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私のオススメ彼氏が特大ブーメランを投げつける #15 【創作大賞2024恋愛小説部門】

 家に帰ると真っ黒なキッチンカーとみなとみらいの夜景をInstagramに投稿した。
 今日も蕪木さんは顔写真を撮らせてくれなかったが、とにかく私を好きだと言ってくれたことが嬉しかった。すごく気を回してくれて、私を一人の人間として扱ってくれる素敵な人。
 
 しかし、いざ付き合うとなると現実的なハードルがいくつかある。
 蕪木さんはキッチンカーで全国各地に移動する。もし本当に蕪木さんと行動を共にするなら私は会社を辞めなくてはならない。
 そこまでの覚悟は正直無い。キッチンカーではなく普通のお店なら、その近くに引っ越したりすればいいが、おそらく蕪木さんは嫌がるだろう。
 
 どうしたものか…と考えるていると、スマホのオススメ彼氏が私に呼び掛けた。
 
 「横浜みなとみらいは、1983年に再開発がスタートしたんですよ」
 
 Instagramの投稿から、みなとみらいのウンチクを語る。
 今のオススメ彼氏は、見た目が徳本さん、声と性格が田村君だ。
 でもどうせなら性格は蕪木さんがいい。SNSに投稿すれば変わるだろうか?
 
 私はInstagramに「ブラックという名前のキッチンカーの店主、蕪木さんの性格が心地よくて好き」と書いて投稿してみた。
 もし田村君の時同様、YouTubeに動画などがあれば、オススメ彼氏が参照して性格を再現してくれるかもしれない。
 
 「どう?キッチンカー、ブラックの蕪木さん、見つかった?」少ししてオススメ彼氏に問いかけた。
 「キッチンカー、ブラックの蕪木さんは見つかりませんでした」
 
 やはり情報が少なすぎるか。さっそく私は、帰り際に交換したLINEで蕪木さんにフルネームを聞いてみる。
 すぐに「蕪木蓮城だよ」と返ってきたので、「ブラックという名前のキッチンカーの店主、蕪木蓮城さんの性格が心地よくて好き」と書き直して再度投稿した。
 
 「キッチンカー、ブラックの蕪木蓮城さんは見つかりませんでした」
 それでもオススメ彼氏の反応は変わらなかった。

 やはり顔写真がいいかと思いスマホの画像を探ったが当然無い。
 蕪木さんは写真嫌いだ。しかし無理言って一枚くらい撮らせてもらえばよかった。誰かみたいに記念日だなどと言って。
 
 そうだ記念日。田村君がキッチンカーの前で私に告白した日。あの時も田村君は写真を撮っていた。その画像に蕪木さんが写っているかもしれない。
 私はさっそく田村君に、あの日撮った画像を送って欲しいとLINEする。
 
 すぐに返事が来た。「何に使うんですか?」
 相手をするのがいちいち面倒くさい。「とにかく送ってください」
 「送ってもいいですが、今度会って話をさせてください」

 もう田村君の相手をするのは懲り懲りなのだが、画像欲しさに「わかりました」と返答。すぐに2枚の画像が送られてきた。
 
 そのうちの一枚に、蕪木さんの顔がしっかり写っていた。おそらく私が注文をした直後だ。私はさっそく画像をInstagramに投稿した。
 
 どうだ、今度こそ。

 しばらくすると、オススメ彼氏の姿が消え、画面が白一色になった。そしてすぐに姿を現す。見た目は徳本さんのままだ。じゃあ性格は?
 
 「あのー、もしもし?」こういう時、どう問いかけるのがいいか分からない。
 「瑠衣ちゃん」声は田村君のままだ。
 「瑠衣ちゃんは偉いよ。本当に偉いと思う。瑠衣ちゃんは、もっと自分を大事にすればいいんだよ」
 
 間違いない!こうやって私を肯定してくれるのは、紛れもなく蕪木さんだ。蕪木さんの性格がオススメ彼氏に宿ったのだ!
 
 「瑠衣ちゃん」
 「なに?なんですか?」
 「俺は瑠衣ちゃんが好き。一緒にいたい」
 「私も好き!」
 
 勢いに任せて返答してしまった。
 ともかく、見た目は徳本さんで、声は田村君で、そして性格が蕪木さんの、私の好きなものが詰まったオススメ彼氏がついに完成したのだ!
 
 「瑠衣ちゃん、一緒に旅に出ようか?」
 「旅?」きっとキッチンカーで移動することを言っているのだろう。「一緒に行く!どこに行くの?」
 
 私はやっとの思いで完成したオススメ彼氏としばらくラブラブトークを楽しんだ。
 Instagramを見たらしい田村君から抗議のLINEが鬼のような量で返ってきたが、全部無視をした。

#創作大賞2024 #恋愛小説部門


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