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それって「言語化」じゃなくない?

Xに長文記事が投稿できるようになってから、人間の心や行動を「言語化」した記事がバズって、「本質すぎる」「言語化能力やばい」みたいな引用がついて、またそれが拡散される…といったことが毎日起こっているようです。

これは本当に困った風潮だと思います。もう100回くらい言ってると思うのですが、事実と解釈は異なるということをうまく認識できていない人がすごくすごく多いようなんですね。事実と推測は異なるし、事実と想像は異なるし、事実と感想は異なります。

たとえばの話、同じ職場で働くAさんの言動が最近いちいち鼻につくとしましょう。あるとき、ふと「自分が仕事で伸び悩んでいるから、そつなく立ち回って出世コースに乗ったAさんに嫉妬しているのかもしれない」と気づいたのなら、それは言語化です。自分のモヤモヤを以前よりも正確に理解し、そこに言葉を与えることができました。

あるいは、Aさんに強引なやり方で周囲を押しのけるような癖があって、自分が昔そうされたことに今でも怒っているとか、同じように不意打ちを受けたBさんの傷ついたような顔が忘れられないというなら、その気づきもまた言語化です。ずっと心に抱えてはいたけれど、言葉と思考のレベルでは掴めていなかった感情的な背景を再認識することができています。

しかし、ここで「Aさんがよく意地悪してくるのは、実は私に嫉妬しているからだ」と考え始めるならば、それは言語化ではないです。単なる想像であり、憶測であり、都合のいい決めつけでしかありません。このように解釈した人物は、Aさんの心の中身を実際に確認したわけではないからです。

この人物がAさんの心の動きをどれほどもっともらしく「心理学的に」「論理的に」説明したとしても、それを言語化と呼ぶのは不適切です。それは普通に妄想と呼ばれます。

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大まかに切り分けるなら、自分で確認できる心理的な事柄を言葉によって整理していくのは「言語化」と呼んでよく、自分で確認できない他人の心理や社会の構造について適当な説明をでっち上げることは「言語化」ではないのだと言えます。

別の言い方をすると、他人の行動に対する自分のモヤモヤを言葉で整理することは言語化ですが、他人に対して「あの人がいつもこうする本当の理由」を妄想することは言語化ではありません。対象をもっと一般化した「成功者だけが持つ思考の習慣」とか「大切にされる女は何が違うのか」といった話も同じです。

これらはいずれも、人間と人間社会に対する想像と解釈でできています。しかし、当たり前の話として、想像は事実ではないし、解釈は事実ではありません。事実でない説明をありがたがることには意味がありません。

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私たちが現実の問題に対処するとき、想像や推測でなんとかするしかない場面が多いというのはもちろんのことです。芯の通った生き方をしていくためには、自分なりの解釈の枠組み(=世界観)を持つということも大事でしょう。仮説とか行動指針という意味では、これらの視点は必要なものです。

自分の考えや感覚を自分の言葉できちんと表明するということも、同じように大切です。あなたの意思と感情はそれ自体で大切なので、それが正しくないとか意味がないということは一言も言っていません。また、人間にとって最も価値のあるものを決めるのは本人の主観であり、主観を持つことがダメだということも言っていません。

しかし、事実と混同された解釈には意味がないし、そうした主張は本人にとっても周囲にとっても有害なものとなります。主観は重要ですが、客観性を装った主観は有害かつ無益です。

解釈を叫ぶ人物は、あなたが生きていく上での悩みや苦しみを解決してはくれません。それは仕事上の悩みを解決しないし、人間関係の悩みを解決しません。事実が理解されないままに現実の問題が解決されるということはあり得ないからです。

彼らは「そのとおりだ!」と拍手喝采してくれる聴衆を必要としているように見えます。聴衆もまた、そのような依存先を切実に求めているようです。あなたの周りでも、何割かの人々がその人だかりに加わるのが見えることでしょう。

どうして我々はこんなにも混乱しているのでしょうか? 「言語化」された説明がないとそんなに不安なのでしょうか。その投稿にいいね数が1万くらいついていないと安心できないほどに、自分に自信というものがないのでしょうか。なぜ「正しさ」を大声で保証してくれる他人が必要なのでしょうか。

そうやって他人が用意した言葉を山ほど詰め込まなければ自力で立っていられないほどに、我々には中身というものがないのでしょうか。

おそらく、それが問題の根本なのだと思います。我々はどうしてこんなにも空っぽなのでしょうか。どうしてだと思いますか?

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「なぜ私たちはあるがままの自分に安心も満足もできないのか」という問いかけは、先日出版した「人間関係が苦手でもなんとかやっていくための本」でも時間をかけて考えたものです。マガジンに「試し読み版」もまとまっているので、興味を引かれた方はぜひ読んでみてくださいね!

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