ソーダ水の喫茶店にて
炭酸の泡に染まりたくなる時がある。
夏の暑い日だと、
季節に後押しされてるように感じるけれど、
秋にも、夜にだって染まりたくなる。
昔ながらの、お花が描かれたステムグラスに
鮮やかなグリーンやブルーの炭酸。
グラスに流れる水滴が
静かに時間を刻んでいる。
微かに聞こえる
シュワシュワという泡の声だけが
耳を擽り、
優しい微睡みへと導いてくれる。
体が沈むほど疲れている時ほど、
外で泡に包まれたくなる。
静かな、薄暗く、金魚がいる喫茶店がいい。
ステンドグラスのランプもあると嬉しい。
贅沢を言うなら、
窓の外には柔らかい雨が降って欲しい。
ストローをそっと回すと、
カラカラと氷が、ソーダ水を泳ぐ。
ステムグラスを見つめるだけで、
泡の世界へと溶けていく。
泡に染まって、泡に閉じ込めてくれないか。
そうしたら、
ぽつぽつと溜まった痛みたちを
泡が連れて行ってくれるから。
泡に染まって、泡で守ってくれないか。
そして、
雨粒に滲む泡の中
ステンドグラスの光に揺れた
金魚が
美しく、泳いで
くれたなら…
………
カラカラ…
カラカラ…と
泳ぐ氷のその音で
私はまた、
帰ってくる。
