浮世離れ女子は紆余曲折を経てアラフィフお母さん女子になった
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結婚しても仕事を辞めなかった浮世離れ女子。これは意外でした。すぐに専業主婦になると思ってたから。
「子どもができるまでは仕事をするの。まだ行ってみたいところがいっぱいあるし、空の仕事が好きだから」
学生時代にあんなに起きられなかった彼女が、ちゃんと起きて働いていました。CAの仕事が楽しいんだろうな、眩しく見えました。
結婚して苗字が変わり、左手に指輪が加わりましたが、流行りのレストランでの食事や旅行の頻度は変わらず、華やかに暮らしていたようです。
羽田での再会と平和な時代
私が仕事で国内線を利用する機会が増え、羽田で会うこともありました。出張の帰りに、できて間もないスターバックスで待ち合わせをして、おしゃべりするだけ。
私の彼の話をしたり、CA仲間の愚痴を聞いたり、お局の態度の悪さを語ったり、アラサーらしいたわいもない会話をして、時々お土産を交換する。彼女のサンパウロ便の時に「日本で売ってなさそうなハワイアナスのビーサンを買ってきて」と頼んだことも。タイダイ風のビーサンを買ってきてくれて嬉しかった。
平和な時代でした。
夫の人事部異動と不穏な空気
30歳になる頃、競合日系航空会社の旦那さんが営業部から人事部に異動しました。勤務先は変わらず羽田。最初は「ただの異動」と思い、気にも留めませんでした。当時は30歳前後になると、ジョブローテーションで異動や転勤する人が多かったからです。
ところが、浮世離れ女子の様子が急におかしくなりました。嫉妬深くなったのです。
旦那さんの新しい役割は、人事部でCAのシフト管理。たくさんのCA女子の予定を調整するなんて、大変そう。私なら給料もらってもやりたくない仕事です。航空会社では花形の部署なのか、出世コース?それとも嫌な仕事?
国立大学で英語を専攻した旦那さんには、不本意な仕事なのかなと考えていました。
シフト管理と「ぴこぴこ」なるケータイ
余談ですが、シフトというものは、一度決まると逆に変えたくなるものですよね。予想外の予定が入るからです。私もアルバイト時代はシフトの交換をよくしていました。
バイトなら交換して店長に言えば済むけれど、会社となるとそうはいきません。人事部を経由しなければならない。CA女子の予定は、急な華やかな用事があったり、シフトを変えたい女子がたくさんいそう。考えるだけで疲れる仕事だわ。
多くの女子は会社の所定のやり方でシフトの調整を申請するものの、中には彼の個人のメアドを入手し、直接お願いしてくる女子もいたそうです。直訴系女子。めんどくさいやつです。
2000年代半ば、スマホ前夜。彼のケータイには、女子からのシフト調整メールが大量に届いていました。社用ケータイも個人ケータイも。二人で過ごしていても「ぴこぴこ」と鳴り続けるケータイ。
ただの厚かましい無法者女子からの連絡にすぎないのに、彼女は「こんな時間に連絡する?」「どうしてCAにプライベートのメアドを教えるの?」「浮気願望があるの?」と疑心暗鬼になって、嫉妬をメラメラさせていきます。
女子校育ち、仏文科卒。こういう時に免疫のなさが出るんだな、と私は思いました。
盗み見とAV視聴履歴の衝撃
彼女は社用・個人ケータイの暗証番号を解読、それは彼女のバースデーでした。愛されてる証拠じゃないかしら。それでも、彼女は彼がケータイから離れた隙に盗み見。さらにパソコンまで監視。
そして、知りたくもない彼のアダルトビデオ視聴履歴を発見してしまいました。
それは「派手なギャル系・巨乳好き。外国人も網羅」という嗜好。
彼女自身は華奢で透明感のあるタイプだったので大きなショックを受けました。私って、タイプじゃない?私と全然違う…外国人が好きなの?!
私から見れば「ないものねだりのアホな男の戯れ」にしか見えませんでしたが、彼女は悲しい妄想を広げていきました。
妄想の暴走と敵の増殖
「A子:今回も調整ありがとうございます!今度お茶をおごります!」
「B子:いつもありがとー!お土産あるから渡すね!」
「C子:ちゃんとお礼させてください!」
見たこともない女子たちを、彼女は「ギャル味があって派手気味でグラマラスなCAで、たぶん帰国子女」だと妄想。そんなCAいたっけ?たいてい清楚系じゃない?帰国子女は、風評被害。
彼女は、果てしなくネガティブに、ジェラスな被害妄想を膨らませていきます。
「絶対この女たち、気がある。そして彼もその気になっている」
「栃木のはじっこから出てきた田舎の男だから、勘違いして浮気に走るに違いない」
「根本的にCA好きな男」
最後のは、笑える。CA好きな男、たしかに。夢を叶えた仕事をして、奥さんもCAだもんね。
私は言いました。
「大学だって英語の学科だったんだから、女子はたくさんいただろうに。それに心配するほど彼はイケメンじゃないよ。髪は少し寂しいし、やや太ってるし、話もおもしろくない。ただの連絡係で便利なだけ。ケータイ盗み見するのやめなよ。バレたら修羅場だし、不幸にしかならない。彼に失礼だから、やめなさい」
スタバで彼女にカフェモカのトールを奢ってもらいながら話しても、聞く耳を持ちませんでした。まあ、気持ちは少しわかる。私もメールを盗み見して気持ちが荒れたことがあるから。
人事部女子とプロント監視作戦
やがて、敵はCAだけでなく人事部の意識高めな帰国子女の同僚女子にも広がりました。
社内飲み会の写真で顔を把握し、メールを覗いては「明日のランチは久しぶりに外に行こう」「了解!」といった普通のやり取りを見つけては不安に。
私は「そんなの毎日の雑談だよ。私も毎日してる。むしろ恋愛してたら社内ではヨソヨソしくするはずだよ」と諭しました。
それでも彼女は、彼の退勤時間を狙い、京急の改札近くのプロントで張り込みを始めます。彼が、一人で帰ってるか会社の通用口を監視するのです。彼ばかりでなく、人事部同僚女子のことも見張る。
狂ってる。
私が出張帰りに一緒にお茶した時も、彼女の指定席で通用口を見張っていました。私は背を向けているので見えませんが、彼女の表情から緊張感が伝わってきました。彼女は少し痩せていました。
まずは、人事部意識高い女子が出てきました。一人だったので彼女は安堵。かなり経ってから彼が出てきて、一人で帰るのを確認すると「一本後の電車で帰りたいから早く出よう」とせっつかれ、お店を後にしました。
栃木での暮らしとお母さんになった彼女
しばらくして、彼は家業を継ぐことになり、二人は栃木のはしっこの実家に帰りました。今は実家の縫製工場の社長さん。彼女は専業主婦で、子どもは二人。
上の子は大学受験。「留学したいって言うけど、女の子だから心配。東京とか大阪で一人暮らしさせるのも気が気じゃない。今どき何があるかわからないし、お金もかかるの。もう一人娘がいるし…」とLINEからは、すっかり「お母さん」になった姿が伝わってきます。
もう浮世離れはしていません。リアルな世界で、しっかりお母さんとして生きています。浮世離れ女子がアラフィフの今、現実お母さん女子になったのです。
片づけはできているのでしょうか。結婚20年以上の彼女に言うのは余計なお世話かもしれませんが、心配ではあります。とはいえ、わざわざ見に行く気力もありません。でも気になる。
そういうえば、あのスノッブなソバージュにトサカだったお母さんは80代でご健在。今も治部煮を作っているそう。そして、ド派手なメッシュに染めてるらしい。
お母さんが元気なうちは彼女は大丈夫。お母さんには長生きしてもらいましょう。
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