メルセデス・ベンツ「ミニバン=プレステージカー」に参入、新型VLEを一足お先にフル解剖
最新のメルセデス・ベンツはモダンな洗練さを強くアピールしていますが、その中で伝統の“質実剛健”をシッカリと継承し続けてくたのがミニバンのVクラスです。ただ、近年ミニバンはセダンに代わるプレステージへと役割を変え、高級化が加速。商用車派生モデルという枠組みでの戦いに限界が見える中、全てを刷新して登場したのが、新型「VLE」になります。今回スペイン・ビルバオで見て・触って・乗ってきたので、車両紹介および試乗インプレッションをまとめてみました。
1. 概要・コンセプト

「Vクラス」からの刷新と新たな位置づけ 伝統の「質実講健」を受け継いできたVクラスですが、近年のミニバン市場における「高級セダンに代わる新たなプレステージ」というニーズに対し、商用車派生モデルの限界を超えるべく完全刷新されて誕生したBEV専用モデルが「VLE」です。



独自セグメント「グランド・リムジン」 単なるミニバンではなく、最大8席の広大な空間を持つ「グランド・リムジン」という新たなセグメントを定義。最新のデジタル技術と極上の走りを融合させ、セダンに代わる新世代のショーファーカーとして開発されました。

2. 生産拠点:スペイン・ビトリア(Vitoria)工場の刷新

歴史と大規模リニューアル 試乗拠点(ビルバオ)から約1時間の距離に位置するビトリア工場は、VクラスやVitoなどの生産を支えてきた拠点です。VLEの生産開始に合わせて大規模な改修が実施され、非常にクリーンで静粛性の高い先進的な工場へと変貌を遂げました。


フレキシブル生産とファクトリー・ラボ
100%の柔軟性:既存のVクラス、Vito、eVito、そして新登場のVLEを同じアセンブリラインで流す「混流生産」体制を整備。
ファクトリー・ラボの活用:稼働を止めることなく新プロセスを組み込むため、設備やデジタルツールを事前テスト・構築する社内ラボを導入。徹底したデジタルシミュレーションと予測保全(Predictive Maintenance)を活用しています。
マルチマテリアル対応:スチールとアルミを最適配置するハイブリッド接合技術(13種類の接合プロセス、1,000台以上のロボット)を導入。
人への投資:約5,000名の従業員に対し、新技術・AI・IT標準プロセスに関する160以上のトレーニングを実施しています。

3. エクステリア&パッケージング
“バン感”のないワンモーションシルエット 流麗なワンモーションシルエットとクラシカルな大型フロントグリル、リアの逆U字型ライトを採用し、商用モデルとは完全に別設計の洗練されたデザインを実現。

巨体と驚異のCd値(0.25)
ボディサイズ:全長5,309mm × 全幅1,999mm × 全高1,943mm、ホイールベース3,342mm。
空力性能:車両後方のルーフラインをわずかに下げる設計など徹底した空力最適化により、ミニバンとしては異例のCd値 0.25を誇ります。
仕様展開 ベーシックな「スタンダード」、スポーティな「AMGライン/AMGライン・プラス」、最上級の「エクスクルーシブ」を設定。



4. インテリア&利便性
フルデジタルコクピット 10.25インチドライバーディスプレイ、14インチセンターディスプレイ、14インチフロントパッセンジャーディスプレイ(グレード別)を統合したスマートなインパネを採用。

多用なシートバリエーション
スタンダード:脱着性・移動性を高める車輪が付いた手動シート。
AMGライン:電動調整式キャプテンシート(「エグゼクティブモード」「ラゲッジモード」などの電動アレンジ機能)。
エクスクルーシブ:オットマン、マッサージ、ベンチレーション&ヒーター、格納テーブルを備えた「グランドコンフォートシート」に加え、後席用31.3インチ8K格納式大型スクリーンや冷温庫を装備した“全部盛り”仕様。




日本のミニバン文化を捉えた利便機能 開閉式スライドドアウィンドウ、リアウィンドウのみが開く「デュアルバックドア」、ハンズフリーアクセスなど、日本のミニバン市場で重宝される機能を網羅しています。



5. パワートレイン&メカニズム
BEV専用プラットフォーム「VAN.EA」 フロント/センター/リアの3モジュール構造による高い拡張性を持ち、乗用・商用の明確な差別化を可能にしています。アルミ比率50%のマルチマテリアルボディにより軽量化と安全性を両立。


スペックと充電
VLE300(FF):最高出力 276ps
VLE400(4WD):最高出力 407ps
バッテリー:112kWh NMCバッテリー(重量約640kg、車両総重量は3,500〜3,700kg)
航続距離:欧州モードで700km以上
急速充電:800Vテクノロジーにより、わずか15分の充電で355km走行分の給電が可能。


超低パッケージ化によるフラットフロア 4WDモデルのリアモーターやAIRMATICサスペンションのダンパーを約45度寝かせて配置することで、室内高を犠牲にしない完全フラットフロアを実現しています。

6. 試乗インプレッション(スペイン・ビルバオ)
【街中・取り回し】
リアステア(最大7度)による小回り 道幅が狭くタイトなビルバオの街中でも車体が驚くほど「小さく」「軽く」感じられます。最大7度のリアアクスルステアリングにより、最小回転半径は約5.5mとコンパクトカー並みの取り回しやすさを達成しています。

【乗り心地】
「フワフワなのに芯はシッカリ」 路面の凹凸の入力をあえて一瞬で抑え込まず、時間をかけて“溶けるように”いなす質感は、アジリティ重視にシフトする前の往年のメルセデスやマイバッハを思わせる極上の快適性です。AIRMATICサスペンション(車高調整幅80mm)の緻密な制御がバネ上を自然に保ちます。
【ワインディング】
セダンに近いスマートな身のこなし 床下バッテリーによる低重心と4輪制御により、コーナリング時も前のめりにならず4輪をフルに使ってスムーズに曲がります。セダンと変わらないボディコントロールを見せ、高い限界性能とドライバーへの安心感、後席の乗員への G を感じさせない空間を提供します。

【高速巡航】
重さが走りを変える直進安定性 3.5〜3.7トンにおよぶ超重量が強みとなり、横風や路面のわだちに一切乱されないどっしりとした直進安定性を発揮します。

【パワートレイン】
扱いやすさとモード選択 コンフォートモードでの過渡特性は扱いやすい反面、踏み込んだ際の力強さは力学数値を踏まえるとややマイルドに感じられる場面も。スポーツモードでは一変して俊敏なレスポンスを見せるため、ドライブモードの積極的な活用が推奨されます。
7. まとめと日本市場への課題
新型VLEは、これまでのミニバンの概念を覆し、メルセデス・ベンツが本気で挑む次世代のショーファーカーです。今後は上級の「VLS」や「マイバッハ」モデルの投入も計画されています。
日本市場導入にあたっての唯一の懸念は車両総重量(3.5t〜3.7t)です。2017年3月以降に取得した日本の普通免許(3.5t未満限定)では運転できない可能性があるため、日本仕様としてどのような重量・スペック調整が行われて上陸するかが注目されます。

