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片づけられない浮世離れ女子がミレニアムのやまとなでしこCA女子に

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浮世離れ女子からやまとなでしこ女子へ

中途採用で日系航空会社のCAになる夢を叶えた浮世離れ女子は、やまとなでしこ女子へと変身しました。ミレニアムの頃です。
普通の会社員の私とは、まるで別世界を生きているようでした。
それでも彼女とは定期的に会い、温泉と組み合わせた国内旅行を楽しみました。そこそこ有名な旅館に泊まったり、地元の名物を食べたりと、彼女は「体験」をアグレッシブに求めていました。話のネタが欲しかったのです。2000年代のCAトークには、エクスペリエンスしたネタがほしいのね。なんか大変そうな女子社会。
浮世離れ女子に付き合って経験値を高めた私は、会社の同僚からは、出かけるのが好きでいろいろ知ってるアクティブ女子だと思われました。

その頃の彼女は、大学生の頃の透明感がありながらほわんとした雰囲気から、ずいぶんスノッブで現実的な女性に変わりました。会話には、浮世離れ女子らしい素朴さが残りますが、中身もアップデートされてる。いつの間にか浴衣もそれなりに着こなし、湯上がりのアップヘアもきれいに仕上げるようになり、洗練されていきました。

でも、布団の周りや洗面所は相変わらず散らかっていて――。私は「絶対に彼を家に呼ばないほうがいい。お泊まりのときはぜんぶカバンに詰め込んで!」と真剣にアドバイスしました。彼女もそれを自覚していて、「家には呼ばない。彼とお泊まりのときは注意して片づけるけど、女子旅は素が出ちゃう」と笑っていました。本当に片付けられてる?心配だわ。

医者の彼と、やまとなでしこの現実

当時、彼女は機内でナンパしてきたお医者さんと付き合っていました。ありがちすぎる。
羽田行きの便で、CAとのお見合い席に座った彼に連絡先を渡され、すぐに交際へ。いつもはその類いのことは無視するけど、彼には運命を感じてその日に電話をかけたそう。たしか熊本出身の開業医の息子で、彼女は結婚を意識していました。「私はいつか熊本に行くの。彼が市内の病院を継いだら」あら、まぁ。気が早い。まだ結婚もしてないのに、もう奥様気分。
「開業医の家にお嫁さんなんてできる?熊本にお母さんを呼んで一緒に住んでもらわないと無理じゃない?」――私はだいぶ冷ややかに見ていました。

ほどなくして別れが訪れました。彼は生粋のCA好きで、彼女の同期たちにもナンパしていたとか。彼の職業や電話番号知っているCAたちが何人かいたようです。見境がないバカな男。彼女が詰問すると音信不通になったそうです。
しかし、2年後くらいに後輩新人CAと結婚したとか。CAにロイヤリティがある界隈の方なのですね。

一方、27歳になったばかりの彼女は切り替え、合コン三昧に。学生時代は「ふしぎちゃん」と呼ばれ、飲み会ノリが苦手だった彼女が、同期たちと有名企業の男性と合コンしている姿は想像できませんでした。私が出会うことがないエリートたちとの連日の合コン。「今週は◯◯商事とお食事会して、来週は慶応の同期の人たちとお食事会」「ミラノ行って戻ってすぐ」あの子、そんな気力と体力あったっけ?朝、起きれなくて単位落としてたよね。高輪のアンナミラーズのバイトだって寝坊でクビになってたよ?

そのとき、私は思いました。
「CAって職業が本当にすごい。CAになると人は変わる。やまとなでしこはドラマの中だけじゃないんだ」。彼女はきれいになって、もうイモ味はない。高輪の立派なビンテージマンションに住んでいて、実家のお母さんのお下がりのシャネル使って、桜子よりやまとなでしこ的な生活をしている。
彼女の話は聞いてるだけならおもしろかったけど、SNS前夜のきらきらライフスタイルや、恋愛や結婚への圧が強すぎて、私には無理な世界だとも感じました。

アニヴェルセルの結婚式

27歳のとき、彼女は競合航空会社の内勤男性と合コンで知り合い、28歳が終わる直前に結婚しました。式場は彼女のチョイスで、アニヴェルセル。2000年代前半のCAらしさが滲みます。クリスマス時期の結婚式で、寒空の下でもCA仲間はノースリーブで背中も出すドレス姿でフラワーシャワーを盛り上げ、写真を撮りまくっていました。
私は大学の同級生たちと慎ましく二番手の位置で参加。私も露出高めな服装をしていましたが、やや端っこで寒さに震えながら、手にはカイロを握ってささやかに式を見守っていました。

が、ブーケトスの時です。突然、彼女のお母さんから腕を掴まれ「ブーケを取りなさい」と低い声で言われ、押し出され、なぜか私がキャッチ。急に主役に躍り出ました。キャピキャピしてたCA仲間たちが一瞬凍りつき、私の同級生も驚きました。そんな中、私が固まっている写真が今も残っています。映ってないけど、足元にはカイロが転がってるはず。

式は典型的な華やかさ。CA同期の恒例の出し物、相当に無理をしてた新郎友人のスベり寸前の余興、そしてお母さんからの「次はあなたね」という低い声。

二次会は青山のレストランでした。20代後半の二次会らしく「新郎の大学時代の友人です。◯◯会社に勤めています。今度飲み会しませんか?」「新郎の同期です。よろしくー」など、交流していくスタイル。二次会に出席した大学の同級生たちの半分は新婚で、残りも結婚が視野に入っている子たち。かわいい引き出物のドラジェの情報とか、新婚旅行の注意事項とかを話してる。私には彼はいたけど、結婚を考える段階ではなかった。この空間、なんか居ずらいわ。お酒を飲むスピードが早まります。
「ブーケトスを受け取った方、お祝いの言葉を聞かせてくださーい」突撃インタビューのようにマイクを渡され、お祝いコメントもしました。精一杯元気に、華やかにお祝い。
さらにビンゴでディズニーペアチケットを当てて、ヤケクソになって大喜びするという大役まで果たし、帰り道、半蔵門線の車窓に映る疲れ切った自分の顔にびっくりしました。めちゃ疲れたわ。明日は寝て過ごそう。

ディズニーが苦手な私は、ペアチケットを会社の後輩にあげました。普通のディナーと交換で。後輩からはとても喜ばれた記憶です。

新婚生活の訪問

彼女は結婚しても仕事を辞めず、彼も羽田勤務だったので、羽田空港に便利な場所で新生活を始めました。初めて新婚のお宅を訪問する日、私は少しどきどき。新婚の家はきっと片づいているはず――と期待しました。

しかし玄関を開けると、靴が散乱。
リビングもソファやローテーブルがうっすら散らかっていました。
けれど、不潔ではない。台所は意外にきちんと手入れされていて、ゴミは几帳面に分別してる。どうやら「服を脱ぎっぱなしにする派閥」の片づけられない女のようでした。
彼女が作ってくれたイカと里芋の煮物を食べながら、新婚生活の話を聞く私。話してみるとやっぱり“ふしぎちゃん”で、浮世離れ女子の頃から変わらない。新婚のお宅に初めて遊びに来る友だちに、イカの煮物と魚河岸銘茶だけって、センスが不思議すぎる。と言いつつ、私もお土産に実家近くの老舗のさつま揚げを持って行ったので、センスは似ている。

彼女は変わらない、
結婚で、“ちゃんと片付けできる”女子に生まれ変わるミラクルは起きなかったのです。
片づけられない女子だけど、旦那さんは100年の恋は覚めていない模様。良かった。

安心するような、この先がまだまだ不安になるような――不思議な気持ちで、私はお茶をいただきました。

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