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円安が止まらない日本——「経済強化中」のはずなのに、なぜ円は売られ続けるのか?

@ntv.news

東京外国為替市場で円相場が下落し、30日午前10時前、一時1ドル=162円台をつけました。1986年12月以来、約39年半ぶりの円安水準です。#日テレnews #tiktokでニュース

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2026年7月現在、1ドル=162円台。1986年12月以来、約39年半ぶりの歴史的円安水準とされています。

政府は「責任ある積極財政」を掲げ、AI・半導体・防衛など17の戦略分野への投資を打ち出しています。日経平均は年初来で大幅に上昇し、「日本経済は強化中」という言説があふれています。

それなのに、なぜ円は売られ続けるのでしょうか?

実態を見ると、「数字の強さ」と「通貨の弱さ」が同時進行しているとみられます。

🗞 この記事でわかること

「円安が止まらない理由」を問うと、多くの解説は「日米金利差」で終わります。私も少し前に円キャリートレードについて書かせていただきました。

https://note.com/shoji_orihara/n/n095220daa0fb


しかしそれは症状の一つにすぎない。といえそうです。

この記事では、為替レートの動きを入口に、日本の経常収支構造・財政政策・産業政策・GPIF問題まで掘り下げ、企業と個人が今何をすべきかまで調べてみました。


🔍 日経平均の上昇は「本物の強さ」なのか

2026年の日経平均は年初来で大きく上昇し、6月22日には年初来高値72,831円をつけました。

  • 2025年大納会終値(2025年12月30日):50,339円

  • 2026年6月22日 年初来高値:72,831円

上昇率:(72,831 − 50,339)÷ 50,339 × 100 = 約44.6%

年初来高値ベースで約45%の上昇です。

2025年末の約152円台から2026年7月の162円台へと、この間だけで約6〜7%の円安が進行しています。過去3〜4年の累計では10〜15%以上の円安が進んでいます。

つまり、
円の価値が、約6%ぐらい下がっている。
日経平均が、約45%上昇。

ここで参照しておきたいデータがあります。

日経平均とドル円の相関係数は、過去1年で0.904という極めて強い連動性を示しています。

日経平均上昇の背景にはAI・半導体ブームや企業のガバナンス改革など複数の要因があります。しかしその一因として、円安が株高を後押ししているとみられます。構造はこうです。

  • 円安が進む

  • 輸出企業の円建て利益が膨らむ

  • 株価の押し上げ要因の一つになる

「日本の実力だけが上がった」とは言いきれない側面があります。

「円の価値が下がったことで、円建ての数字が一部水増しされている」可能性も考慮する必要があります。

ドル建てで日本のGDPを見ると、2024年時点でカリフォルニア州の名目州内総生産(4兆1000億ドル)に日本(4兆200億ドル)が抜かれ、「アメリカの一州」に経済規模で下回る状態になっています。

これは円安の影響が大きい一方、構造的な成長力の差も背景にあるとされています。

高市政権は「骨太の方針2026」で2040年度に「名目GDPで1100兆円に迫る経済の実現を目指す」と打ち出しました。

しかし円安・インフレが進めば円建ての名目GDPは膨らみやすくなります。

これは成長だけとは言いきれず、通貨価値の希薄化による「見かけの拡大」という側面も含まれるとみられます。

出典 日経平均 622 年初来高値72,831円(Yahoo!ファイナンス)日経平均とドル円の相関係数(Let's GOLD米州別GDPと各国比較(Business Insider Japan20255月)日本のGDP、カリフォルニア州に抜かれる(ニッセイ基礎研究所・202412月)


🔍 「経常黒字」なのになぜ円が売られるのか

日本の経常収支黒字は2025年度に34兆5218億円と3年連続で過去最大を更新しました。

第一次所得収支(海外子会社からの配当・利子など)も42兆2809億円と5年連続で過去最大となっています。

「日本は稼いでいる」はずなのに、なぜ円高にならないのでしょうか。

一つの重要な鍵は、経常黒字の「中身」にあるとされています。

経常黒字を支えているのは主に第一次所得収支——海外子会社からの配当や利子です。しかしこの収益の多くは海外で再投資されるケースが多く、実際には円に換えられにくい状況にあります。

「日本は稼いでいるが、稼いだ外貨は日本に帰ってこない」

これが構造的円安の核心の一つとされています。

海外子会社にとどまる利益は2023年度に10兆5687億円と10年前の約3倍に達しており、国外に滞留する外貨が中長期で円安圧力になっているとされています。

では、なぜ企業は外貨を日本に持ち帰らないのでしょうか。

国内に投資しても十分なリターンが見込めないという認識が、海外再投資優先の根本的な要因の一つとされています。

2009年に導入された外国子会社配当益金不算入制度により、海外子会社からの配当の95%が非課税となる制度はあるものの、還流した資金が必ずしも国内設備投資に向かうわけではなく、効果は限定的との指摘もあります。

つまり「外貨が戻ってこない」のは企業個別の判断だけでなく、日本国内の投資環境そのものも要因の一つとされています。

加えて、デジタルサービスへの支払い(NetflixやAmazon、Google等のクラウドサービス)は外貨建てで海外に流出し、新NISAで個人が米国株を買う動きも毎月継続的な円売り圧力になっているとみられます。

出典 2025年度経常黒字34兆円 3年連続過去最大(KSB瀬戸内海放送)止まらぬ円安の背景〜経常収支と金融収支で考える(三井住友DSアセットマネジメント)海外に企業利益10兆円、円安圧力に(日本経済新聞・20245月)日本企業の海外利益が国内に戻らない構造的背景


🔍 高市政権が事実上「円安を容認」している理由

ここに、見落とされがちな構造的矛盾があります。

高市政権は「骨太の方針2026」において、四半世紀近く続いた「プライマリーバランスの黒字化」目標を放棄しました。

代わりに中核目標に据えたのが「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」という指標です。

この目標の特徴は、**「分子の借金を減らす」のではなく「分母の名目GDPを増やす」**ことでも達成できる点にあります。

円安とインフレが進めば、円建ての名目GDPは膨らみやすくなります。

財政規律の「見た目上の改善」が、円安を放置することで達成できてしまう構造になっているという指摘があります。

さらに政府は、日銀の追加利上げをけん制する姿勢を骨太の方針に示しました。

本来なら日銀が利上げすることで日米金利差が縮小し、円高方向に修正されるとみられます。しかし政府がそれを抑えているとされています。

米金利市場ではFRBが10月までに少なくとも1回の利上げを行うシナリオが100%近く織り込まれており、日米金利差の拡大観測がドル買い・円売りを加速させているとみられます。

海外の機関投資家がこの構図を見て「また同じだ」と評価するのは、ある意味で合理的な判断かもしれません。

出典 骨太方針2026のポイント〜財政目標の転換(第一ライフ資産運用経済研究所)骨太の方針2026原案解説(AIガバメントポータル)ドル/円の7月見通し(外為どっとコム・20267月)


🔍 「経済強化」がなぜ円の実力向上につながらないのか

政府が力を入れている半導体・AI・防衛への投資は、なぜ「円の実力」向上に直結しないのでしょうか。

TSMCの熊本工場誘致は象徴的な事例です。国内に最先端工場ができることは産業政策上意味があります。しかしそこで生産されたチップがドル建てで売られ、TSMCの利益が台湾に還流するなら、円の実需はほとんど増えないとみられます。

より根本的な問題は、日本経済の大部分を占める非製造業(サービス・建設・金融・不動産等)に、改革の手がほとんど入っていないとされていることです。

製造業の生産性は全産業平均の約1.2倍とされる一方、非製造業——特に飲食・小売・介護・教育といった労働集約型サービス業——の生産性は米国に比べて大幅に低い水準にとどまっているとされています。

日本の労働生産性はOECD38カ国中30位(時間当たり52.3ドル)で、米国の6割弱の水準にすぎないとされています。

医療・介護・教育・農業・建設・小売——こうした産業に、政府は踏み込んだ改革をほとんど打ち出していないとみられます。

なぜ動けないのでしょうか。

日本では長年にわたって、法規制とそれが生み出した既得権益が結びつき、変化を拒んできたとされています。

改革のコストを払う層は組織票を持ち、政治家は選挙を前に動きにくい構造があります。長期的な視点に立った抜本的な改革を難しくしている理由の一つは選挙制度にもあり、選挙の頻度が高く、政治家は近視眼的な票集めに奔走しがちになり、全国規模のネットワークを有した既得権者が有利になるとの指摘があります。

政府が実行している「半導体・AI・防衛」への投資は、こうした既存の票田への直接的な打撃を避けやすい側面があるとみられます。

本質的な改革は「誰かが損をする改革」であり、そのコストを払える政権がまだ現れていないというのが現状とみられます。

出典 2024年版ものづくり白書(経済産業省)日本の労働生産性の動向2024(日本生産性本部)日本だけがなぜ成長できないのか?(NIRA総合研究開発機構)


🌍 「人」の問題が全ての根幹にある

円安を止め、日本経済を本当に強くするための循環を考えたとき、最終的に行き着くのは「人」の問題です。

理想の循環は概ねこういう感じです。

給与上昇 → 生活の豊かさ・楽しみ → 家庭・子供・文化の創出 → 文化が外国人を引きつける → インバウンド消費・円需要増 → 国内産業がさらに強くなる → また給与が上がる

デンマークは人口580万人の小国ながら高賃金・高福祉・高生産性を達成しており、内需主導の好循環が機能している事例の一つとされています。韓国はK-POPや映画(パラサイト、イカゲームなど)を国策として育て、文化が観光・消費・言語学習まで波及する循環を作りました。

日本にはそのポテンシャルが高いはずです。アニメ・ゲーム・食・精密製造・デザイン——すでに世界中の人々が日本に引き寄せられる磁力は存在しています。

しかしこの循環が十分に機能しているとは言えない状況です。

表面上の問題を突き詰めると、「人」の問題に行き着くとみられます。

  • 生産性が低い → 人の配置が硬直しているとみられます

  • 少子化が止まらない → 人が将来に希望を持てない環境があります

  • 文化が海外に売れない → 人への投資(教育・報酬)が足りない可能性があります

  • 円安が止まらない → 人が生み出す付加価値が低い状態が続いています

  • 内需が弱い → 人の可処分所得が増えていない状況が続いています

AIとロボットは生産性を上げるツールですが、それ自体が文化を直接生み出すわけではありません。

消費するのも、楽しむのも、子供を産むのも、文化を創るのも、外国人が「行きたい」と思う磁力を生み出すのも、全部「人」です。

AIを過度に強調することで「人への投資を後回しにする言い訳」になっているという側面すら指摘されています。

少子化による人口減少と高齢化が進行し、労働供給が制約される日本経済では、需要を拡大しても物価が上昇するだけで、実質的な生産拡大にはつながらないという根本問題があるとされています。

出典 2026年の日本経済展望〜賃金編(第一ライフ資産運用経済研究所)2026年は日本経済「没落か再生か」運命の分岐点(東洋経済)


⚠️ GPIF問題:「対症療法」の危険性

2026年7月10日、片山さつき財務相はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針について「家計やGPIFをはじめとする年金基金が日本の金融資産にさらなる投資をする方向で後押しする方策を追求したい」と発言しました。

また14日の会見でも「(GPIFのルールは)不磨の大典ではない。我々が成長戦略を強力に推し進めれば、円資産は有利になっていく」と改めて意欲を示しました。

市場は瞬時に「トリプル高」(円高・株高・金利低下)で反応しました。

しかしこの発言には、制度上の重要な問題が指摘されています。

GPIFには法令で定められた「他事考慮の禁止」原則があります。年金積立金の運用は、年金加入者の利益以外の目的のために行ってはならない、という制約です。

為替の安定や円安対策という政策目的のために運用方針を変更することは、制度の趣旨に反するとされています。

専門家からはこのような懸念も示されています。

仮に年金資産が国内債券の買い支えに使われるようなことになれば、財政拡張によって国債市場の不安を招いた政府が、今度は国民の年金積立金でその穴を埋めようとするという構図になりかねない——これは、政府が日銀の金融政策を政権の都合で動かそうとするのと「専門的判断を政治目的に従属させる」という点で同じ構図だという見方があります。

GPIFの運用で最優先されるべきは被保険者の利益のための収益確保であり、政策目的での運用変更は受託者責任を果たせないとの指摘があります。

なお、GPIFが2026年7月3日に公表した2025年度の業務概況書においても、現在の運用環境は基本ポートフォリオ策定時の想定から大きく変化しているわけではないとして、見直しの必要性は示されていません。GPIF自身は現時点で動く姿勢を見せていない点も、あわせて確認しておきます。

原因はそのままに、症状だけを年金資産で抑えようとする可能性——この構図は将来世代へのツケの先送りになりかねません。

出典 片山財務相「家計やGPIFの国内投資後押し」(日本経済新聞・2026710日)GPIF運用資産、厚労相「必要あれば見直し」(日本経済新聞・2026714日)GPIFとは何か?片山大臣の発言の背景(SOC報告書ラボ・20267月)GPIFの国内投資強化策、政府は資産構成割合の変更想定せず(NewsPicks20267月)


💼 企業と個人が今すぐできること

※ 投資・資産運用については専門家にご相談の上、ご自身の判断で行ってください。

政府を待っていても、構造的な問題が解決される見通しは薄いと思われますので、そこは当てにしても仕方がないと思います。

そうすると、企業単位、個人単位でどんな対処ができるのかも調べてみました。

企業:「外貨を稼いで日本に還流させる」設計が重要

文化の循環は長期の視点での話です。その一方で、個別企業が今すぐ取れる対応として、外貨獲得と還流の設計があります。

円安環境では、円建てで稼ぐだけでは世界標準から相対的に下がり続けるリスクがあります。外貨獲得は必須ですが、重要なのはその後の設計です。

稼いだ外貨を海外で再投資するのではなく、日本に持ち帰って円に換える——これが企業として自社の競争力を高めながら、円の実需にも貢献できる方向性とみられます。

こうした行動が業界全体で積み重なることで、マクロの円需要にも影響が出てくる可能性があります。

さらに言えば「円でしか買えないもの」に付加価値を乗せることが、より根本的な戦略になりえます。日本の技術・コンテンツ・ブランドに固有の価値をつけることができれば、その製品・サービスへの需要そのものが円の実需になります。

B2Bアウトバウンドで外貨を獲得することは正しい方向ですが、「稼いで帰ってくる」がセットで設計されているかどうかが、重要な分岐点になりそうです。

個人:資産・人的資本・情報発信の三つの軸

円の価値が構造的に下がる環境では、「円だけに依存しない」ことが資産防衛の一つの考え方です。

資産面では、ドルコスト平均法で外貨建て資産を継続的に積み上げることが一つの選択肢とされています。毎月一定額を外貨建て資産に振り向けることで、為替リスクを時間分散しながら資産形成できる可能性があります。

ただし、現在の市場予測では円安基調が続くとの見方が有力ですが(三井住友DSアセットマネジメントは2026年7月2日時点で年末165円を予想)、日銀の利上げ加速やFRB利下げ再開という条件が揃えば修正が入る可能性もあります。一気に全額転換するのではなく、継続的に積み上げるアプローチが考えられます。

人的資本面では、「自分の市場価値を外貨建てで評価できる状態にすること」が、より強い対応になりえます。

専門性を国際市場で通用するコンテンツとして発信できる状態、外国企業や外国人顧客からも報酬を得られる状態——これらは円安が進んでも価値が下がりにくい「人的資本」といえるかもしれません。

そして「文化の循環」に照らせば、情報発信・文化発信そのものが、円の実需を作る行動の一つでもあります。日本の価値を世界に正確に伝え、「行きたい」「買いたい」という需要を生み出す活動は、政府が動かない部分を民間が補完することになります。

資産運用と人的資本の形成、そして情報発信——この三つは、個人レベルで今すぐ始められる円安時代の対応策といえそうです。

出典 ドル円は162円台に〜年末165円を予想(三井住友DSアセットマネジメント・202672日)


📚️ 参考資料

日経平均 622 年初来高値72,831円(Yahoo!ファイナンス)日経平均とドル円の相関係数(Let's GOLD米州別GDPと各国比較(Business Insider Japan20255月)日本のGDP、カリフォルニア州に抜かれる(ニッセイ基礎研究所・202412月)2025年度経常黒字34兆円 3年連続過去最大(KSB瀬戸内海放送)財務省 国際収支状況(2025年度)止まらぬ円安の背景〜経常収支と金融収支で考える(三井住友DSアセットマネジメント)海外に企業利益10兆円、円安圧力に(日本経済新聞・20245月)日本企業の海外利益が国内に戻らない構造的背景骨太方針2026のポイント〜財政目標の転換(第一ライフ資産運用経済研究所)骨太の方針2026原案解説(AIガバメントポータル)ドル/円の7月見通し(外為どっとコム・20267月)2024年版ものづくり白書(経済産業省)日本の労働生産性の動向2024(日本生産性本部)日本だけがなぜ成長できないのか?(NIRA総合研究開発機構)2026年の日本経済展望〜賃金編(第一ライフ資産運用経済研究所)2026年は日本経済「没落か再生か」運命の分岐点(東洋経済)片山財務相「家計やGPIFの国内投資後押し」(日本経済新聞・2026710日)GPIF運用資産、厚労相「必要あれば見直し」(日本経済新聞・2026714日)GPIFとは何か?片山大臣の発言の背景(SOC報告書ラボ・20267月)GPIFの国内投資強化策、政府は資産構成割合の変更想定せず(NewsPicks20267月)ドル円は162円台に〜年末165円を予想(三井住友DSアセットマネジメント・202672日)

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