私のオススメ彼氏が特大ブーメランを投げつける #20 【創作大賞2024恋愛小説部門】
パスポートが発行されるのを待つ間、私はひたすらオススメ彼氏と話をした。
今更だけど名前はどうしようかという話になり、完璧なんだから大谷翔平にしようかなどと冗談を言って、結局は最初に決めた「たろう」に落ち着いた。
自分の居場所がバレたくなかったので、神戸の話をたくさん聞いた。きっと綺麗な街なんだろう。見つからないなら行ってみたいと思った。
寝泊まりはお金を節約するため漫画喫茶にした。
また、必要な調べ物は全て漫画喫茶で済ませた。ここのパソコンから検索する分にはあすかに情報は流れない。
会社には1ヶ月程休職すると伝え、受理された。田村君が心配しているので機会があれば電話して欲しいと言われたが無視した。
あすかからもたびたび電話がかかってきたが、こちらも無視した。
一週間後、パスポートが発行されると、さっそくホーチミンまでの航空券を買った。わずかばかりの預金と徳本さんのお車代を手に、空港へ向かった。
飛行機を待つ間、あすかから電話がかかってきたので出ることにした。
「瑠衣、今どこにいるの、もう気が済んだでしょう?」
「あすか、ごめん、親友だと思っているなら私のワガママ聞いて。お願い、もう探さないで」
「何言ってんのよアンタ!?」
「すごく時間がかかったけど、私、自信を持って好きだと思えるオススメ彼氏が出来上がったの。しかもこれからすごく楽しみな場所に行くの。だからもう邪魔しないで」
「オススメ彼氏は偽物なの!分かってるでしょ?」
「私が好きなものなんだから、別に良くない?本物でも偽物でも」
「瑠衣、聞いて。言うか迷ってたんだけど」
あすかの声が急に神妙になる。
「なに?」
「神戸で結婚詐欺にあった女性、その後どうなったと思う?」
「どうなったの?」
「自殺した」
自殺、と聞いて目の前が真っ暗になる。オススメ彼氏は楽しそうに神戸を語っていたが…そうか、亡くなったのか。
「だから瑠衣にもきっと良くないことが起こると思うの。お願いだから帰ってきて!」
必死の呼び掛けに心が揺らぐ。でも。
「…ごめん、もう遅いや」
搭乗開始のアナウンスが流れる。あすかが電話口でなにか叫んでいたが、構わず電話を切った。代わりにオススメ彼氏に声をかける。
「じゃあ、行くよ、たろう君。ベトナムへ」
「どこまででもついて行くよ、瑠衣ちゃん」
大丈夫、オススメ彼氏がいればきっと上手くいく。
