【最終回】ノカナのジャック 第12話 − 173
− それから、1年余り後 −
開かれた城門から、沢山のレドゥビア城下の民が入城してくる。
へぇ、こっちの世界でも六月の花嫁伝説があるとはね。
そう思いながらも、眼前で純白のドレスに身を包み、花束を手にこちらを見つめるアルス姫は美しかった。
「違うな。 美し過ぎて、例えようがないと訂正するっ!」
突然の勇者の言葉にアルス姫が微笑み、その父であるレドゥビア王が、戸惑った表情を浮かべる。
「勇者よ。
いかなる訂正かは察しがつくが、 開城しての披露宴など前代未聞だ。
ノカナやメリンバの王族も席を連ねている。
帝国とは停戦となってはいるが、何かありでもしたら……」
レドゥビア王の言葉に、意外そうな顔で勇者が応じた。
「王よ。
本日は神の子に来てもらっております故、心配は無用と存じます。」
信じられない、という表情でレドゥビア王が、
「……ま、まことか……」と絶句する。
その様子を見て、アルス姫は微笑みながら、そっと勇者の手を取った。
アルプスからの風までも柔らかで、初夏のレドゥビア城内に爽やかな風が舞っていた。
歩き出そうとする2人に、物影からジャックが勇者に声をかける。
「ホントに全部オイラまかせなんだ。」
勇者が、姫の侍女達に合図をしながら
「ああ、ヨロシク。」とだけ応える。
すぐに、アルス姫が言葉を続けた。
「いつも貴方は言葉が少し足りないから、改めるようお願いしてますよね。
越後屋ジャック様、あなたのおかげで安心して参れます。
どうかよろしくお願いします。」そう言って、物影に立つジャックに頭を下げた。
少し後、
勇者がアルス姫の手を取り、広場に続く大階段に姿を現した時、大きな歓声が湧き起こった。
民達が興奮に包まれ、喝采の声を上げる中、アルス姫は侍女から渡される花束を、次々と広場へ投げ入れていく。
街娘達が狂喜し、
放られるブーケに群がる――
その最中、それは起こった。
突如、勇者とアルス姫の眼前に三名の賊が現れ、両端の二人が、あろうことか剣を抜いた。
城内の広場が、静まり返る。
見れば、中央の賊の前には、四層にも重なる魔法陣が形作られていた。
事前に詠唱していたか――!?
もう間に合わぬ、とレドゥビア王は思い、二人を見やった。
しかし、王が見たのは嗤っている勇者の顔だった。
それは、ようやく遊び相手が現れた子供のような笑顔だった。
「お覚悟!」
賊の魔導師らしき男が叫ぶと同時に、風に吹かれた粉のように魔法陣が、消えていく。
勇者が右手を上げ、塵でも払うかのような仕草をした――
その、次の瞬間。
賊共は城塞の遥か彼方へ、見えない巨人に掴まれ、投げ出されたかのように、宙を舞い、そして消えていった。
再び歓声に包まれる中、
「これではまるで、貴方が神の子のようね。
まあ、そんなところも好きなのだけれど。」
そう言って、アルス姫は勇者の頬に、透き通るような恥じらい色をした唇を寄せた。
おしまい
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タイトルカットは、もう一人の神の子こと、越後屋ジャック
作画:優音先生
読んでくれた皆様、
ハートやコメントをくれた皆様、本当にありがとうございます。
師匠様、やはり今回も意味不明なんでしょうかね?(ノД`)シクシク
皆様がいなければ、書き上げられなかったかもしれませんし、特に優音先生には感謝感謝です。
次のお話は、本日中に投稿予定。
『神の子とダンジョン』
新しい物語も、読んでくれたら、、、、
正直に言いますね。
是非是非読んでくれたら嬉しいです。
柾しの
最後になりましたが、note世界の絵師様の素晴らしさを教えてくれたpon先生に、特別な感謝を。

