電源

人工呼吸器や電動車椅子利用者では、停電対策が生命維持につながります。



5. 避難生活で起こる身体機能低下を予防する

災害後に問題となるのが「生活不活発病」です。

避難生活では、

* 長時間座っている
* 歩く機会が減る
* 食事量が低下する
* 水分摂取が減る

ことで急速に身体機能が低下します。

理学療法士は、

避難所でできる運動

* 足首運動
* 膝伸ばし運動
* 座位での足踏み
* 立ち座り練習
* 深呼吸

など、安全な活動を提案できます。



6. 災害時の訪問リハスタッフ自身の準備

支援する側が動けなければ利用者を守れません。

準備しておくもの:

個人装備

* ヘルメット
* 軍手
* 懐中電灯
* モバイルバッテリー
* 飲料水
* 非常食
* マスク
* 携帯トイレ

情報管理

* 利用者リスト
* 緊急連絡網
* 訪問ルート
* 災害時対応マニュアル



7. 訪問看護ステーションとして準備すること

事業所では以下が重要です。

BCP(事業継続計画)の整備

* 災害発生時の連絡体制
* 優先訪問する利用者の選定
* スタッフ安否確認方法
* 記録データ管理
* 代替拠点

特に訪問系サービスでは、災害後も「誰を優先して支援するか」という判断が求められます。



理学療法士が災害時に果たす本当の役割

災害リハビリテーションとは、単に筋力を維持することではありません。

「その人が災害後も、その人らしい生活を続けられるよう支援すること」

です。

訪問リハビリスタッフは、利用者の家で生活を見ているからこそ、

* 何が困るのか
* 何ができなくなるのか
* 何を準備すべきなのか

を一番理解できる専門職です。

平時の訪問から災害への備えを始めることが、災害関連死を防ぐ第一歩になります。

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