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キンダーカウンセラーや巡回相談ってどんな仕事?

園を起点にした、子どもの理解と支援とは



はじめに

講演会や研修会で、私はこんな質問をすることがあります。
「この中で、キンダーカウンセラーを知っている方はいますか?」

手が挙がるのは、参加者が100人いても10人いるかいないか。
続いて「スクールカウンセラーを知っている方は?」と尋ねると、こちらはほぼ100%の方が手を挙げます。

──そうなんです。私は、それほど知名度が高くない「キンダーカウンセラー」という仕事をしています。

キンダーカウンセラー|巡回相談|仕事
ちょっと悲しい…

「キンダー? Kinder(garten)のカウンセラー?」「幼稚園児にカウンセリングするの?」と感じる方も多いと思います。

そこでこの記事では、キンダーカウンセラー/巡回相談員が、園でどんな役割を担う仕事なのかを、できるだけ具体的に紹介していきます。


1. 「キンダーカウンセラー」と「巡回相談員」の違い

名称や仕組みは地域によって異なりますが、私が活動している自治体では、次のように呼び分けています。

  • 園(私立幼稚園など)が、個人のカウンセラー(臨床心理士など)と直接契約して訪問相談をする場合
    →「キンダーカウンセラー」

  • 自治体と雇用契約を結んだ相談員が、保育園や認定こども園などに訪問する場合
    →「巡回相談員」
    (相談員が固定の自治体もあれば、その都度変わる自治体もあります)

報酬の支払い元や雇用形態、滞在時間などには違いがあっても、共通しているのは次の点です。

相談員が園を訪問し、子どもの様子を観察し、見立てや関わり方について助言する

※この記事では、幼稚園・保育所・認定こども園などをまとめて「園」、そこに通う子どもを「園児」と表記します。
※沖縄の園事情についての補足を、文末にまとめています。


2. 相談の「直接の相手」は誰?

「スクールカウンセラー=児童生徒の悩みを聴く仕事」というイメージから、
「キンダーカウンセラー=園児のカウンセリングをする人?」と思われることがあります。

ただ、キンダーカウンセリング/巡回相談の中心は、園の先生方と一緒に“園での関わり”を整えることです。
先生が「気になっている子」「関わり方に迷う子」について、私たちのような心理・発達の専門職(※)が園で様子を見て、見立てや関わり方を一緒に整理します。

先生は、その助言(=コンサルテーション)を受けて、日常の保育の中でどう活かすかを、保育・教育の専門家として判断し、工夫してくださいます。
つまり、保育・幼児教育の専門性(先生)と、心理・発達の専門性(カウンセラー、相談員)が協働する取り組みと言えます。

※自治体の巡回相談では、心理職だけでなく、言語聴覚士・作業療法士などが関わる場合もあります。複数職種で訪問している自治体もあります。


3. どんな活動をしているの?

ここからは、キンダーカウンセラーと巡回相談員に分けて説明します。
(目的は共通でも、巡回相談は自治体事業で、運用が自治体によって大きく異なるためです。)


3-1. キンダーカウンセラー(園と個人契約)

私立幼稚園に配置されるキンダーカウンセラーは、各園の方針に沿って活動します。
私が活動している地域では、10時〜16時(6時間)の訪問が基本です。6時間あると、子どもの様子も先生の困り感も丁寧に把握しやすく、落ち着いて関われます。

訪問回数は園によってさまざまで、毎週の園もあれば、月1回、年数回という園もあります。
ここはどうしても、自治体の補助制度や園の予算といった「お財布事情」が影響します。

園によっては、保護者相談のみを目的に年数回雇用しているケースもあると聞きます。もちろんそれにも意味はありますが、園の現場を整えるという強み(観察・見立て・コンサルテーション)が活かしにくくなることもあります。
一方で、「保護者相談の時間を設けると、先生がコンサルテーションを受ける時間が減る」という理由で、保護者相談は実施しない園もあります。「まずは先生方の支援を厚くしたい」という方針の園です。


3-2. 巡回相談(自治体事業)

巡回相談員の活動内容は、自治体によってかなり幅があります。大きく分けると、次の3タイプです。

  • 観察+先生方へのコンサルテーションのみ

  • 観察+保護者相談のみ

  • 観察+コンサルテーション+保護者相談(両方)

対象の決め方もさまざまです。先生や保護者の希望で対象が決まる自治体もあれば、診断名や加配がついている園児のみが対象という自治体もあります。

活動時間も自治体によって大きく異なります。
私が「相談員が力を発揮しやすい」と感じたのは、10時〜15時まで同じ園に滞在できる自治体でした。
午前中に複数クラスを観察し、午後に担任とのコンサルテーションや保護者相談を行う、といった流れが可能になります。

【補足】タイトな自治体運用の例

一方で、かなりタイトな自治体もあります。例として、9時~12時の3時間で、1園あたり数名を担当し、さらに2園を掛け持ちするような運用です。園児1人あたりの観察が10分、保護者相談が30分、終わったら次の園へ移動……という形です。
同じ「巡回相談」でも、実態には大きな差があります。


4. どうやって子どもを理解するの?(行動観察)

まず、先生からその子の「気になっている点」を聞き取ります。
乳幼児期は、自分の困り感に気づきにくかったり、気づいていても言葉で表現することが難しかったりする年齢だからです。

言葉で「困っている」と伝えられる子もいますが、そうでない子も多いです。
うつむく、泣く、一人でいる、楽しそうに見えない。あるいは、初対面の相談員に近づき続ける、突然乱暴な行動をするなど、行動で表現していることもあります。

また、集団活動についていけていなくても、本人に自覚が薄く、SOSとして表現されない場合もあります。すると保護者も気づく機会が少なく、「うちの子は毎日楽しく通っている」と認識されていることもあります。

だからこそ、キンダーカウンセリングや巡回相談では、子どもを「できる/できない」で判断するのではなく、集団生活の中での様子を丁寧に見るために、「行動観察」という技法を用います。
自治体によっては、先生や保護者の同席のもと、遊び感覚で取り組めるタイプの発達検査を活用し、特徴を共有しながら相談を進められる場合もあります。


5. 身近な園で相談できる安心感(保護者相談)

キンダーカウンセリングや巡回相談では、保護者がカウンセラー/相談員に直接、子どものことを相談できる「保護者相談」の枠を設けている場合があります。
ただしこれはすべての園・自治体で共通ではなく、園(キンダーカウンセリング)や自治体(巡回相談)の方針によって運用が異なります。

保護者相談があることのメリットは、主に次の点です。

  • いつもの園で相談できる
    子どもが普段通っている場所で相談できるため、心理的にも時間的にも負担が少なくなります。

  • 専門機関に行かなくても相談できる
    「まず話を整理したい」「専門機関に行く前に相談したい」という段階でもつながりやすく、相談のハードルが下がります。

  • “ちょっと気になる”を早めに言葉にできる
    困りごとが大きくなる前に、気軽に相談しやすい入口になります。

  • 希望があれば三者面談ができる(保護者・先生・カウンセラー)
    家庭と園が同じ情報を共有し、子どもの理解をそろえやすくなります。

  • 相談後の方針や支援が進めやすい
    家庭での関わりと園での関わりが噛み合いやすく、連携がスムーズになります。


まとめー子どもが元気になるための「支援者支援」

乳幼児期に見られる「困り感」は、子ども本人の努力だけで解決できる性質のものではないことが多いです。そこで、相談員は子どもを丁寧に観察し、本人がまだ自覚していない・言葉にできない困り感を、先生や保護者に伝わる形に「通訳」していく役割を担います。

その背景には、心理面・発達面の特性が関わっている場合もあります。必要に応じて見立てを共有しながら、先生や保護者をはじめとする“周囲の大人”が「今できる対応」を一緒に組み立てていきます。
目的は、子どもが園生活や家庭生活をより適応的に過ごせるように、環境や関わりを整えることです。

キンダーカウンセリングや巡回相談は、子ども本人の悩みを直接聴いて解決を図る支援(例えば、スクールカウンセラー)とは少し性格が異なります。
先生を支え、園の関わりを整えることで、結果として子どもの育ちを支える——そんな「間接的な支援」が中心になります。

子どもに関わる大人を支えることで、子どもの育ちを支えていく。
この「支援者支援」こそが、キンダーカウンセラーや巡回相談員の大切な役割だと言えるでしょう。


【補足】沖縄の園事情について
私がいま住んでいる沖縄県は、幼稚園事情が本土とは異なる地域があります。小学校のプレスクール的な位置づけが強く、4歳児までは保育園、5歳児から公立小学校に併設された幼稚園に入園する子が多い地域もあります。
また、園の名称が「幼稚園」から「こども園」に変わっているケースも多く(※2019年時点の印象)、結果として「巡回相談」の仕組みを使っている園が多いように感じます。


より詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。




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なおこ先生👶キンダーカウンセラー ありがとうございます。 いただいたサポートは、書籍の購入や学会等の参加費に活用し、社会に還元できるようこれからの発信に繋げていきます。