神の子とダンジョン ・ 第24話 − 209
まず五組の対戦。
これは参加者を十六名にするための調整試合にすぎない。
だが、今回のスフィーダも勝者は、最初に名乗り出た十名の中から出る──
バカルは、そう確信していた。
十五歳で初参加し、あっさり優勝した自分もそうだった。
剣が好きで、試合が好きで、ただ勝ちたくて出た。
人数合わせの一戦にも迷わず名を連ねた。
勝者に与えられるシルバーリボンは、きっと、そういう奴の肩にかかる。
「怪我の防止のため、頭・首・胴への突きは禁止だ。
手足以外の部分に剣を先に二秒当て続けた者を勝ちとする。
無理はするな。降参を躊躇うな。
ルールは以上だ。」
バカルの言葉に全員が頷き、スフィーダは始まった。
一組目は、剣を払われた少年が即座に降参。
二組目は、膝下を繰り返し蹴られた少年が、顔を歪めて手を上げた。
脛は鍛えるのは難しい上に、かなり痛い。(つまんねえが……まあ、スフィーダはこんなものだ。)
審判役のバカルは、心の中で呟く。
参加者の多くは、スフィーダのために街の道場に通う。
剣を失えば逆転は不可能と教えられるし、突きは禁止という特別ルール。
ならば、狙うのは足。
常套手段だ。
三組目はジュニア──いや、トール二世の試合だった。
二世の身体は細い。
だが、バカルは彼が二年以上前から、この日のために準備してきたことを知っている。
構えは普通の中段ではなく、左利きの剣を、懐深くに収めた奥構え。
相手は一瞬戸惑い、それでも踏み込んで、右脚で二世の足を蹴りにいく。
トール二世は相手の右脚を剣で打ち、すぐさま肩でタックル。
間をおかず後に下がり、間合いを切ると再び左奥構え。
(おおっ……!)
足を誘い、その蹴り足を剣で打ってから、距離をとる。
スフィーダ用に組み上げた、新戦術。
攻めあぐねた相手が遠目の間合いから剣
を打ち込むが、二世は横に動きながら相手の腕に木剣を当てる。
ペシ…
軽い音しかしないが、繰り返されると痛みが増す。
やがて相手は剣を下ろした。
四試合目はジャック。
“ 神の子 ” を倒すと息巻く相手だったが、試合は一瞬で終わる。
ジャックは踏み込みと同時に、手首へ突きを一発。
乾いた音とともに剣が、カランと音を立て地に落ちた。
(場数が違うな。)
バカルは思う。
カナクイドリやワニの攻撃に比べれば、あまりにも遅く感じるのだろう。
五組目。
闇の中でも分かるほど赤い髪。
浅黒い肌のレキュア人の少年。
豪快な一撃で相手の剣を高く弾き飛ばし、勝負を決めた。
(……まあ、この三人の誰かだな。)
バカルは、そう結論づけた。
* * *
十六名のトーナメントは、奇妙な展開を見せた。
手足への突きを狙う者。
奥構えを真似て蹴りを誘う者。
力任せに剣を弾き飛ばそうとする者。
だが、即席の模倣が通用する試合は一つもなかった。
準決勝。
ジャックの相手は正統派。
何度か鋭い突きを防ぎ、互いの額が触れそうな距離まで詰める。
その瞬間だった。
ジャックは、無駄のない動きで相手に抱きついた。
場が一瞬ざわめく。
正統派の少年がジャックを振りほどこうとした、、、、 が、
「背中、二秒!」
勝負は終わった。
(…… ジャックらしいな。
抱きつきは、昔からあるにはある技だし防ぎようはない。)
バカルは静かに思う。
準決勝第二組。
赤髪とトール二世。
左奥構えの二世に、赤髪は蹴りを出さない。
低く飛び込み、剣を水平に薙いだ。
それに合わせ、二世も踏み込む。
鈍い音。
額と額がぶつかった。
(ここまで計算してたか!? 二世、スゲエぞ。)
赤髪がよろめき、鼻血を拭う。
それまでの礼を弁えた静かな気配が消える。
吊り上がった両目に、怒りが灯る。
その変化は、離れた位置にいるジャックにもはっきりと分かった。
赤髪は次の瞬間、低く構え直し、二世の腰へタックルを狙って飛び込んだ。
二世は、迷いなく膝を合わせる。
鈍い衝突音。
(エグい。
だが……非力だ、二世)
そして、その後はバカルの読みどおりだった。
顔面を血で染めながら、 赤髪はなお前へ出る。
剣を振り下ろしながら、頭突き。
二世も応じる。
鈍い音が重なり、 二人は同時に倒れ込んだ。
降り続ける雨のせいで、通りには水溜りが、あちこちに出来ている。
立ち上がったのは赤髪だけだった。
血と泥水だらけだ。
二世が意識を取り戻したのは、バカルが赤髪に勝利を告げた後だった。
興奮のあまりか、赤髪は血を拭いもせず、吐き捨てる。
「手間取らせんじゃねえよ。」
その声は、二世とジャックの耳に届いた。
いや ―― 届いてしまった。
決勝戦前。
トール二世にジャックが、
「あの言葉は、取り消させる。」と、言った。
続きます
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前のお話
今回のタイトルカットは、フレキシブルフランクこと、ChatGPTの作画
神ダンの第1話は、こちら↓
