Claude Fable 5 公開中の3日間で300万円を課金した話
2026年6月10日(日本時間)に公開された Claude Fable 5 は、公開からおよそ 3日後、米国の輸出規制によって使えなくなりました。私は少し触った途端、その自律性と性能に圧倒されました。後先を考えず、手元の環境を全部このモデルに突っ込んで使い倒した結果、Fable 5 が公開停止されるまでの3日間での、Anthropic課金額が大変なことになりました。
念のため、この記事で記したいのは金額の多寡についてではありません。Claude Code のセッションとサブエージェントを数十体、ほぼ24時間並列で回すと、ソフトウェアの外側で物理的な問題が次々に出てきます。発熱、電力供給、ネットワーク、そして費用。順番に、どんな課題が出て、どう対処したのかを書いていきます。
前提:エージェントの階層と作業環境
まず私の環境です。Claude Code を MacBook Pro 上で同時8〜10セッション立ち上げているとします。各セッションがメインエージェント1体、そのメインがサブエージェントを5〜最大100体コールします。全体では数体〜百体程度が同時に動いています。またタスクによって、OpenClaw, Hermes, Local LLM を並列で動かしています。

この密度をPC 1台では抱えきれないので、MacBook Pro をハブに、Mac mini 2台と産総研のスパコン ABCI へ SSH でつなぎ、負荷を分散しています。

次に、上記構成で直面した課題と、それぞれの対処について記していきます。
課題1、発熱:正規ファンでも CPU が100°Cを超える
数十体のエージェントを回すと、CPU/GPU はほぼ上限に張り付きます。MacBook Pro のファンが全開で回っても、CPU が 100°C 超に達します。もしかしたら目玉焼きも焼けるのではないでしょうか。
温度が上がるとクロックが落ち(サーマルスロットリング)、セッション全体が遅くなります。

対処は2つです。1つ目は温度の監視とファン制御。Mac 用ソフトの TG Pro で各コア温度を常時モニタリングし、ファンを手動で最大に張り付けます(標準の自動制御では上がりきってからしか回らないため)。
2つ目は負荷を1台に集約しないこと。重い処理を MacBook Pro 単体に抱えすぎず、同用途の Mac mini へ逃がし、本当に重い並列GPU計算は ABCI 側へオフロードします。物理的に別筐体へ散らすことで、情報処理による熱生産を分散させます。
課題2、電力:供給が消費に負ける
セッションが増えて Local LLMも回し、後述のように外付けディスプレイが6面あると、消費電力は増大します。困るのは、正規の電源アダプタを挿していても、供給が消費に負けることです。電源なしだと、フル充電の MacBook Pro でも 1時間で 100%→0% まで落ちます。発熱対策と電源対策は表裏一体で、負荷を複数筐体へ散らすことは必要電力を散らすことでもあります。
対処としては、アクティビティモニタでこまめに電力監視しつつ、PC 自体を分散・併用して一点集中を避けること。そして移動時は、Anker の大型モバイルバッテリーを2台持ち歩いています。外で複数セッションを回し続けながらの、安定した電源供給にたどり着くまでには紆余曲折がありました。
課題3、ネットワークとセキュリティ:自律エージェントを閉じ込める
Mac mini では、自律性の高いエージェント(OpenClaw)を動かしています。自律性が高いほど、暴走や、こちら側の情報を引き出されるリスクが懸念です。
対処として、ノード間は Tailscale 越しの SSH でつなぎ、MacBook Pro → Mac mini の情報流通を一方向に限定しています。Mac mini 側から MacBook Pro の情報は取りにいけません。また、OpenClaw は、会社でも個人でもない専用アカウントで隔離して運用しています。自律エージェントには、その行動範囲を、ネットワーク・アカウント・専用筐体の3方向から物理的に絞っています。
課題4、計算資源:スパコンを間借りする
ローカルの GPU だけでは、並列GPU計算が頭打ちになります。ここは ABCI(産総研のスパコン、NVIDIA H200 が 6000枚)にアウトソースして、重い並列計算をオフロードしています。
課題5、青天井のコスト
どうしようもないのがコストです。私は自動チャージは使わず、オフにしており、残高が尽きるたびに、手動で 1000 ドルずつチャージする運用です。Fable 5 を回し始めると残高がみるみる溶けるので、結局1日に何度も手動でチャージを足すことになり、請求履歴が「$1,100 Paid」で埋まっていきました。少し前までは、1000ドルまとめてチャージすると、トークンが 30% おまけで着いてきたものですが、今やおまけがないどころか、消費税分の10%が重く伸し掛かって来ます。

数日のうちに約300万円が積み上がっていきました。このときは無我夢中で、何がどこまでできるのか、寝食を忘れて取り組んでいました。
確信犯でチャージしているので、対処も何もないのですが、一般的な話として、自動チャージはオフにして、また、月額上限を設定しておくのが無難だと思います。これ自体がブレーキで、残高が尽きるたびに「ここで本当にもう $1,100 チャージするのか」を毎回自分に問えます。次に全部を最上位モデルに振らないことや、こまめな `/compact` あるいは、HANDOFF.md の作成 & 新規セッションへの移動も有効です。
課題6、人間側(私)のボトルネック
並列化に取り組むほど、最後に詰まるのは人間の入出力です。数十体のエージェントの進捗を1人で見張るには、画面も入力も足りません。
次善の対処として、物理環境への投資と試行錯誤を続けています。分離キーボード、親指シフト、AR/VRグラス 7種類、、etc. 色々を経て、まだまだ最適解は見つからないのですが、現在の作業環境がこちらです。



ディスプレイは本体+外付けで6面あります。入力はピンマイク+キーボード+フットペダル+リングで、手をキーから離さず操作を足せるようにしています。移動中は Even Realities G2+R1 や、Pixel Fold Pro 10 の pic-in-pic(3画面同時)で、外でも複数セッションを見ることができます。
また、私は Google Pixel Buds Pro 2 を5セット保有している(自宅用2つ + オフィス用2つ + 持ち運び1つ)のですが、右耳はMacBook Pro、左耳は携帯に自動ペアリングするようになっています。バックグラウンドでポッドキャストを聞くときには、タブレットとペアリングした骨伝導イヤホンを併用することで、聴覚の同時インプットを3つまで増やすことができます。
ループエンジニアリングはお手玉
ここまでの対処があっても、5分毎にエージェントに話しかけられていては回りません。エージェント「できるだけ長い時間、自律的に作業する」ことが前提です。いわゆるループエンジニアリングもその工夫の一つですが、フリークアウト本田さんの この解説記事 が分かりやすいです。
私は社内の slack, Notion, Salesforce などの中身を BigQuery に集約し、 CI 修復・テスト補完・ログ巡回・GA4/DataDogダッシュボード経由での改善提案などを定期起動し、エージェントに検証させ、結果を markdown 形式で出力して他のセッション・エージェントと共有する、という形でループ化しています。今回はそのループの自走可能時間が Fable 5 で伸びた結果、同時並列で自分がさばけるセッション数が増えたことで、ピークの1日120万円ペースにつながりました。1回あたりの滞空時間が長くなればより多くのお手玉をハンドリングできるの同じ理屈だなと思いました。
余談:tokenmaxxingと、tokenminimaxing
NVIDIA のジェンスン・フアンは、こう言いました。
年収50万ドルのエンジニアが、年間で最低でも25万ドル(=年収の半分)ぶんのトークンを使っていなかったら、私は心底ぞっとする。
― ジェンスン・フアン(NVIDIA CEO)
これを受けてMeta の社内では消費量ランキング「Claudeonomics」が回り、トークン消費量が多いエンジニアは Token Legend の称号を得て人事考課で評価が高まりました。その結果、無意味なループで延々と円周率を計算させるなどのハックが横行し、最近では反動で、ただ燃やす“マキシング”から、成果に効かせる“ミニマキシング”への揺り戻しが来つつあります。消費量はあくまで消費量に過ぎず、成果の代理指標ではないという当たり前の話です。
このトークン燃焼文脈で最近話題になったのが、OpenClaw の開発者 Peter Steinberger です。彼の X への投稿を起点に、日本語でも 「どうすれば月2億円分のトークンを燃やせるのか」(r.kagaya 氏)という記事が書かれています。


おわりに
Fable 5 はあの3日間以来まだ使えないままですが、世間では「ツチノコだった説」など話題が尽きません。300万円は大きな支出でしたが、事業にも大きな進捗があり、ROI としては十二分に見合ったものだと感じています。
社外秘の話以外では、初参戦した Kaggle(AIコンペ)で、上位入賞のシルバーメダルを獲得することができました。思いついた仮説を Claude Code に片端から実験させて、「試行回数で殴る」かのような時期でした。リーダーボード(順位表・得点表)上位全員の得点が、急に上方へスライドした3日間だったように思います。人間が1本ずつ手で試すのとは、検証できる数が変わりますし、これは、AIコンペも事業も同じです。
仲間を募集しています
私たちアイリス(Aillis)では、こうしたエージェンティックAI技術を日常的に使い倒しながら働く仲間を募集しています。AIに任せる前提で、自分の働き方そのものを設計し直す。サイバーパンクな作業環境構築を面白がれる方と、ぜひお話させて頂きたいです!お声がけいただけたら幸いです!
