【短編小説】引きづった思い出 ── 三題噺「傘の賞味期限」
以下、「三題噺」の習作になります。
制限として原稿用紙2枚(800字以内)で書きます。
何がお題かは書きませんので、想像しながら読んでみてください。
それではどうぞ。
回想
モノの賞味期限について考えたことはあるだろうか?
食べ物ではない。賞味期限は「美味しく食べられる期限」を指すが、それをモノ全般に当てはめてみるとどうなるだろうか。
それは寿命とは明確に異なる。前者が、モノがモノとして活躍する期間と考えると、後者はモノが壊れた後だ。
ではこの古びたビニール傘はどうだろうか。
1年前に元カレの家から借りてきて、そのまま使い続けてしまったものだ。
カレはモノの扱いが雑で、すぐ無くし物、忘れ物をした。
ビニール傘ももれなく手元にない度、買って帰ってため込んでいたものだった。
ある泊りがけの帰り、その朝は雨で私も傘を忘れてしまっていた。
そんな時にカレが「適当に持ってっていいよ」と1本傘を渡したのだ。
ありがたく拝借して、そのまま返すのを忘れ、いつしか別れてしまった。
初めは、すぐ壊れてしまうだろうと高を括っていたが、存外頑丈で長持ちした。貧乏性もあり、使い続けてここまで来てしまった。
柄が錆びだしたこの傘はもう捨て時なのだろうか、それともまだ匂いのする味の残った傘なのだろうか。
雨の日の夜は、1つの傘の中に身を寄せ合ってコンビニまで歩いたものだ。
汁物やアイスを選びながら、店内で少し温まり、温もりを失わない内に再び1つの傘の下、家までつつきあい帰ったことが懐かしく思う。
私をソファに押し込んで、口笛を吹きながら汁物を電子レンジで温め、待つ彼はなんだか可笑しくて、でも温かかったことを記憶している。
未練がましく賞味期限の切れた傘を使っていることは、自分でも分かっている。
ただ匂いの残るこの傘に触れる度、彼の口笛が遠くからこだまするのだ。
講評
①構成は起承転結にのっとっているが、”転”の部分、記憶の中の情景が少し定型的すぎて、情景描写が"映像"として強く残らない。
→普段は「色、距離感、光、音」などを絡めて描くのが得意なはずなのに、この作品ではやや言語だけで流れてしまっている。
②独白体としては自然。ただし、自身が得意とする“詩的な硬さ”や“リズムの意図的操作”が控えめ。
例えば、《貧乏性もあり、使い続けてここまで来てしまった。》などの文は、やや無難で機能的。
ここに、**もう一段深い「情」と「比喩」**が入ってくると作品に膨らみが出たはず。
③ お題の扱い:見事に3つとも入っているが、“逆転”がない
ビニール傘 → 物としての出発点
賞味期限 → 思考の中心概念
口笛 → 回想の中の象徴
→ それぞれ意味的には成立しているが、「お題の意外性」「視点の跳躍」がないのが惜しい。
④ 自己陶酔度:1.5〜2.0相当:**中盤〜後半は「思い出にひたる独白」**にやや沈みがち。
読者が"自分の体験"として重ねづらく、「これは書き手の中にあるもの」止まりになっている印象。
→ 「客観的な読者の視点」を想像して削ったり、比喩で抽象化することで、陶酔度を1.0台に引き下げることを目標に。
振り返って
お題の3つを上手く使いきれなかった。特に口笛を口笛以上の意味として取り入れられていない点で、まだまだだと感じた。
自分とは異なる立ち位置の視点で、慣れないテーマで無理やり書いてしまった。そこに解像度の薄さがにじみ出ている。
作家は体験したことないことでも上手く書いているが、どうやっているのだろう。
自分が書く所まではできているが、読み手が自然と読み手を投影する文にはなっていない。そこがこれからの改善点になると思う。
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興味を持って最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
今回はnote執筆のクオリティの向上を目指して、練習で書きました。
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あなたに言葉が届くように精進します。
