60代のリアル|第27話:【実録・事務職の逆転劇】会社が作らなかった体制を自らの手で。一人で背負う限界から、ついに脱した瞬間。
前回までのあらすじ
誰にも頼れない月末の激務に限界を迎えた私は、大型連休中、AI(Copilotさん)とともにExcelの「メーリングリストチェックツール」をVBAで自作します。
膨大なエラーメールは一旦エクスポートして退避させる苦肉の策をとりつつも、データの不備を自動で検知・修正できるマニュアル不要の仕組みを構築。
新人さんと私自身を守るための「光」を携え、私は連休明けの5月7日、決意を胸にオフィスへと向かいます。
5月7日(木)
長い連休が明け、いつものオフィスに戻った私は、朝一番のルーティンである入金データの取込作業を黙々とこなしていました。
作業が一段落した、その時でした。 「溜まっているメーリングリストの更新作業はありますか?」
中途採用の新人さんが、席からそっと声をかけてくれたのです。 一瞬、耳を疑いました。
まさか新人さんのほうから、あの複雑で大変な作業を気にかけて、自ら進んで聞いてきてくれるなんて。
「なんて凄い人なんだろう……!」
孤独に書類の山と戦い続けてきた私の心に、じわっと温かい灯がともるようでした。
新人さんのその一言だけで、背負っていた重荷が半分軽くなったような気がしました。
私は、連休中に温めていた計画を実行することにしました。
溜まっていた作業を新人さんに引き継ぐのと同時に、今回は絶対に失敗しないと決めていたのです。
連休前の反省を活かし、操作手順だけを詰め込むのではなく、このメーリングリスト作成の「目的」や、業務の「全体像」、そしてもしデータ更新が上手くいかなかったときの対処法まで、しっかりと落とし込もう。
ただ、それには少し腰を据えて話す時間が必要です。
「何時からであれば、少し手が空きそうですか?」
そう問いかけると、お互いのスケジュールを見合わせて、11時過ぎから1時間ほど時間を取って説明することになりました。
時計の針が11時を指すまでの間、私は手元にある急ぎの請求書発送などの作業を急いで片付けていました。
しかし、ふと手元を見ると、連休中にも容赦なく動いていた入金データがあり、それらの入金消込がまだ完了していない現実に突き当たります。
目の前の作業に追われながら、やっぱり頭のどこかで考えてしまいます。
「この入金消込の作業だって、もし二名体制になれば、どれほどミスなく、スムーズに回るだろう……」
組織がリスク管理を怠り、一人に全てを押し付ける体制への疑問は、そう簡単には消えません。
でも、今の私には連休中にCopilotさんと作り上げた「武器」があります。
11時過ぎ。
約束の時間を迎え、私は新人さんの席へと向かいました。
新人さんのパソコンの画面でメーラーを見ながら、まずはこの作業の「目的と全体像」についての説明から始めました。
それから、前回説明した操作手順をおさらいするように、もう一度、実際の作業を新人さんと一緒に一つずつ丁寧に行っていきます。
ひと通りの流れを終えたところで、私は連休中に形にした仕組みを共有しました。
「もし、ここで上手く更新ができなかった場合は、このツールを使ってみてください」
それは、Copilotさんと試行錯誤して作成したVBAツールでした。
マニュアルを細かく説明しなくても、画面を見れば「ALT+c(チェックのみ)」「ALT+k(自動修正)」とひと目でわかるように工夫してあります。これなら、新人さんもきっと迷わずにできるはずです。

「依頼を貰ってから営業日で5日以内という社内ルールがあるので、今回の分は5月13日までにお願いしますね」と伝えると、ツールを確認した新人さんは、ぱっと表情を明るくして言ってくれました。
「自動修正、いいですね!それに、メールアドレスの後ろにある空白なんかは、印刷してもおかしいところに気がつけないですから……。了解しました、やってみます!」
その心強い言葉を聞いた瞬間、私の張り詰めていた肩の力が、すうっと抜けていくのが分かりました。
会社が用意してくれなかった「二名体制」が、私の作った仕組みと、新人さんの優しさによって、いま確かに動き出した。
それは、孤独だった私の世界に、確実に新しい風が吹き込んだ瞬間でした。
つづく
第28回はこちらです。↓
最初から読みたい方はこちらからどうぞ
