私のオススメ彼氏が特大ブーメランを投げつける #19 【創作大賞2024恋愛小説部門】
自宅に戻ると急いで荷物をまとめる。
とにかく時間が無い。なぜなら、あすかが今、私の家に向かっているからだ。鉢合わせしたら逃避行は失敗だ。
最低限の衣類とスマホの充電器を詰めたあとで、通帳と印鑑を手に取る。
なにか他にお金になるものはないか…と、以前、徳本さんにもらったお車代を思い出す。多少の足しにはなるはずだ。
封筒を鞄に突っ込むと逃げるように自宅を後にした。
まだ目的地も決まっていないので、とりあえず東京駅を目指す。ここなら北にも南にも行けるだろう。
ただ、スマホで検索したらあすかに情報が流れてしまう。なので駅で路線図を確認し、切符を買って電車に乗る。切符を買ったのなんていつぶりだろうか。
検索ができないので乗り換えを間違えたりと効率が悪いが、とにかくネット上に足跡を残さないことの方が大事だった。
移動しながら徳本さんのお車代を確認すると、なんと20万円も入っていた。
文字通り交通費として渡されたのかと思っていたが、お車代という名の口止め料だったのだろうか。ともかく資金に余裕ができた。
東京駅に着き、再度路線図を眺めるが、一向に目的地が思いつかない。
かつて蕪木さんがいた神戸のハーバーランドに行こうかと思ったが、まず間違いなく探される。実家もすぐに調べがつくだろう。
とにかくネットで調べられる私に関する情報全て、あすかが把握していると思った方がいい。
ならばどこがいいだろうか。縁もゆかりもなく、ネットに情報もなく、私が行きたいところ…
徳本さんに渡されたお車代を手に取る。
徳本さんは私を口説くためにたくさんの嘘を用意していたけれど、全てが嘘ではないとも話していた。ならば、あの話は嘘だったのだろうか?
―インドもベトナムも若い人がいっぱいいて活気があり、将来性があります。日本とは大違いです―
行って確かめてみようか。私がこれまでの人生で、行こうとも、考えようともしなかった場所。海外だ。絶対に私と結びつかない。
インドかベトナムか。勝手なイメージだがインドは暑そうだ。なら。
目的地は決まった。ベトナムに行こう。
