外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【3】
外国人技能実習制度が大きく変わろうとしている。度々深刻な問題を起こし、国内外から人権侵害が指摘されていた外国人技能実習制度が、漸く是正される方向で動いている。本noteでは、そうした動きを受け、制度改正に向けて提言された最終報告書について読む連載企画を始め、今回で3回目となる。
前回は、「第3章 提言」の「提言のポイント」を読んだ。今回は、「1 新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等【総論】」について読んでいこうと思う。尚、最終報告書は以下となっている。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407013.pdf
3章 提言「1 新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等【総論】」
本パートでは、5つの提言がなされ、そのそれぞれについて提言に至るまでの検討状況を書き連ねている。5つの提言は、以下である。
① 現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、我が国社会の人 手不足分野(注)における人材確保と人材育成を目的とする新たな制度 (以下「新たな制度」という。)を創設する。人材確保に関しては、人権の保護を前提とした上で、地方における人材確保も図られるようにする。
② 新たな制度は、未熟練労働者として受け入れた外国人を、基本的に3年 間の就労を通じた育成期間において計画的に特定技能1号の技能水準の 人材に育成することを目指すものとする。
③ 特定技能制度は、人手不足分野において即戦力となる外国人を受け入 れるという現行制度の目的を維持しつつ、制度の適正化を図った上で引 き続き存続させる。
④ 家族帯同については、現行制度と同様、新たな制度及び特定技能制度 (特定技能1号に限る。)においては認めないものとする。
⑤ 現行の技能実習制度で行われている企業単独型の技能実習のうち、新たな制度の趣旨・目的に沿うものについては、監理・支援手段等の適正化 を図った上で新たな制度で引き続き実施することを可能とする。また、国際的に活動している企業における1年以内の育成のような、新たな制度とは趣旨・目的を異にするものであっても、引き続き実施する意義があるものについては、適正性を確保するための手段を講じつつ、既存の在留資格の対象拡大等により、新たな制度とは別の枠組みで受け入れることを 検討する。
(注)生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野をいう。
総論とされているだけあって、一部前回・前々回で伝えた内容も含まれている。それらも含めて、それぞれについて書いていく。
提言①について
① 現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、我が国社会の人手不足分野(注)における人材確保と人材育成を目的とする新たな制度 (以下「新たな制度」という。)を創設する。人材確保に関しては、人権の保護を前提とした上で、地方における人材確保も図られるようにする。
新制度創設に関する提言である。新制度の目的が何であるかが提言されている。検討状況では、現行制度への苦言が書かれている。とりわけ現行制度について『人材育成を通じた国際貢献を制度目的とし、労働力の需給調整の手段として行われてはならないという基本理念を掲げている』と定義されているとした上で、現実には企業における貴重な労働力として扱われている理念との乖離が指摘されている。
このような惨憺たる状況については、恐らく多くの人々が認識していると想われる。外国人技能実習生としながらも、その実態は単なる労働者と扱われており、労働者であるにもかかわらず都合良く労働関連法に反した扱われ方をする。そんなあってはならない現実が罷り通っており、だからこそ人権侵害だと指摘を受けている。
本提言は、そうした本来在るべき形と乖離した現実を踏まえて、在るべき形とするよう検討が行われた様子を推察させる。外国人技能実習制度の改正に対しては、何故か企業や地方自治体(地方議会)の中で反対する声が上がっているが、従前の惨憺たる有り様、在るべき形からかけ離れた現状を踏まえて、何故反対できるのか理解に苦しむと言わざるを得ない。
なお、本提言について、注釈がついている。その内容は、人手不足分野の定義に関するものだ。内容的には、どこか詭弁や配慮すべきでない点への配慮のようなものを窺わせるが、それでも盛り込まなければならない理由があったのだろう。
提言②について
新たな制度は、未熟練労働者として受け入れた外国人を、基本的に3年
間の就労を通じた育成期間において計画的に特定技能1号の技能水準の
人材に育成することを目指すものとする。
新制度で何を目指すかが提言されている。検討する過程で、期間に関して様々な意見が飛び交った旨が書かれている。中でも業種によって技能習得にかかる期間に隔たりがあるといった指摘は、妥当性が高いと思われる。
一方で、対象分野の内訳を見れば、どうしたところで単純労働や単純に人手不足になっているだけの分野もあり、3年と区切ってしまう点にも賛同できる。
付言として、育成後の国内での活躍や母国帰還後の活躍に資するようにする旨が書かれており、技能実習の在るべき形を意識されている点が窺える。実際に新制度がどうなるかは定かでないが、技能実習が技能実習として再構築されることを願ってやまない。
提言③について
③ 特定技能制度は、人手不足分野において即戦力となる外国人を受け入 れるという現行制度の目的を維持しつつ、制度の適正化を図った上で引き続き存続させる。
特定技能制度への提言である。特定技能制度に関しては、現行制度の目的維持と適正化が掲げられている。本提言の検討においては、現行制度を継続する方向性で無難に議論が進んだ旨が書かれている。技能実習制度に比して、大きな問題がない認識を持たれていた点が窺える。
提言④について
④ 家族帯同については、現行制度と同様、新たな制度及び特定技能制度 (特定技能1号に限る。)においては認めないものとする。
家族帯同に関する提言である。本提言の検討過程においては、様々な意見が飛び交った様子が窺える。技能実習制度にしても特定技能制度にしても、移民政策ではない。確かに家族帯同が許可されないために日本で働く魅力に欠けるのは事実かもしれないが、受け入れ環境等を多角的に踏まえたとき、少なくとも現時点で可能とするのは拙速である。
付言として、家族が新たに作られた場合に対する配慮が記されている。帯同とは明確に異なる内容であり、また最終報告書に記載の通り、家族ができることに何らかの手を入れるのは、人権に大きく関わってくる。柔軟な対応が必要とされるといった指摘は、妥当性が高い。最終的にどのように制度に落とし込まれるのか気になる点である。
提言⑤について
⑤ 現行の技能実習制度で行われている企業単独型の技能実習のうち、新たな制度の趣旨・目的に沿うものについては、監理・支援手段等の適正化を図った上で新たな制度で引き続き実施することを可能とする。また、国際的に活動している企業における1年以内の育成のような、新たな制度とは趣旨・目的を異にするものであっても、引き続き実施する意義があるものについては、適正性を確保するための手段を講じつつ、既存の在留資格の対象拡大等により、新たな制度とは別の枠組みで受け入れることを 検討する。
現在行われている技能実習の中で、新制度の趣旨・目的に沿うものは残して良いといった提言である。端的に言えば、良いものは継続しても良いと指摘している。検討過程において、企業単独型の技能実習については不正が少ない点が話されている。技能実習=不正の温床といったイメージがついて回っているが、何もすべてがそうではない。
本提言の検討においては、良いものも存在し、それは継続した方が良いと言った議論も適切に行われていた様子が垣間見える。また、新制度やそもそも技能実習制度に馴染まない運用の中にも意義のあるものや必要なものもあり、そういったものに対して受け皿を用意する必要性も語られている。
法制度に関する提言のようなものに対して、お上が一方的な議論を行った上で、トップダウンで意向を押し付けられるといった印象を持つ者も見られるが、少なくとも本件においては、多角的な視点で、多種多様なステークホルダーの意見や運用状況を踏まえた上で議論されたのではなかろうか。
今回、提言①から提言⑤に関する検討状況を読んだ限りにおいては、一方的な印象は受けず、思った以上に客観的な議論が実施された印象を受ける。最終的にどのような制度が出来上がるのか、若干ながら期待感を覚えた。
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