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お金よりも大切なもの――ある講演から考える「つながり」と仕事の本質

こんにちは、名和野です。
先日、仕事がら高校生対象の講演会を聴講できる機会に恵まれ、その講演会から考えさせられたことについて書きたいと思います。

「自分たちの未来は明るいの?」「どうやってお金を儲けて暮らしていけばいいの?」「NISAはやっておくべき?」「本当に好きなことをやっていて食べていけるの?」「これからの時代、私たちはどんな力を身につけて生きていけばいいの?」 そんなことを、今の子どもたちは日々の生活の中で考え、実感しているのではないでしょうか。

社会を見渡せば、日々のニュースの中で、世界情勢の不安定さや、日本経済の不透明感、国民生活の経済格差などの話題が飛び交わない日はありません。そして先の見えない変化に対する焦燥感を抱いている人も少なくないように感じます。人生100年時代、定年しても平均寿命までいく年もある私でさえも、どのように生きていくか焦ってしまいます。


■はじめに

巻頭で書いた講演会とは、社会的金融教育家・作家として知られる田内学氏がある高校に招かれて行ったもので、そのテーマは「未来をどう生きたいか?〜お金と社会から考える高校生のキャリア教育〜」というもの。

これからの時代を担う高校生たちに向けて語られたそのメッセージは、単なるビジネスや経済のノウハウにとどまらず、私たちがこれからどう生き、どう社会と関わるべきかという本質を突くものでした。

田内氏自身の経験に裏打ちされた講演は、高校生をはじめ、その会場に参加していた保護者や教員も飽きさせないようなクイズや、会場との一問一答のやり取りを交えながら、深い学びができるような形式となっていました。

その講演会の中心に添えられたのが「お金」です。昔は高校生に「お金を稼ぐ」話はどこかタブーなものでした。しかし、今や教育課程も変わり、家庭科などで金融教育を行っている時代です。ましてや、未来が見通せない社会において、何が大切になるのかを考えると、「お金」の話をしっかり高校生段階から考えることは、絶対的に必要なことだと私は以前から思っていました。

■ 「お金」だけに囚われると、かえって選択肢が狭まる

私が講演を通して受け取ったメッセージは、「お金は大切だが、お金だけを目的にしてしまうと、自分の選択肢をかえって狭めてしまう」ということでした。

私たちは、ともすれば「稼ぐ=お金をたくさん手に入れること」と考えがちです。就職して地位を上げ、高い給料をもらう、投資をしてお金を増やすなど、目の前の効率や、より多くの報酬が得られる手段ばかりを追い求めてしまいます。

しかし、田内氏はこう説きます。私たちが生きていくためには、次の三つの資本が必要だと。

・人的資本(知識・経験など)
・社会資本(信頼・人間関係など)
・金融資本(お金など)

私たちは将来への不安から、どうしても金融資本、つまり「お金」を増やすことばかりに目が向きがちです。しかし田内氏は、自分の能力を高める人的資本、そして仲間や信頼関係を築く社会資本もまた、人生の選択肢を広げる上で欠かせないと語られました。

私にとって特に印象的だったのは、社会資本という考え方です。困難に直面したとき、自分一人の能力だけでは乗り越えられないことがあります。また、お金ですべての問題を解決できるわけでもありません。そうしたときに支えになるのが、信頼できる仲間や人とのつながりです。

私はこの話を聞きながら、「何をどれだけ持っているか」ではなく、「誰と社会をつくっていくか」という視点の大切さを改めて考えさせられました。

■人生の岐路で支えられてきた「つながり」の重み

私自身、これまでの長い作家活動や、学校運営・教育行政の現場において、幾度となく大きな壁に直面してきました。

美術の世界も、教育の現場も、決して平坦な道のりではありません。思い描いた表現が形にならず苦悩した日もあれば、学校運営において予期せぬ困難や責任の重さに押しつぶされそうになった時が多々ありました。

しかし、振り返ってみれば、私がその時々の困難を乗り越え、今日まで歩みを続けることができたのは、決して自分一人の力などではありません。

一番の支援者はもちろん親や家族です。特に売れない作家活動ではどれだけ金銭面的な援助も含め支援があったことか。田内氏も講演で「誰も助けてくれない中でも、親御さんだけが見返りなく支援してくれる」と発言していました。

しかし、それだけでは、多くのことは良い方向には向かいません。「困ったときにお互い様」と声をかけてくれた同僚たち。未熟な私を信じて支えてくれた保護者や地域の皆様。そして、苦楽を共にした仲間たちの温かい存在。などなど。

どれほど多くの方々に助けられ、支えてきたことか。今でも言葉では言い表せないほどの感謝の念が込み上げてきます。

人は一人では生きていけません。そして、何か新しい価値を生み出し、困難を乗り越えていくとき、最後に背中を押してくれるのは、効率的なシステムでもマニュアル化されたノウハウでもなく、「この人のために」「この人とともに」という血の通った人とのつながりなのです。

■AI時代にこそ問われる「社会とのつながり」

世間では「AI時代にどんな仕事が生まれ、何が生き残るのか」という議論が盛んに行われています。

田内氏は講演の中で、AIは問題を解決する力に優れている一方で、「人々が何に困っているのか」「社会にはどのような課題が存在するのか」といった問題そのものを発見することは得意ではないと語られました。

確かに、知識の検索や分析、答えを導く作業については、今後ますますAIが大きな役割を果たしていくでしょう。しかし、目の前の人の悩みに気づき、社会の中にある課題を見つけ出し、「こうした社会にしたい」という願いを持って新しい価値をつくろうとする営みは、依然として人間に委ねられています。

これからの時代に求められる「稼ぐ力」とは、単なる競争に勝つための能力だけではないように思います。

田内氏は、「社会のためを考えた方が結果として生きやすい」という趣旨のお話をされていました。生きていくためには人的資本、社会資本、金融資本の三つが必要ですが、そのうえで社会のために何ができるかを考えることが、自らの選択肢を広げることにもつながるという視点です。

誰かの困りごとや社会の課題に関心を持ち、それを解決するために仲間と協力しながら取り組む。そのような姿勢を持つ人のもとには、自然と協力者や支援者が集まり、結果として自分の選択肢も広がっていくのではないでしょうか。

これは単なる道徳論ではなく、「社会のためを考えることが、自分自身の可能性を広げることにもつながる」という、極めて現実的な生き方の提案だと私は受け止めました。

そしてAI時代だからこそ、

・社会の課題に気づく感性
・多様な人々と協働する力
・信頼関係を築きながら共通の目標を追求する力

が、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

田内氏は講演の中で、「あれほど能力の高い大谷翔平選手ですら周りのことを考えている」と語られていました。確かに、どれほど優れた才能を持つ人であっても、一人だけで成果を生み出しているわけではありません。自らの能力を高める人的資本と同時に、人との信頼関係という社会資本を育むことが、人生の選択肢を広げることにつながるのだと改めて感じました。

お金は、価値を交換するための便利な道具に過ぎません。しかし、信頼や温かいつながりという「社会資本」は、人生が大きく揺らいだときや、新しい挑戦へ踏み出すときの、最も力強いセーフティネットとなります。

■おわりに

私たち大人が次世代の子どもたちや、これからの未来を生きる若者たちに手渡すべきものは、単なる知識や技術だけではないはずです。

AIが急速に発達する時代だからこそ、

「社会の中で何が求められているのか」
「自分は誰とどのような未来をつくっていきたいのか」

を問い続ける姿勢が、ますます重要になっていくのではないでしょうか。

もちろん、お金について学ぶことも大切です。しかし、お金だけを人生の目的にしてしまうのではなく、自らの経験や能力を磨きながら、人との信頼関係を築き、社会とのつながりの中で生きていくこと。その積み重ねが、結果として人生の選択肢を増やし、豊かな未来へとつながっていくのだと思います。

長い作家活動と教育の現場で私自身が学んできたことも、まさにそのことでした。

人は一人では生きていけません。

人的資本、社会資本、金融資本という三つの資本の価値を理解しながら、自分のためだけではなく、周囲の人や社会にも目を向けて生きていく。そのような生き方こそが、これからの時代をしなやかに歩んでいくための「生きる力」なのではないかと思います。

個人主義が広がる社会の中で、常に周囲の人や社会に目を向け続けることは決して容易なことではありません。しかし、自分だけの利益ではなく、目の前の誰かの困りごとや社会の課題に関心を寄せる姿勢を忘れたくないと思います。

そのような小さな気づきと行動の積み重ねの先にこそ、私たちが目指すべき豊かな社会と、真の「生きる力」が育まれる未来があるのではないでしょうか。

そして、そのような社会を支える一人として、自分自身も学び続けていきたいと思います。


では、周りを巻き込み、協力者を増やしていくためには、どのような力が求められるのでしょうか。ある経営者が高校生たちとの対話の中で、「狭い世界にこもっていないで、若い時から違う世界に飛び出すことが必要だ」と語っていたことが、強く印象に残っています。

次回は、そうした異なる世界へ飛び出すための積極性や、人と深くつながるための対話の力について、お話ししていきたいと思います。

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見出し画像および文中の画像で、キャプションのないものは、生成AIによるイメージです。

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