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ノカナのジャック【ダンジョン・第11話】 − 171

 野犬の群れが、左右に広がった。  
 俺たちを逃がさない — いや、狩り殺す。  
 そんな意志が、はっきり伝わってくる。

 震えているのだろう。  
 用心棒さんの剣が、カタカタと小さな音を立てている。

 野犬どもは、楽な狩りだと思っている。 
 分かる。 
 だって、道場で見たバカルみたいに、リラックスしている。

 ……ああ、そうか。

 オイラは、細い玉子のような形をした宝具 “ 魔弾 ” を左手で握りしめる。
 一番身体の大きな野犬に向け、  親指が触れる、ポッチのついたボタンを押す。

 シャッ、、、
 短い射出音。

 反射的に、群れの中央にいた大きな野犬が横に跳ぶ。
 だが、無駄だった。  
 魔弾は、必ず当たる。

 左手の先から、その野犬の胸まで。  
 キラキラとした粉のような光が、  曲線を描いて宙に残る。

 キャン…   

 短い鳴き声をひとつ残し、  その野犬は倒れた。
 魔弾を、手のひらの内側で握り直す。  

 二発
 魔弾は、二発しか撃てない。

 ……フーッ。
 隣の用心棒さんから、  長く息を吐く音が聞こえた。

 左手を伸ばしたまま、一番右端の野犬を狙うフリをする。
 その野犬が、それを避けるように右へ跳ねた。

「どうりゃぁーっ!」
 烈帛の気合とともに、間合いを詰めた用心棒さんの剣が、空中の野犬を切り裂く。

—  これで二匹。

 首をガードしていたナイフを持つ右手の構えを解く。
 野犬が、じりっ、と後退った。
(そうだよな。
 魔弾が二発しか撃てないのは、オイラしか知らない。)

 もう一度、辺りを見回す。
 やはり、俺たち以外に人影はない。

 ……今度は、
 好都合だって思えた。

「精霊よ。
 紫に輝くオマエの力を、もっと示せ。」
 右手のナイフの起動音が大きくなり、視界の右下が、薄く紫に染まっていく。

 用心棒さんが剣を上段に構える、その前に。野犬の一匹が、飛びかかっていった。

 シャッ!

 煌めく弾道の軌跡を残し、その野犬も、倒れる。
 魔弾は外れない。
 2発しか撃てないけれど。

 残りの野犬が、一斉に俺たちへ飛びかかってきた。

 …… 。
 それからの事は、よく憶えていない。
 吹き出した野犬の返り血が喉に入り、むせ返りながら、ナイフを振り回した。

 足首とか、左肩を噛まれて……

「ジャックさん。
 ジャックさん!」
 用心棒さんの大きな声が、遠くで聞こえた。
 
 白くて、広い部屋。
 白い服に、三角布を頭に巻いた女の人と目が合った。

「そうですか。
 ありがとうございます。」コーエンさんの声。
 気がつくと、外にいるようだった。
 誰かに、背負われている。
 自分で歩きます、と言おうとしたけど、
言えたのかな……


 違う部屋。
 オイラと同じくらいの男の子。
 利口そうな顔をしていた。

「大丈夫なの?
 ちょっと、アンタしゃべりなよ!」
 ラビだ。
 アイツは、いつもウルサ……

   *    *    *

 喉が乾いた。
 野犬の返り血の味を思い出して、
「げえッ!」と声が出て、目が覚めた。

 ラビが、オイラを見てる。

「知らせてきて。」
 なんだよ、……アイツ小さな声も、出せるんだ。
 水を、二杯飲んだ。
 ラビが静かにしているのが、変ていうか、面白くて。
 思わず笑ったら、左肩が痛い。

 足。
 右脚も、痛いや。 

        
             続きます

 ******************

 魔弾(ハートシーカー)のタイトルカットは、今回もフレキシブルフランクことChatGPTによる作画

 ラストにラビのイラストあり〼

 旧市街語り

 この前の物語は、こちらのリンクから


作画:優音先生・お店のラビ

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