私のオススメ彼氏が特大ブーメランを投げつける #13 【創作大賞2024恋愛小説部門】
徳本金光さんに愛人契約を提案された私は、気持ちを整理できず、呼び出された病院前の花壇に座り込んでいた。
とにかく帰らなければと歩き出すと、オススメ彼氏の開発者、久留米山あすかから電話がかかってきた。
「瑠衣、大丈夫なの?今どこ!?」
私がもしもしと言う前にあすかが話す。相変わらず会話がワンテンポ早い。オススメ彼氏の姿が徳本さんに変わっているのに気づき、何事かと電話してきたそうだ。
私とオススメ彼氏との会話や、SNSへの投稿などは全て、データとして収集され、あすかの元で確認できるようになっている。
徳本さんは以前、週刊誌に不倫をすっぱ抜かれたにも関わらず私を口説こうとし、あすかはそれを撃退した。
オススメ彼氏の姿がそんな人になっていたら当然驚くだろう。
私は今日起きたことを全部話した。
徳本さんと再会したこと。
徳本さんの病院と自分の会社が業務提携したこと。
そして、徳本さんが私に愛人契約を提案してきたこと。
「それで、当然断ったんだよね?」
私が返答に窮しているとあすかが捲し立てる。
「なんで断らないの!?瑠衣の人生は金持ちのペットでいいわけ!?そんなに見た目がいいの!?頭おかしいんじゃない!!」
「ペット」と言われて息をのむ。
確かに徳本さんは、私が「従順」だから「欲しい」と言った。
だが決して「愛してる」とは言わなかった。
もちろん、自分の人生が金持ちのペットでいいはずがない。
ただ、それはあすかのような、自分の能力に自信がある人が言えることで、私のような何も持たない人間に対し、月50万円の価値を見出してくれたことに感謝の気持ちがあるのも事実なのだ。しかもあんなイケメンが。たとえ性格に少し難があったとしても。
「ごめん、あすかの言う通りだよ。心配かけてごめんね」
「分かってくれてよかった。今日は美味しいものでも食べてゆっくり休んで。じゃあ」
電話が切れた。
あすかに、私の本当の気持ちはバレなかっただろうか。
ごめん、あすか、私はいま嘘を吐いた。
だって、あなたに私の気持ちは理解出来ないだろうと思ったから。
あなたは優秀で、好きなことをして生きている。
でも私には何もなくて、誰かの勧めに従うようにして生きてきた。
本当に好きなものを集めようとしているだけなのに、こんなに苦しいとは思ってもみなかった。
