「年末おもしろ短歌大会2025」佳作30首
こんにちは。短歌界にオナモミ(通称:バカ)のようにひっついて決して離れてなるものかと思っている丹生暁子です。誰がバカやねん。
オナモミも繁殖のために進化してああなっただろうに、バカ呼ばわりされてかわいそうではありますが鬱陶しいよね。私も繁殖するために(増える気?)鬱陶しいと思われながらでもひっついていこうと思っています。
さて今回は「年末おもしろ短歌大会2025」の佳作30首を紹介させていただきます。この大会に応募された作品の紹介は、恐らくこれで最後になると思われますので(今とても寂しい気持ち)、どうぞ存分にお楽しみください。
佳作30首
1.
工場でじじいとばばあが煎餅をしゃぶしゃぶ舐めてできるぬれ煎/瀧澤文生
嫌ーーー!!
いきなり嫌ーーー!!
嫌すぎるーーー!!
そんな嫌やのになんで佳作にしたん、と思われるでしょうか。
じじいとばばあが頑張っとるからや!!
でも嫌ーーー!!!
なんかもう想像するとウエ〜ッてなるような内容ですよね。でもこんなぶっ飛んだ内容なのにね、58577ではあるけれども短歌の定型にしっかり沿って詠まれているんですよね。丁寧に変なものを作るな(笑)。
この方、実は意外と律儀な方なんじゃないかしら〜と勝手に思っています。
しかもきれいにまとまっているせいか、ああこんな工場どこかにありそうよね、とかスルッと思っちゃうよね(ないわ)。
2.
プチプチの中の空気を助けたから地獄にプチプチが敷いてある/水上歌眠
プチプチの恩返し。あるよねー(ないわ)。
これには意表を突かれました。「プチプチの中の空気を助け」る??どんな危機があったの?!あのプチプチの中の空気に!?
この時点でかなり独特な空気を感じます。そして「地獄にプチプチが敷いてある」。優しい世界。で、あんたなんで地獄に堕ちたん(笑)。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を思い出しました。普段悪事を働いている人がプチプチの中の空気を何かの拍子で助けちゃう。そして地獄に行っても救いが残されている。
でもプチプチは自ら敷かれに行ったんだと思いたい。プチプチの健気さにジーンとしちゃう。地獄にまで来て恩返ししようとするプチプチ。かわいいよプチプチ。
3.
いい子ではなかったせいか年の瀬にサンタのコスで一人立つレジ/河原こいし
もしかしたらこういう人がプチプチを助けたのかも、と思っちゃいました。全然関係ないんだけどね。
しかもこの人は本当に「いい子ではなかった」訳じゃなくて、そう思ってやり過ごすしかないくらい何ともやり切れない思いを抱えてるってことですよね。
辛いわ。派手な格好をさせられてポツーンと一人立たされている。何の罰だろうか……、と思ってるんだよね、きっとね。サンタさんは来てくれないし、自分がサンタの格好をして見世物のようにならなければならない上に一人でレジ前に立ってなきゃいけない。
それもこれも「いい子ではなかったせい」だー!なんて言いたくなっちゃうくらいの遣る瀬無い気持ちなんだと思います。
だからこういう人の心にもプチプチが敷かれて、穏やかな気持ちになりますように。
4.
尿から糖?どういうことですか先生吸血カブトムシにモテますか?/しみず/いつき
どういうことですか?!
しみずさん!!!
どういうことですかーーーっ!!!!!!
先生もビックリ。
因みにこの「吸血カブトムシ」というのは実在はしませんが、私の調べた限り、
・『吸血鬼はすぐ死ぬ』という漫画のキャラクター
・『仮面ライダーV3』に登場する「プロペラカブト」というキャラクターが、女性の血を抜き飲んだりしていたせいで「吸血カブトムシ」と呼ばれる事がある
と創作物の中では存在するという事が分かりました。
そんな「吸血カブトムシ」にモテたいんですか?!!
どういうことですかしみずさーーん!!!!!!
この訳の分からなさと「尿から糖」から始まる流れるような勢いが気持ち良くておもしろくて好きです。
5.
「うどんでもいいよ」と君が言ったから七月六日はそんな風に言うならお前が作れよって喧嘩になった/有坂紘二(あるこじ/有坂紘二)
これぞ本歌取り。「七月六日は」まで来て、ああ!俵万智さんの有名なあの短歌ね!と思い出せる人はたくさんいると思います。そしてそこから雪崩れ込むような勢いで「喧嘩になった」まで続いていく。
しかし勢いがあると感じるのは短歌を詠む人間だけなのでしょうか……。「七月六日」から「喧嘩になった」までは字数で言うと余りまくりな部分なんですよね。だから普通の短歌の、57577のリズムを崩さずに読もうとすると、まるで「七月六日」から「喧嘩になった」までの部分は亡き者とするかのように、ズザザザザーッと勢いよく読みたくなってしまう。そのためこのお歌の後半は頭の中で早口で再生されてしまい、それによって可笑しさが増幅されているような気がします。
「うどんでもいいよ」なんて言われた日には、そりゃあ喧嘩にもなっちゃうよね。うどんだって粉から作ったら大変なんですよ(そうじゃない)。
6.
言い訳はこのあと進路をさらに変え、のち血の雨が降る模様です/楢原もか〜天真爛漫ソルジャー🌗
言い訳ってしだすとキリがないよね。どうしても出てくるボロを補おうとすればするほど「進路をさらに変え」るはめになり、どこへ向かうか分からなくなっちゃう。そして収拾がつかなくなる。
それを天気予報の解説に擬えて、「のち血の雨が降る模様です」で締めるのがうまいなぁと思いました。
何をしたん、この人(笑)。
「血の雨が降る」くらいだから余程の事でしょうか。進路が変わる程の言い訳もしちゃってるから逃げようもないでしょう。もし無実の罪に問われているのだとしたら、疑惑が晴れて仲直りできますように。
7.
キテレツに呼ばれるたびに「け」をちゃんと言い終わるまで怖いコロ助/daist
藤子・F・不二雄さんの漫画『キテレツ大百科』を皆さんはご存知でしょうか。アニメ観てたなー。エンディング曲の「はじめてのチュウ」がかわいいですよね。ご存知ない方も聴いてみてください。初々しいドキドキ感を味わえると思います。
で、こちらの短歌は『キテレツ大百科』を知らなくても、コロ助が江戸時代に生まれた(作られた)ちょんまげ付きのロボットである事を知らなくても、キテレツって誰やねんと思っている方にも至極分かりやすいように詠まれています。
「コロ助」の「け」をちゃんと言わないと一大事、ですよね?
「け」が「ぞ」になっても「け」が「ね」になってもヤバいやつ。
名前はちゃんと呼んでほしいナリ。
8.
肉まんを割ったら中にいた人に「寒いんで閉めてくれ」と言われる/百々風
それは閉めなきゃね。
じゃないのよ。
そこで暖をとるな(笑)。
「肉まんを割った」人も、え、なんで??ってなるわ。
でも「中にいた人」がしっかり自己主張してくれたから良かったのです。あとそんなちっちゃな人をちゃんと見つけられてよかった。うっかり割らずに食べちゃってたら大事故やて。こわいこわいこわいこわい。
返品できますか、この肉まん。
9.
デカすぎるインプラントの看板のデカ院長の歯が照らす街/琴里梨央
よくぞ詠んでくださいました!!この短歌を!!
歯科医院の院長のあのデカい看板、あれってどこにでもあるんですか?流行りなんですか?うちの近所もあっちもこっちも院長なんですが?!横を通る度に(こっち見んな)と思うんですよね。見てる訳じゃないのにね。
院長の真っ白な歯に照らされる街。さぞ眩しかろう。こっち見んなと思うよね、やっぱり。
あとこの「デカすぎる」は、言わずもがな「看板」に係っているのですが(「院長のデカ歯」じゃなくて「デカ院長の歯」だからね)、でもねでもね、「デカすぎるインプラント」だと思ってみて。
口からはみ出とる。インプラントが。
溢れんばかりのインプラントをなんとか口に収めた院長がニカッと笑っていたとしたら。
その白さに街が照らされるだけではなく、気持ちまで明るくなりそうじゃないですか(車運転してたら目を奪われて事故るど)。
10.
隣人の布団たたきの三三七拍子がだんだん近づいてくる/寿司村マイク
来んな(笑)。
布団叩きのあの迫力ある音が近づいてきたら怖いて。しかも三三七拍子。音が迫ってくるのに加えて、こちらに何かを要求しようと迫ってくる感じすらする。怖いて。
しかし布団を叩きながらどうやって近付いてくるのか問題。まさか音だけが近づいてくる訳ではあるまい。布団と隣人だけが近付いてきてたら怖いて。浮いとんのかい。台車に乗っとんのかい。迫り来る隣人と布団。ホラーやて。
11.
ハッハッハどこへ行こうと言うのかねムスカの声で暑気迫り来る/鷹緒
だから来んな(笑)。
なんでしょうね、この迫ってくるものの面白さ。しかもムスカ大佐の声がしっかり頭の中で再生されるジブリの影響力。いい声ですよね、ムスカ大佐。声優は寺田農さんでした。
そしてムスカ大佐の、あのどこまでもしつこく追いかけてくる執念深さと近年の暑気のイメージがピッタリ!!早々に春を追いやり、秋を侵略し、居座り続ける夏の暑さ。九州は暑いから北海道へ行こう!と思っても「どこへ行こうというのかね」とか言いながら追いかけてきそう。
暑気を追い払う呪文はないものでしょうか。
12.
神妙な顔の五歳におちんちん買えばいいよと励まされてる/吉野夏海
何を買えだって……?
落ち込んでた人も何で落ち込んでたのか忘れるくらいの威力がありますよね。それ買えるんや(笑)。
この五歳の子にとっては大切なものなのでしょう。残念ながら私にはおちんちんが無いので想像もつかないけれど、何か安心できるものでもあるのかもしれない。精一杯の励ましなんでしょうね。かわいいなぁ。
「神妙な顔」して珍妙なことを言う人に敵うものなし。これは元気出るわ。
13.
わたくしがローリングソバット繰り出してお開きになったらしい花見は/梅鶏(うめどり)
やらかしちゃったんですね、花見で。めちゃくちゃお酒を飲んだんでしょうね。もしくはお酒に弱いのに、ついつい気分が良くて飲んじゃったんでしょうか。
ちなみにローリングソバットとはプロレス技の一種で、「ジャンプしながらの回転後ろ蹴り」だそうです(「コトバンク」参照)。
繰り出す技が強烈すぎるのよ。そりゃ花見もお開きになりますわ。
しかも「お開きになったらしい」と言っているから記憶も無いのよね。二日酔いと申し訳なさでしんどくなるやつですね。皆さんもお酒の飲み過ぎには気を付けましょう。
そして梅鶏さんの短歌をもう1首紹介させていただきます。
懐く犬 わたしの中の綱吉がフェロモンとして溢れ出したか/梅鶏
綱吉どこにおったん(笑)。
こんな人と一緒に動物園に行って、綱吉フェロモンの威力を感じてみたいと思いました。
14.
鉢巻の左右に蝋燭捩じ込んで白装束で配る新聞/ふにふにヤンマー
街中の噂になるど(笑)。
普通の新聞なのでしょうか、それとも恐怖新聞か何かでしょうか。こんな格好で新聞が配られているのを見ちゃったら、もう触れなくなるよね新聞に。会社にクレームを入れたくても、関わりたくなくて何も言えないような雰囲気。
でも本当にこんな人がいたら、怖いもの見たさで見たくなっちゃうのが人間かもしれない。うちにも来ないかなー、Amazonの配達とかで。もちろん置き配で。
15.
腹いたのオオアリクイは昼食を一匹一匹思い返した/山下ワードレス
タイヘン。オオアリクイタイヘン。
人間ならね、お腹痛くなっちゃうと、あー、お昼に食べたあのカレーちょっと古かったかなぁ、くらいで済みますよね。せいぜい、あのカレーのジャガイモ変な味した……、くらいで済みますよね。
でもアリは……。
そこで私気になりましたので、果たしてオオアリクイは1日にどれほどのアリを食べるのか調べてみました。
「1日約3万匹のシロアリを食べる」
そうです。(引用元:静岡市立日本平動物園のホームページ https://www.nhdzoo.jp/sp/ より〈動物紹介〉→〈オオアリクイ〉)
1日3食としても1万匹。それを「一匹一匹思い返」すオオアリクイ。絶対原因に辿り着く前に寝てまうやろ!!
寝る前に数える羊ならぬシロアリの行列。
夢の中でも「あのアリかな……」と思うオオアリクイ。
うなされる可能性ある(笑)。
寝てる間にお腹が治りますように。
16.
伝説の包丁を抜きその日からママは専業主婦になったの/なんば鴨
カッコイイ!!選ばれし専業主婦!!
子どもたちに「なんでママは専業主婦なのー?」って聞かれたらこんな風に答えてみたい。
「伝説の包丁ってどこにあるのー?」って聞かれてうるさそうだけど(笑)。
しかし私は専業主婦ではありません。そして家事がものすごく苦手です。丁寧にやろうとすればいくらでも手間も時間も掛かることを、毎日の生活が滞らないようにやりこなしている人って本当にすごいなぁと思います。こちらの「専業主婦」もそんなすごい人に違いない。
そして、なんば鴨さんの短歌をもう1首。短歌を知らない人には通じないかもしれないけれども、短歌を詠んでいる人がこれを言われたらしばらくは立ち直れないかも(笑)。
かたちだけ三十一文字にするための無意味な助詞のようだね君は/なんば鴨
17.
またスマホ忘れてるよとLINEしてまたここで鳴るなるほどなるほど/カジヤメグミ
スマホを忘れているのを見付けてしまったら、早く伝えなきゃ!!と思いますよね。もうスマホってお財布にもなるし、電車に乗るにもバスに乗るにもスマホをピッとすれば済んじゃったりするから手離せません。きっと困ってるわ!と思いながら急いで連絡するよね。相手のスマホはここにあるのにね。
やっちゃうなー。慣れって怖いですね。眼鏡掛けてるのに眼鏡探したりするからね。こういう時はひとりでも恥ずかしーい!!ってなるんだけど、この「なるほどなるほど」とゆっくり事実を確かめるような感じと、まあそうなるよねーみたいなシラを切るような感じがジワジワ来ました。
そして「鳴る」と「なるほど」の音が重なって、リズミカルになっているところも好きです。
18.
レジャーーーシーーーートを諸事情でレジャシトにして座ったね草/川村サ行
見ただけで分かるレジャーシートのデカさ。これがまずスゴイ。それを「レジャシト」にするということは、ちっちゃく畳んだということですよね。狭い場所だったのか、人が多くて「レジャシト」くらいのスペースしかなかったのか。
そして「レジャシト」を敷いて「草」の上に座る。
この最後の「草」が曲者で、なんかちょっと取ってつけたような感じもします。でも最後に「草」じゃなきゃいけなかった。だってこれには私が言うまでもなく、「笑う」という意味も込められているから。
すんごくでっかいレジャーシートを「レジャシト」にして「草」の上に座って、その時一緒にいた誰かと「可笑しいよね」という気持ちを共有して笑っている。おもしろくて心が温まるようなお歌だと思います。
「レジャシト」が好きすぎて多用したくなりました草。
19.
立ち退きをまだ拒否してるおじさんは三遊間に住み続けてる/山本コヤ
居座るとかじゃなくて住み続けてるんだねー。長いねー。占有権を行使されちゃうと手を出せないらしいからねー。でも三遊間でも占有権って行使できるのかしら。家じゃないと無理か。
こういう場面に出くわすと、トイレどうするん……とかすぐ考えちゃうんですよね。猫砂みたいな感じでいけるのかな(いくな)。
次々に飛んでくるボールとか、選手のスパイクが激突してくるかもしれない危険性をものともせず「住み続けてる」んだから、相当な強者ですね、この「おじさん」。
って言うか「おじさん」がいても野球の試合って開催されるんだろうか……。
三遊間って住みやすいんですかね……(検討するな)。
20.
マジシャンに幹事を任せた飲み会で聞くに聞けない鳩の唐揚げ/淡島けのび
「鳩の唐揚げ」がまずレア(生ってことじゃないよ)。
わざわざ「鳩の唐揚げ」……ってことは、え、あのマジックで出てきたあの……?ってなりますよね。でも鳩とマジシャンって相棒くらいの仲なのでは……まさかそんなことは……なんて様々な思いが駆け巡って「聞くに聞けない」んだなー。聞いてみてもし「違うよ」と言われても、もはや信じられないよね(笑)。
きっとこの時のこの人は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたことでしょう。
21.
じいちゃんが撃たれて死んだふりをする心配になるくらい死んでる/稲山博司
じいちゃんは本当に、周りの目も少しは気にしてほしい!
うちの祖父がこんな感じで普段から冗談ばかり言っていたので、故意にボケているのか、本当にボケているのか、内容がスベッてしまっている時には特に不安になったものです。
心配ですよね。「撃たれて死んだふりをする」くらいだから、よく一緒に遊ぶ仲なのでしょう。そんな大切な「じいちゃん」がピクリとも動かなかったら。洒落にならんて。
でもこんなユーモアのある「じいちゃん」が大好きです。だから早く起き上がって(笑)。
22.
新しい顔に追いやられた顔をスタッフが食べた旨のテロップ/吉田冬扇
最近は視聴者がうるさいですからね。というより、うるさい視聴者がたくさんいた時代を経ての現在のテレビ放送の慎重さでしょうか。
これは恐らくアンパンマンでしょう。そして「追いやられた顔」ってだいたい汚れていたり食べかけだったりするんだけど……。もったいないと言えば確かにもったいないかもしれない。しかしスタッフて誰やねん(笑)。
そしてもう1首、吉田冬扇さんのこちらの短歌も好きなので紹介させていただきます。
その奥にこの世の全てがあると聞き我々はAmazonに向かった/吉田冬扇
23.
「迷い犬預かってます」の貼り紙の写真の犬の無遠慮なさま/一ノ瀬 美郷
迷っていたワンちゃんを拾ってくれた方がいたんですね。しかも写真付きの張り紙を作って貼り出してくれる、とっても親切な方。どれくらい親切かといえば、もう「写真の犬の」態度に現れています。
「無遠慮なさま」。
どんなだろう。お腹丸出しで寝てるのかしら。すっごく人懐っこいワンちゃんなのかもしれないし、拾ってくれた方も優しい方なんだろうなぁと思いました。
そしてこの張り紙を見た人はたぶん、「ほんとに迷い犬かよ」って思ってそう(笑)。
24.
エスキモーみたいな言葉を探す会、明け方「裏起毛」で決着/笠原楓奏(ふーか)
「エスキモーみたいな言葉を探す会」。一夜限りの会でしょうか。仲の良い友人達で集まって、夜中のテンションで始まってしまいそうな会。
最終的に「『裏起毛』で決着」したようですが、他にどんな言葉があったのかがものすごく気になる(笑)。何も出てこなくて「明け方」になっちゃったのか、たくさん出てきた混戦状態の中で「裏起毛」に決まったのか、どんな話し合いがなされたのかが気になるー!!私も入会したかった(笑)。
25.
何回もマリオは死んでその度に訃報を流すキノコ王国/ふうらい牡丹
キノコ王国の国民全員に謝りたい。
ごめんねーーーっ!!
何回もマリオを死なせちゃって、ごめんねーーーっ!!
キノコ王国に吹き荒れる訃報の嵐を巻き起こしていたことをお詫び申し上げます。
と謝り倒したくなってしまうような短歌です。まさかキノコ王国で訃報が流されているとは思わないじゃない。もし知ってたら緊張感が増す気もするけれど。
人間界ではゲームの上手な人が有名になる一方、キノコ王国ではゲームの下手な人の方が有名になるのでありましょう。
26.
「懐かしい」そよ風の中きみが指す「仮免のときこすったブロック」/りっとう ゆき
青春映画さながらの爽やかさで始まったのに、「仮免のときこすったブロック」で終わる落差。傷付いた車やブロックの傷の痛々しさにも思いを馳せているのでしょうか。「きみ」が懐かしんでいるその間、話を聞いている方の人も居た堪れない気持ちになってるかもしれないから思いを馳せてあげて!
私は幸い、免許取得までは特にアクシデントもなく過ごせたのですが、免許を取ってから擦ってしまいましたブロックを。これに関しては経験者が少ない方がいいのですが、ビックリするような音がするよね。
ガガガガガガッ!!!
心臓が縮み上がるとともに訪れる絶望感。皆様もどうぞお気を付けて。
27.
盗まれた方のバイクの持ち主は尾崎のせいで不自由になる/谷まのん
ここまでは考えたことがなかったなぁ。あの有名な尾崎豊が歌っている何となく正しそうなことというイメージに引っ張られて、盗まれた人のことまでは考えられていなかった。盗んだバイクで自由になった尾崎とは反対に、「不自由になる」人がいるんですよね、確かに。
短歌を詠む人は繊細な方が多くて、よく物事を見詰めて、色んなことを感じたり考えたりしていらっしゃる方が多いなぁと思っています。だから人それぞれの視点があって、それを短歌に乗せて発信してくださるのを面白いなぁと思いながら読んでいます。
「不自由にな」った人がいるんだよって言えるのも、大事なことですよね。
28.
「前回と同じ髪型で」と云はれ海馬の底にもなき前回/montre
「前回」がどれほど前なのか。毎月来る常連さんならギリ覚えている可能性もある(あるかな)。でも1年振り……いやいや5年振りとかにやって来たお客さんだったら……。
必死で思い出そうとしたんでしょうね、この方。記憶を司る海馬の中まで探して探して底まで行っちゃったのにそこにも無い!!
そりゃあね、1日に何人ものお客さんを相手にする事もあるのに、顔だけならまだしも「前回の髪型」ってどれだよ!!ってなりますよね。この「海馬の底にもなき」という言い回しも好きです。
montreさんの短歌をもう1首ご紹介します。
浮気した親父の頬へ母見舞う時速100マイルの平手打ち/montre
父ちゃんの頭吹っ飛ぶて。
「時速100マイル」は時速約160kmらしく、大谷選手が投げるボールくらいの速さだそうです。もうそんな父ちゃん放っといて、野球選手になろうぜ!母ちゃん!!
29.
どうしても増やしたくない洗い物レトルトカレー直に吸う夜/やすらか
「カレーは飲み物です」を体現してしまっている……。飲むゼリーに続いて飲むカレー、いや「吸う」カレー。
カレーオンリーなの?ライスを食べながら吸うの?
洗い物を増やしたくない気持ちはよく分かります。忙しいと特に、洗い物だけじゃなく作る手間やら食べる時間まで節約したくなっちゃいますよね。忙しくなくても、手を抜きたくなることだってあるよね。…………いつもだったらどうしよう。夜だからいっか(いいのか)。
レトルトパウチの切り口で、お口を切っちゃわないようにだけは気を付けましょうね。
30.
暴風をぎりぎり見極め登校し強風オールバック学校休校/青海波
「ぎりぎり見極め」たはずなのに。
「強風」で「オールバック」にまでなったのに。
「学校休校」。
なんでやねーーーん!!!
しかし暴風の中オールバックで校門を見詰めていたら、カッコイイかもしれない。
で、これでまた家に帰るとなると、今度は追い風の中進むことになるから帰りは楽かもしれない。髪の毛はオール前になるかもしれないけど。
実は青海波さん、この企画の最初の応募者でした。しかもいきなりたくさんのおもしろ短歌を投稿してくださって、その日は仕事中もニヤニヤが止まらなかったので、接客業じゃなくてよかったー!と心から思いました。本当は全部ご紹介したいくらいですが、もう1首だけ。
コロナ禍でマスクが体の一部となりそのまま食べそうになるラーメン/青海波
(追記:青海波さんのこちらの短歌2首は、どちらも実体験を元に詠まれたものでした。「強風オールバック学校休校」が強烈すぎてウッカリ忘れておりました。実話と言われると凄味が増しますね。あとマスクがラーメン風味にならなくてよかったな、と思います。なったの?)
いかがでしたか?以上が「年末おもしろ短歌大会2025」の佳作30首(+おまけの数首)となります。あーまだ読みたいなーと思ってくださった方、いらっしゃるでしょうか。
たぶんまた、このおもしろ短歌大会と同じような企画を開催します。次は早ければ春、遅くても夏には「おもしろ短歌夏祭り」を開催したいと思っています。「おもしろ短歌」略して「おもたん」を流行らせたい(笑)。
その時はまた、どうぞよろしくお願いいたします。
