トランプ氏の戦略はイランを窮鼠にした

トランプ氏は取り引き(ディール)の巧みさでのし上がってきた人ではあるけれど、それは「平和」が前提のテクニックだと思う。
https://news.yahoo.co.jp/articles/19f49cac5806cbfb0b2893e848ab54f55faa3d25

トランプ氏の強気の脅しは、平時には大変有効だろう。相手は平穏で豊かな生活を守りたいと思うから、それをかき乱されたくないと弱気になる。だからトランプ氏はディールで勝ち続けることができたのだと思う。しかし。

イランの場合は話が違う。トップを殺され、その他にも幹部たちが軒並み殺されている。現在中枢にいる人間も、いずれアメリカかイスラエルに殺されることを覚悟しているだろう。どうせ失う命なら、と、腹をくくった人間を、損得勘定で簡単に動かせるわけがない。

いくらトランプ氏が「石器時代に戻すぞ」と脅しても「どうせ殺されるなら」と腹をくくった相手に、もはやそんな脅しは効きはしない。

トランプ氏が手詰まりになったのは、相手を「窮鼠」にしたこと。孫子の兵法でも「囲師必闕」というのがある。城攻めをする際は完全包囲してしまうのではなく、一つ逃げ道を用意する、というもの。

もし城を完全包囲してしまったら、城兵は「逃げ道がない」と覚悟し、「どうせ死ぬのなら」と、徹底抗戦する。だからひどく城は落ちにくくなる。

しかし包囲網に一カ所手薄なところを作ると、城兵は「あそこから逃げられるかも?」と期待が湧く。すると気が弱くなり、徹底抗戦する覚悟が決まらない。結果、実際にその逃げ道から逃亡し、もぬけの殻となった城をやすやすと占領できる、というもの。

ところがトランプ氏は、イランを事実上完全包囲した。逃げ道をなくした。屈辱的な降参以外の道をなくした。誇り高いイランの人々からすれば、無条件降伏は死ぬよりも許せないこと。そんなところに追い込まれれば、腹をくくって当然。

トランプ氏は孫子の兵法を学んで、イランの人々も誇りを保つことのできる「道」を残しておくべきだった。もしそうであれば、イランも比較的応じやすくなっただろう。

軍や外交のプロはアメリカにはたくさんいるはずだから、トランプ氏にこれらのアドバイスをしているはずだが、馬耳東風なのか、左遷が怖くて黙っているのか。トランプ氏は「裸の王様」になっている可能性がある。

部下の進言に耳を貸さず、自分の思った通りに振る舞うリーダーは、裸の王様になるリスクを常に抱える。今後、トランプ氏は部下の進言に耳を傾けるのか?そうしたパーソナリティなのか?その点が、アメリカだけでなく世界の運命も変えてしまうことになりかねない。

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