老舗企業のアトツギがMVV策定に本気で向き合った話
「社是・社訓ってなんか古臭くね?」
「うちの社是・社訓って時代に即していないし、スタートアップ企業が掲げているキラキラしたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を作りたいなぁ」
家業に戻ってきて4年経った頃、まだMVVの何たるかを全然わかっていない僕はこんなことを思っていました。
その思いは浅はかだったと今では反省しています。でも、これがきっかけでMVVをつくろうと決めたのです。
このnoteでは、京都で132年続く環境計測機器メーカー「アナテック・ヤナコ」のアトツギの僕がMVV策定に本気で向き合った軌跡を記していきます。
同じような境遇のアトツギ(事業承継者)やMVV策定をやっていきたい方にとって少しでも役に立ってくれれば嬉しいです!!
社員と会社に還元する新しい社是・社訓を考えることに
当社は歴史のある会社なんですが、「創業から100年以上の歴史がある分、創業時の思いは希薄化しているのでは?」と感じていました。
社是・社訓は1960年代、まだ「柳本製作所(現:アナテック・ヤナコ)」だった頃につくられたもので、当時を知る社員はもういません。

60年以上引き継がれてきた社是・社訓はとても素晴らしいものだとは思っていましたが、
「古くなって、あんまり時代に即していないなぁ」
「躍進と言われても、パッと頭に入ってこないかも?」
と感じ、変えたいなとぼんやりと感じるようになって、もっとみんなに伝わるような、わかりやすい言葉や文章で表現したい!と思っていました。
そこで、この状況を改善し、全社員が同じ方向を向いて業務に取り組めるよう新たなミッションとバリューを策定することにしました。
それぞれの想いを取り入れたミッション・バリューを策定

つくりだして最初に思っていたのは、僕1人で考えても仕方がないということ。経営陣だけではなく、いろんな方面の思いを反映させるのが重要だと思ったので、社是・社訓や社員の想いを取り入れようと考えました。
そこで、以下の流れでミッションとバリューを策定していきました。
▼ ミッション・バリュー策定の流れ
1. 経営陣でミッション・バリューを仮決定
2. 社員(管理職)を集めてバリュー策定ワークショップを開催し、アナテック・ヤナコらしさを言語化
3. 再度経営陣で話し合い、ミッション・バリューを決定
4. 年度初めに行われる戦略会議にて発表
実際にワークショップを開催して、改めて気づくことがありました。
それは「僕が思った以上に、社是・社訓が浸透していた」ということです。実は、もともと今回のワークショップで社是・社訓を一新しようと思っていたんです。
でも、さすがに60年以上使われてきただけあって、しっかりと社内のカルチャーに浸透していることを再確認できました。
そこで、まったく新しいものにするのではなく、大切にしてきた部分を取り入れつつ、みんなが理解しやすいような言葉に落とし込むことを決意しました。
例えば社是・社訓の「至誠(誠実なこと)」はしっかりと浸透していたので「至誠を貫く」というバリューに。
また「躍進(飛躍的な進歩)」に関しても「常に最高を目指す」といった形でバリューに取り入れています。
特にバリュー策定ワークショップでは、4つのグループに分けてアナテック・ヤナコらしい行動や価値観についてじっくり話し合いました。
東京から外部講師の方に来てもらって、模造紙や付箋などを使いながら言語化をしました。これで、みんながバリューを自分ごと化して考えられたと思います。

▼ワークショップ内で議論した質問項目の例
・あなたがイメージする「アナテック・ヤナコ」はどんな会社ですか?
・「アナテック・ヤナコ」はどんな価値を提供していますか?
・「アナテック・ヤナコ」の社員に共通していることはなんですか?
・あなたは「アナテック・ヤナコ」でどんなこだわりを持って仕事をしていますか?
・部下・周囲に対して日々伝えているメッセージは何ですか?(実はよく言っている口癖とは?)
・「アナテック・ヤナコ」の社員としての理想の行動(バリュー)は?
新しいミッションと5つのバリュー
何度も何度も経営陣で議論し、最終的に以下のミッションとバリューに決めました。

ミッション(企業理念)
ミッションは「計測の力で未来に誇れるものづくりを」です。


ミッションは存在意義で、社会に対して果たすべき使命といえます。なぜアナテック・ヤナコが存在するのか、どのような価値を提供していくのかをミッションに込めました。
ミッションは3つの要素から成り立っています。
計測の力
未来に誇れる
ものづくりを
「計測」を100年以上行っている会社なので、「計測の力」というキーワードは事業の根幹にあり、絶対に入れたかった。
さらに、環境に関する計測機器を取り扱っていて「環境改善=次世代にいい環境を残していくぞ」という気持ちが強く、「未来に誇れる」というワードを入れました。
また、メーカーとして、ものづくりをずっとやってきた会社なので「ものづくり」を入れました。
最終的に「計測の力で未来に誇れるものづくりを」というミッションを設定しました。みんなの思いをしっかりと形にできて、しっくりくるミッションを作成できたと思っています。
ちなみに、アナテック・ヤナコは創業132年ですが、創業80年のときに当時の社長が「80年誌」という本を作っていて、そのなかの記事に「計測ひとすじに」というタイトルの記事があります。
計測をずっとやってきたということが、その記事でも語られているのでやっぱり継続していくことはすごく重要ですね。

このように、計測にかける思いは会社の不変的な価値観であり、過去・現在・未来を通してブレずに貫きたい僕たちの思いなんです。
バリュー(行動指針・価値観)
バリューは、ミッションを実現するために僕たち一人ひとりが大切にすべき価値観や行動指針のことです。バリューに基づいて考えたり行動したりすることで、全社一丸となってミッションの実現に取り組めます。
策定したバリューは以下の5つ。
全体最適をあきらめない
常に最高を目指す
至誠を貫く
みんなで会社をつくる
自分を磨き続ける
最初は、それぞれのバリューに一文だけ説明を入れていたのですが「これだけでは体現できないのではないか?」と感じたので、「Goodなバリュー体現」と「NGなバリュー体現」を具体化しました。
具体的には、まず会社の問題点を挙げていきます。例えば、うちは歴史のある会社なので、何となく行っているやり方がそのままになっているケースがありました。そういった問題点を「NGなバリュー体現」とし、そうならないための行動を「Goodなバリュー体現」としたんです。
それに加えて、今回はChatGPTも活用しながら言語化の精度を高めていきました。

自分たちの想いとChatGPTの言語化を照らし合わせながら、以下のように具体的なバリューごとの「Goodなバリュー体現」と「NGなバリュー体現」を決めました。
1. 全体最適をあきらめない

例えば、多くの人は自分の業務にばかり目がいって、次工程のことを考えなれなくなり、業務の接続がうまくいかないことがあります。こういったNG行動を防ぐため、Goodなバリュー体現に「個人や自部門の利益だけではなく、全体の利益を重視する」や「前後の業務のことも考える」などを入れました。
2. 常に最高を目指す

仕事をするうえで目的思考や向上心を持つことはとても重要です。
目的を持たずに仕事をしていると、どうしても与えられた仕事ばかりをこなす指示待ち人間になってしまったり、自分のコンフォートゾーンから出ない範囲で満足してしまったりします。そこで、「目的思考を持つ」「難しい目標に挑戦する」などのバリュー体現を入れました。
3. 至誠を貫く

誠実であることは仕事に限らず、人間関係において欠かせないもの。仕事でももちろん重要で、自らが指揮をとるプロジェクトや打ち合わせなどで、他人の意見を尊重しないケースがたまにあるんです。
これではチームメンバーの信頼なんてとても得られません。そこで、「他人の意見を尊重し、耳を傾ける」ことが重要なんです。
4. みんなで会社をつくる

会社の業績を上げるためには、社員一人ひとりのパフォーマンスにかかっています。でも、従業員1人がどれだけがんばっても、残念ながら大きな成果につながらないことが多いんです……。
重要なのは、仲間を巻き込んで成果を出すこと。そのためには独りよがりな行動を避け、「仲間の強みを活かす」ことが大切です。
5. 自分を磨き続ける

仲間と成果を出すことが大切と言ったけど、前提として必要なのが個人のスキルアップ。成長の機会があれば積極的にチャレンジし、前向きな姿勢で取り組んでほしい。その思いからバリューとして取り入れました。
ミッション・バリューを社内で浸透させるためのワークショップを実施
ミッション・バリューを掲げるだけでは意味がなくて、みんなが日常使いできるものでなければいけません。
だからこそ、社内でミッション・バリューを浸透させるために、外部の講師をお招きしてワークショップを実施しました。講師の進め方は「さすが」の一言。僕にとってもすごく有意義な時間でした。
ワークショップの中では、以下のようなことを実施しています。
▼ バリュー浸透ワークショップの流れ
・個人ワーク①:バリューを発揮した出来事を書き出す
・グループワーク②:書き出した出来事をグループで具体化する
・個人ワーク③:プレゼンに向けて原稿をブラッシュアップする
・グループワーク④:グループ内で発表し、全体発表者を選出する
・全体ワーク⑤:全体に向けて発表する
グループワーク②では、個人の出来事に対して「良かったポイント」と「もっと良くなるポイント」を簡潔かつ具体的にディスカッションしました。こうすることで、本人が気付いていないポイントに気付き、しっかりと出来事を整理できました。

最初はとても不安でしたが、参加者にとっても有意義だったらしく、実施後にミッション・バリューの理解度に関して社員全員に対してアンケートをとりましたが、5段階評価でほとんどの方が3以上でした!
当日発表したミッション・バリューをみんなに理解してもらえると思っていなかったので嬉しい驚きでした。

バリューの達成度を人事評価に組み込む人事制度を用意
納得できるミッション・バリューを作れたと思うのですが、結局のところ業務に関わりがなければ浸透には至らないんですよね。そこで、給与に反映する仕組みとして、バリュー体現レポートというシステムも作りました。

バリュー体現レポートは、2週間に1回、提出してもらっています。提出したレポートは全社員が閲覧できるように共有しているので、誰がどんなことをしているのか簡単にわかります。具体例として、バリュー体現レポートの一部を紹介します。


また、レポートが全員が参加しているチャットグループにも共有されるので、無意識にバリューを意識することも狙っています。
ちなみに、バリュー体現レポートは、評価制度の中にも取り入れています。


バリューを体現すれば評価が上がり、社員のモチベーションアップ、ひいては会社の成長に繋げることを目指しています。(現在はトライアル期間のため、給与や評価への反映は来期以降の予定)
アナテック・ヤナコとは
最後になってしまいまいたが、会社の簡単な紹介もしておきます。
アナテック・ヤナコは、創業132年の京都に本社を置く老舗環境計測機器メーカーです。
フラスコやビーカーなどの化学用量器の製造からはじまり、今は水質計測機器(河川・湖沼・工場排水)や大気計測機器(工場排ガス)、大学や研究機関で使われる研究室用計測機器(微量融点・ハロゲン)を主に製造・販売をしています。
従業員数は50名と小規模ながら、大手企業や官公庁、研究機関など幅広い顧客に15,000台以上の納入実績があります。カスタマイズ性の高さや長期使用に耐える耐久性、130年以上で培った技術力とノウハウを強みとし、ニッチな市場で高い競争力を持っています。
アナテック・ヤナコは、環境問題が深刻化する中で、正確な計測を通じて公害や環境破壊を未然に防ぎ、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
ミッション・バリューを体現した社員に還元される会社にしていきたい
つらつらと書いてきましたが新しいミッションとバリューを策定したのは、単に理念をあらためたいだけじゃないんです。
ミッションとバリューを通じて会社と社員の双方が幸せになれる環境を作り上げたい。
そのためには、社員みんなにしっかり浸透している必要があります。
僕たちが目指すのは、個人の成長が会社の収益アップにつながり、それが給与の向上ややりがいの創出という形で社員に還元される、という好循環です。

バリュー体現レポートを人事評価に組み込んだのも、この考えがあったからで、社員がバリューを体現することで評価が上がり、個人の成長と会社の発展の両方に繋がると信じています。
また、全社員がバリュー体現レポートを作ることで、お互いの頑張りや成長を認め合える文化を醸成したいと考えています。これは「みんなで会社をつくる」というバリューの実践でもあります。
アナテック・ヤナコは、環境計測を通じて社会に貢献すると同時に、社員の幸せと成長を大切にする会社でありたい。
新しいミッションとバリューは、そんな僕たちの決意表明でもあるのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
アナテック・ヤナコでは、新卒・中途(キャリア)採用を積極的に募集しています。興味がある方は、以下からお問い合わせください。
