『わたしはフェイクポルノ』 1話
あらすじ
エリート会社員のナツは、男性だらけの研究現場で奮闘する毎日を送っている。ある日自分そっくりのAI画像がアダルトゲームに使用されていると、会社で噂になってしまう。
登場人物
ナツ:入社3年目の女性社員。理系院卒。美人でよくセクハラされている。
イズミ:ナツの部署の男性社員。無口。背は高い
神宮寺ショウ:ナツが所属しているグループ会社の御曹司。俺様オーラがすごい
神宮寺ダイセイ:ナツが所属しているグループ会社の総帥。怖い人
ナツの同僚
アンズ:優しい。小さい。
クルミ:クール。
モモカ:面倒見良さそう。同期の彼氏がいる。
会社の外
シンスケ:ナツの父親の後輩
1話
ナツ:「お父さんが大好きだった。研究者で、面白いけど世間知らずで、だけどとても優しい人。お父さんと同じ研究者になりたくて、勉強を頑張り、いい大学を出て、大きい会社に就職できた。仕事や研究は大変だけど、毎日が充実している。素敵な男性との出会いもあり、幸せな私は今……」
ナツ:「ポルノのモデルになっている」
ナツ:「わたしははめられた」
ナツ:「あの嘘つきに……」
◯オフィスビル 公会堂 昼
オフィスビル内の大きな公会堂に人がたくさん集まっている。高そうなスーツに身を包んだ男性(神宮寺ダイセイ)が、一番見晴らしの良い席に座っていた。 隣には若い、同じく高そうなスーツを着た男性(神宮寺 ショウ)が座り、周りのスタッフはみな総立ちで2人を警護している。
プレゼンをする社員たちが舞台袖でスタンバイしている。長いまつ毛をした綺麗な女性が資料に目を通している。 集中しているようだ。
イズミ:「…ん…ツさん…」
イズミ:「ナツさん?」
ナツ:「はい!」
ナツは後ろから話しかけられ、びっくりして返事をする
イズミ:「室長がみんなを呼んでます」
無愛想な男性は要件だけ伝えるとすぐに振り返る。
ナツ:「…ありがとうございます」
ナツ心の声:「びっくりした… イズミさん足音がなくてちょっと怖いのよね」
室長:「いいか!今日のプレゼンには我がDX室の存亡がかかっている! 成功すれば部に格上げ、私も部長に昇進できる!」
10名ほどいるメンバーに向かって檄を飛ばす。
モブ後輩:「自分のためなんじゃん」
モブ先輩:「まあまあ」
モブ2人が聞こえないぐらいの声で話している。 ナツも頷きはしないがその通りだなと思っている。
室長:「見ろ!会場には我が神宮寺グループのトップ、神宮寺ダイセイ社長もいらっしゃってる! 」
舞台袖から神宮寺ダイセイを手振りでさす。
室長:「もし社長賞を取れば、メンバー全員ボーナス倍も夢ではない!」
みんな:「うおおお!」
モブ後輩も興奮して目がお金になっている。現金なやつだ。
みんな各々の準備を始める。 ナツの瞳も社長を見据えて燃えているよう。
室長:「ナツくん!」
手を肩に置かれ、ビクッとする。
室長:「プレセンの準備は大丈夫か?他部署の奴らがネチネチ質問してくるが、しっかり対応してくれよ!」
室長の顔はデレている。
ナツ:「ヒィ~!!!!」
笑顔を崩さないようにしているが冷や汗が出ている。遠巻きにチームの社員が陰口を叩く。
チームの男性社員A:「見たかあれ?大事なプレゼンなんて言って、どう見ても室長の好みで決めてるよな」
チームの男性社員B:「色目使って売り込んだんじゃない?女なだけで得だよな」
ナツは作り笑顔のまま室長と向き合っている。
ナツ心の声:「この会社にはいって3年… 研究チームはいまだに男尊女卑が続いていて 女性は腫れ物か悪口の対象になっている」
ナツ:「はい精一杯頑張ります」
丁寧なお辞儀をする。その反動で肩の手をうまく外す。
男性社員A:「ゴマスリが上手だよな」
ナツ心の声:「わざと聞こえるように言ってくるのも慣れた」
ナツ心の声:「慣れたけど、傷つかないわけじゃない」
お辞儀したまま、見えないように少し悔しい顔をしている。
男性社員B:「なあ、お前もそう思うだろ?」
男性社員Bはイズミに話をふる。
イズミ:「研究の成果に男女は関係ないと思いますが」
イズミは真顔で答える。 ナツは顔を上げている。ちょっと恋の風が吹いたような表情になる。 男性社員はバツの悪そうな顔をする。
スタッフ:「スタンバイお願いします」
ナツなど登壇メンバーが呼ばれる。イズミがナツの横に並ぶ
イズミ:「話すのが苦手な自分の代わりに、プレゼンターを引き受けてくださりありがとうございます」
ナツ心の声:「もしかして気を遣ってくれてる?」
ナツ:「いえこちらこそ私なんかが登壇することになっちゃって…」
ナツ少し続きを考える
ナツ:「…がんばりますね!」
健気な笑顔を見せる。(セリフはビジネスライクだが、表情は自然な、本心のような笑顔) イズミも笑っていないが少しだけ驚いたような表情になる
スタッフ:「入場してください」
ナツを先頭にメンバーが入場していく。
ナツ:「本件はフェイスの処理を医療特化させ、皮膚の状態から病気の種類判別への…」
ナツは堂々と前を向いて話始める。
ナツ:「臨床医療におけるAIの導入により、各疾患の早期発見や…」
参加者モブA「最近医療業界にはかなり力を入れていたし」
参加者モブB「これで本格参入できればかなりの利益が見込めそうだ」
観客も笑顔や手応えの感じる表情をしている
ナツ心の声:「よし!反応はいい感じ!」
プレゼンを続けているので顔にはまんぷの汗が出ているが、手応えを感じている
モブ後輩:「空気掴んでる!」
舞台袖でモブ先輩とハイタッチする。艶っぽく話すナツの美貌に、興味がで始める
参加者モブC:「というか綺麗すぎだろ」
参加者モブD:「モデル上がりとかじゃないよな?声もいいし」
参加者モブE:「美人リケジョとかでテレビに出したら会社の広報になるんじゃ」
神宮寺社長は反応をせず話を聞いている。
社長の近くに座っているメガネ男性社員:「あれ?あの顔最近どこかで?」
ナツ心の声:「問題はここから」
ナツ:「それでは質疑応答を始めます」
たくさんの人たちから手が上がる。モブ後輩と先輩も手を取り合ってビビる。
参加者モブF:「競合が少ないとのことですが、現状の医療機関の予算配分から考えるにかなり高額なのでは?」
ナツ心の声:「それならパワポ外の資料を作ってくれてたはず…」
ナツ:「その件をまとめた資料が…」
ナツが言い終わらないうちにイズミは資料を表示している。ナツはイズミと目を合わせて手応えを感じる。
ナツ:「事前に調査を進めており、特に病床数が500以上の大病院については導入するメリットが上回ると…」
ナツ心の声:「よかったなんとか無事にこなせてる!」
ナツ心の声:「できればこのまま無事に…」
ナツ:「他に質問があるかたは…」
スッ。高そうな腕時計をつけた腕があがる。神宮寺社長の横に座っている金持ちオーラを纏ったイケメン(神宮寺ショウ)が手を上げていた。ナツは笑顔のままだが、汗が出ている (今日のボス登場と言った表情)
モブ後輩:「誰ですか?あのイケメン…というか金持ちオーラすごい人は?」
モブ先輩:「ショウ様ね」
キラーンて感じの、探偵みたいな顔
モブ後輩:「…様?」(ちっちゃい吹き出し)
ナツ心の声:「神宮寺社長の息子で、グループのAI会社の取締役も兼務している」
ショウ:「先ほどの電子カルテへの統合についてですが…」
ナツ心の声:「彼も同じAI関連の研究者でもある」
ナツ:「それについては…」
ナツは物おじせず返答を続ける。
モブ後輩:「すごいハイレベルなやりとり 私も院卒だけど全然ついていけない」
ナツとショウのやりとりが続き、ショウは納得した笑顔で席につく。 質疑応答が終わる。
ナツ:「以上でプレゼンテーションを終了いたします」
大きな拍手がなる。
ナツ心の声:「そして」
ナツ心の声:「今の私の恋人」
ショウ:「素晴らしいプレゼンだったよ 今晩にでもまたで話したいな。2人で」
ステージ横で壁ドンしつつ囁く。
ナツ:「はい。また後でご連絡いたします」
ナツはショウと見つめ合いながら、いい雰囲気を出している。片付けをしているモブ後輩はその様子を見て鼻血を出している。 さっきナツを気にしていたメガネ男性社員もその様子を見ている。メガネ男性社員は去っていく。
◯新橋のようなターミナル駅
メガネ男性社員が電車の広告を見る。
男性社員:「そうだ今日のプレゼンの子、このゲームの写真にそっくりなんだよな」
電車に出ている広告と同じゲームアプリを起動する。アダルトゲームの画面が見え、そこにはナツそっくりの女性が際どい格好で写っていた。
◯オフィスビル・玄関 朝
高そうな車がオフィスの前に止まり、ナツが降りてくる。
ナツ:「昨晩は素敵なディナーありがとうございました。行ってきますね」
キラキラオーラを放ちながら車から降りる。ショウはそっけない態度で対応する。ナツはオフィスへ向かい車は発車する。その様子を見ていた出勤中のモブ後輩はまた鼻血を出している。
モブ先輩:「どうしたの?」
モブ後輩:「めざましエロス見ちゃって……」
モブ先輩:「何言ってんの?」
◯オフィスビル DX室
ナツ:「おはようございます」
女性モブ社員:「おはよう」
女性社員もいつものように挨拶する
ナツ:「おはようございます」
先輩のモブ男性にも声をかける。
モブ男性:「お、おう」
先輩の挨拶は歯切れが悪い。ナツは少し引っ掛かるが、明るく振る舞う。
ナツ:「昨日のプレゼン、データ整理をお手伝いいただきありがとうございました。言われていた資料まとめましたので、ご確認よろしくお願いします」
モブ男性:「あ、ああ早いねありがとう」
他の男性社員も、なんとなくソワソワしている。ナツは雰囲気をやはり気にしている。
イズミ:「ナツさん」
ナツ:「はい!」
イズミがいつの間にかナツの背後に立っていた。
イズミ:「学習用の素材の追加発注についてですが」
ナツ:「その件については……」
ナツ心の声:「心臓に悪いわ!足音しないんだから」
話が終わり、イズミは振り返り自分の席の方へ戻る。
イズミ:「よろしくお願いします」
ナツ心の声:「この人はいつも通りね」
モブ:「おいイズミ!頼んでた資料できてんだろうな!?」
イズミ:「はい」
モブ:「仕事早いなお前」
イズミ:「仕事に関して嘘はいわないですからね。」
ナツは台詞を気にする。ナツは業務をこなす。お昼休みになりナツは同僚の女性たちと会社から出ていく。
◯レストラン
ナツと同僚3人(合計4人)で丸の内ブリックスクエアのようなところでランチをしている
ナツ:「なんだか今日、男性陣の様子変じゃない?」
ナツは食事をしながら、同僚たちに聞いてみる
アンズ;「やたらナツのことチラチラ見てたよね」
モモカ:「タツヤに聞いてみようか?」
ナツ:「ありがとう助かる!」
クルミ:「結局同期で付き合ったのモモカとタツヤだけだったわね」
アンズ:「リスク高いからね社内は」
モモカ:「うーん返事来ないわね」
ナツ:「そう…」
アンズはその様子を見ている
アンズ「なんかやった?昔みたいにおっぱい強調しすぎた服着てきたとか」
ナツ:「ちょっとやめて!大学時代は研究ばっかで、入社した時はまだ着る服が足りなかったのよ!」
アンズは友人らしく気さくにからかい、ナツは恥ずかしがる。ナツと同僚は楽しそうに会話する。ナツの表情も少し明るくなっている
モモカ:「なんかわかったら連絡するよ」
◯オフィス
同僚と別れ、ナツは自分のオフィスへ戻る。ナツは研修の手伝いをしており、先輩社員たちへのお茶出しなどをしていた。ナツは給湯室に入ろうとする。給湯室から男性の話声が聞こえてくる。
男A:「これ本物かな?」
男B:「いや流石にAIだろ」
ナツ:「失礼します」
男A:「あっナツ。やべかくせ」
ナツ:「何見てるの?」
男B:「いや……」
ナツ:「見せて。お願い」
ナツは真剣な表情で迫る
男A:「わかったよ……」
男A:「この広告のゲームを見てたんだ」
スマホにはアダルトゲームの画像が出ている。表示されている女の子はナツにそっくりだった
ナツ:「な……何これ?」
ゲームの広告の画像はバニーなどのエロい格好をしている。顔や体型もナツに似ている。
男B:「俺たちもそっくりだなって思って」
男A:「まさか違うよな?」
ナツ:「当たり前でしょ!」
ナツは声を荒げてしまう。
男A:「ごめん」
ナツ:「……タイトルと、なんて会社が作ってるのか見せて」
ナツは研修に戻り、どこか暗い表情で作業していた。イズミはその様子を見ている。
◯オフィスの外
ナツは電話をしている。
ナツ:「もしもし?先ほど問い合わせたものですが」
電話の向こうの人物:「確認したところ、該当の画像は完全にAIで生成したものとなっており、特定の個人を模倣したものではございませんでした」
ナツ:「でも!」
電話の向こうの人物:「停止に関しましてはお受けできかねます」
ナツ:「同僚にも誤解されるほどそっくりなんです」
ブツ!電話は切られてしまう。
ナツ:「待って……!」
ナツは焦って苛立っているよう。周りの通行人も不安気に見ている。ナツの社用携帯にメールが届く。室長から、「研修後、会議室に来れますか?」という内容だった。
◯会議室
ナツと室長は向かい合って座っている
室長:「君も噂は聞いていると思うが、このゲームの件だ」
ナツ:「はい。先ほど確認しましたが、もちろん私本人ではなくAIで作られていて、たまたま似ただけで」
室長:「たまたまでこんな似るかねぇ」
話が通じなさそうな室長に、ナツは焦る。
室長:「君が女性ならではの魅力で仕事を掴んでると思ってる人もいるからねぇ。みんな噂しているよ」
室長は唇をぺろっと舐める
ナツ:「チームの方達にはきちんと誤解を解きます」
室長:「一度ついた印象は、中々拭えないよねぇ」
室長は立ち上がる。ナツは屈辱に耐える。
室長:「でも僕は味方だよ。女性のそういう問題にも理解はある。どうだろう今度2人でじっくり話さないか」
室長はナツの背後に周り、肩に手を置く。課長の口元が汚く歪む。
ナツは室長といた会議室から出る。
ナツ:「失礼しました」
一緒にランチした同僚たちが外で待っていた。オフィスの廊下で立ち話をする。
モモカ:「彼氏から聞いたよ。災難だったね」
アンズ:「ほんとひどいね。ってか室長大丈夫だった?あいつ結構ナツ狙ってるっぽかったし」
ナツ:「うーんちょっとあったかも」
クルミ:「きもっカエルどころか最初から無理」
アンズ:「昔いた人で、学生時代から風俗で働いてて、バレてクビにされた人がいるんだって」
アンズ:「退職後は風俗に戻っちゃったんだらしいんだけど、それ聞いた男性社員たちが、その子の店にいっぱい行ってたんだって」
クルミ:「ひっ!」
アンズ:「お店に行った男性社員の中に、あの室長もいたらしいよ」
クルミ:「最悪!」
ナツは右手で左手の肘を抱き寄せ、不安げな表情をする。
モモカ:「ナツ、気をつけなよ。またなんかあったらいってね」
ナツは同僚とオフィスへ戻る。
アンズ:「そもそも誰がこのこと広めたんだろうね?」
クルミ:「あんまり有名なゲームでもなさそうだし」
モモカはスマホを握りしめ、怪しい表情をしている
モモカ:「これ以上…」
モモカ:「他の知り合いとかに広まらないといいね」
ナツ:「うん…」
ナツの私用スマホがなる。メッセージはショウからのものだった。「今晩は会えないか?聞きたいことがある。」
◯帰り道 夜
ナツはスマホを持ちながら深夜1人で帰宅している。 スマホの画面にはショウ宛に「ごめん今日は残業で疲れちゃって」というメッセージが表示されている。
ナツ心の声:「多分怒ると思うけど…」
俺様という文字と一緒にショウの顔が宙に浮かぶ。 ナツの表情は暗い。
ナツ心の声:「今日は大変だった」
エロ室長とのやりとりを思い出す。
エロ室長:「こんなゲームに画像を提供して」
ナツ:「だからあれはAIの自動生成で、私じゃありません」
エロ室長:「まあまた一緒に話そうよ」
エロ室長の気持ち悪い口元のアップが映る
エロ室長:「2人で」
ナツは身震いしつつ暗い道を歩いていく。ナツの前方から酔っ払ったおっさん二人組が近づいてくる。
おっさんA:「おっかわいい!」
ナツの前方を塞いでしまう
ナツ:「な、なんですか?」
おっさんB:「こんなかわいいスケがいるなんてよぉ!現実かこれ?」
おっさんA:「今の流行りのAIだよAI!」
おっさんB:「最新だわ!令和だ令和!」
ナツ心の声:「何こいつら!ノリが完全に昭和じゃない!」
おっさんA:「バーチャルだから触ってもオッケーだよな」
おっさんはナツの体を掴む。
ナツ:「いや!やめてっ!」
ナツ心の声:「こんなんばっかり!」
おっさんA:「うあ?」
誰かがナツに触れているおっさんの手を引き剥がす。
イズミ:「離してください」
いつの間にかイズミがナツとおじさんずの間にはいっている。
ナツ:「イズミさん?」
おっさんA:「なんだお前?いてててて」
イズミはおじさんの腕を捻りあげる
おっさんB:「テメェ人痛めつけてやがって!本当に人間かコラ!」
イズミは睨みつける
おっさんB:「ひっ!」
おっさんBは怯んでしまう。
おっさんA:「おぼえてろよ!」
昭和のおっさんたちは消えていく。イズミはまだおじさんたちを睨んでいる。
ナツ:「ありがとうございました」
ナツは驚いている。
ナツ:「なんでイズミさんがここに……?まさか私のことを……」
イズミ:「ここ会社から駅までの道ですけど」
ナツ:「そうですよね!みんな通りますよね!」
ナツ心の声:「心配して助けに来てくれたと思ってしまった!恥ずかしい!」
流れで駅まで一緒に歩く。
ナツ心の声:「でも……」
ナツ心の声:「あんまり話したことなくて何喋っていいのかわからないわ」
2人の頭の上に 沈黙 の文字
ナツ:「す、すごい強かったですね。意外でした」
イズミ:「父から人に舐められないようにと空手と柔道を習わされましたから」
ナツ:「へー」
ナツの顔は自然な笑顔になっている。
イズミ:「勉強ばっかりしてましたけど、格闘技のおかげでヤンキーに絡まれずにすみましたね。むしろ友達になって一緒に遊んでました」
ナツ:「プっ」
ナツは安心して笑ってしまう。
イズミ:「何か?」
ナツ:「イズミさんがヤンキーと遊んでいるところを想像してしまって…すみません」
ナツは笑いを堪えている。イズミは特に表情を変えない。
イズミ:「それではまた明日。気をつけて帰ってください」
イズミと駅で別れる。ナツは笑顔を取り戻していた。
ナツ:「よし明日も頑張ろう!」
◯オフィス 朝
オフィスのエントランスにあるテレビの前に人だかりがある。 ナツも気になって見にいく。テレビにはショウが写っている。 テロップには注目の若手経営者と書かれている。
モブ:「株価上がるんじゃね」
モブ:「ショウ様芸能人見たーい」
ナツ心の声:「そういえば今度テレビに出るって言ってたわね。昨日の電話はこのことを伝えたかったのかしら」
ショウの顔が浮かぶ。下にはナルシストの文字が。番組にはショウの父親でありグループの総帥である神宮寺ダイセイも映っている。
ナツ:「はっ!朝イチの会議!」
ナツはゲートを潜っていく。ナツはオフィスに入り、働き始める。同僚のアンズも同じフロアにいる。まだチラチラ見る男性社員もいるが、気にしないそぶりで過ごしていた。
2人の若い男性社員がナツの方を見ている。 1人はスマホを前にかざし、もう1人の社員はナツにスマホカメラを向けている、アンズが気が付く。
アンズ:「ちょっと!やめてください!」
男性社員A:「ごめん」
ナツ:「アンズちょっと!何してるの?」
ナツは大事にならないようなだめる。
アンズ:「こっちは何してるんですか?」
もう1人のスマホ画面を奪う。そのスマホには例のゲームが起動しており、ナツそっくりの人物のベッドシーンが映っていた。ナツとアンズはショックを受ける
ナツ:「えっ……」
アンズ:「なんですかこれ!?」
男性社員B:「ゲーム進めると、ご褒美動画が見れるんだけどさ」
男性社員A:「それが、めっちゃ似てて生々しいんだよな」
男性社員B:「比べてみようって」
男性社員A:「いやこれはAIだって、たまたま似ただけだって知ってるよ?」
アンズ:「学生じゃないんだから!仕事中に何やってるの!」
アンズは爆ギレする。ナツはよろけ、その場に座り込む。
アンズ:「ナツ!?」
ナツ:「ごめん…ちょっと今日早退するね」
ナツは立ち上がり、オフィスを飛び出してしまう アンズは心配そうに立ち尽くす ナツは泣きながら会社を飛び出していく。ショウからの着信がなっているが気がついていない。
先ほど男性2人も呆然と見送っている。 男性の手に握られたスマホにはベッドシーンが画面に映り続ける。プレイ動画の男性の手には、ブレスレットがはめられている。
◯都内ホテルの一室
発信中ナツ、と表示されたスマホ画面と、ブレスレットをつけた腕が映る。 動画と同じブレスレットをつけたショウが画面を見つめている。
1話 終わり
