大規模化すれば、株式会社の参入を許せば、農業は効率化するのか?

「大規模化すれば」「株式会社が参入すれば」日本農業は効率化する、という誤った常識が日本でははびこっている。まあ、テレビに出演する識者とやらが判で押したようにこの二つのフレーズを使うものだから、農業を知らない人が信じるのも無理はない。しかし。

日本はすでに大規模化を進められるところは進んでいる。しかし、一部の地域を除けば、10haを超えるあたりで効率化しなくなり、むしろ面積を広げるほど効率が悪化するという試算が出ている。なぜか。それは、日本は山が多く、斜面になっている土地(中山間地)が多いから。

新潟平野や八郎潟、北海道のような、非常に広大で平らな農地を備える一部地域を除けば、平野であっても微妙に坂になっているのが日本。その中でも、斜面がキツイ中山間地は、日本の農地のなんと4割を占める。コメ生産は3割を担う。そして斜面がきついと、大規模化に限界がある。なぜか。

水田は平らでないと、水をたたえることができない。斜面がきつくなくても、やはり斜面である場合、一枚の田んぼを大規模にするのは困難。大工事になる。斜面の土地は、一枚の田んぼをあまり大きくできない、という問題がある。このため、チョコマカと耕す必要が出る。

アメリカとか、平地だらけの国なら、一枚の田んぼが100haあるなんてのも当たり前にできるかもしれないが、斜面の多い中山間地が少なくない日本では限界がある。何なら、平らに見える平野部でも、日本はそれなりに斜面となっている。大規模化に限界がある国、それが日本。

日本がいかに平らでない国かは、同じ島国であるイギリスと比較する分かりやすい。イギリスは、陸地面積だと日本の3分の2しかないのに、農地面積は4倍ある。なぜか。イギリスは平らな土地が多いが、日本は山だらけだから。日本は斜面が多くて、一枚の田んぼを大規模化することが難しい。

田んぼが小さいと、大きな農業機械を入れられない。また、畔から田んぼに農業機械を入れる際は、機械がひっくり返るリスクが大きくて、自動化ができていない。結果、耕す面積が10haを超えると効率化できなくなり、手間が増えるという問題がある。日本は、山がちで大規模化に限界がある。

さらに、「株式会社の参入を許せば」。あまり知られていないようだけれど、すでにパソ〇やカゴ〇など、様々な企業が農業に参入している。しかし、あまりうまくいっているとはいえず、黒字化に苦労しているところがほとんど。株式会社なら効率化でき、儲けられるというのがそもそも幻想。

なぜなのか。それは、農業が利益率の大変小さい仕事だから。既に農家は「効率化」できるところは徹底してやっていて、なんなら自分の人件費をコストとしてみなさずにやって、それでも利益が出せないというところにまで農産物の価格が低迷し続けてきた。それほどまでに農産物は安い。

また、農家は「これで生きていくしかない」と腹をくくっていて、逃げられないけれど、農業外の株式会社が参入している場合、「こんなに仕事がしんどいのに儲からない。儲からない仕事なのに上がギャーギャー利益を出せと命じるばかり」と辟易する。早く異動して農業から逃げ出したくなる人多し。

雇われ人は基本、上から言われた指示通りにしか動かない。それで給料もらえば済むのがサラリーマンだから。農業で生きていくしかない、と腹をくくっている農家と覚悟が違う。このため、農業外から来た株式会社は、どうも腰が入らない農業になりがちで、それが収穫にも影響するらしい。

株式会社だけどまあなんとか経営できているのは、軒並みと言ってよいほど、農家が株式会社化したところ。従業員はいずれ農家として独立するつもりで就職した人が多かったりで、みな覚悟が違う。農業以外の仕事に早く異動したい、という考えじゃないから、徹底して効率化する。

結局、農家として骨を埋めるつもりの人でないと、農業における効率化を果たすことはできない、と言える。会社員として腰掛けで農業するような立場の人で構成された株式会社が農業に参入しても、農家がやる農業と比べると、効率化においても甘い。むしろ効率が悪いことが多い。

WBSニュースなど、ニュース番組を見ていても、「大規模化すれば」「株式会社の参入を認めれば」効率化すると、よく考えずに発言するの、やめてほしい。というか、現実を知らずに識者ぶって発言するの、恥ずかしいと思ってほしい。現実にはそうはなっていないのだから、無知を表明しているようなもの。

なるほど、アメリカやヨーロッパのように、平らで広大な土地があれば大規模化は容易だろう。なんなら、株式会社化しても、腰掛の社員でもやれてしまう面があるかもしれない。でもそれは、平らで広大な土地があるから。それが少ない日本では、知識、経験、覚悟の三つがどうしても必要になる。

しかも日本は、平らな土地に都市住宅が入っている。もし農業の大規模化を進めたいなら、家を山間地に移し、平らな土地は農業にだけ使用する、という規制が必要になる。しかし、日本最大の平野である関東平野のど真ん中にある東京は、人だらけ。農地を潰してしまっている。

都市に住んでおいて「農業を大規模化すればいい」と発言するのは、すでに言動が矛盾していると言える。アメリカやフランス並みに大規模な農業をしようとおもえば、平地から家をなくさなければならない。その平地を家が支配してしまっているのだから、効率化も限界がある。

そろそろ、ニュース番組に登場する人たちは、「大規模化を進めれば」「株式会社の参入を進めれば」と発言することは、自らの無知を表明し、恥をさらすことだと自覚してほしい。日本は山がちな国で、農業には知識、経験、覚悟の三つが必要なのだということを、自覚していただきたい。

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