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空港を出た瞬間に見えた、ペルーの格差〜1食10万円のディスティネーションレストランと、月収6万円が共存する国

今回、ペルー訪問が初めての南米でした。

最近供用開始となった新しいホルヘ・チャベス国際空港を出た瞬間、目に飛び込んできたのは、トタン屋根が連なる貧困地区の風景でした。空港自体はさすがにまだまだきれいで、トイレなども清掃も国際基準。しかし、空港のすぐ近くは地元の人達も慄くような危険地帯なのです。

空港は簡素だけどクリーンで安全

帰りに市街地からUberで向かう際にも、まちなか走っている時はUberの運転手の人も窓開けて、鍵もかけずに走っていたのですが、空港近くになったら、窓を締めてクーラーつけて、完全ロックをかけました。

そもそも首都リマの空港周辺に、こんなにもあからさまなスラムが広がっているということに、まず驚かされます。正直に言えば、日本の地方で衰退した商店街をいくつも見てきた私でも、さすがにスラムのようなところはありませんから、やはり南米なんだな、と。この光景には言葉を失いました。空港という、いわば国の玄関口のすぐ脇に、ここまで露骨な貧困が広がっている。隠す気も、取り繕う気もない。南米のリアルですね。

今回、私はリマ市内のミラフローレス地区にある、世界的に評価されるレストラン「セントラル」と「クジョ」でディスティネーションレストランのリアルを学ぶために仲間と食事をしました。ここのレストランは世界中から人を集めているだけあって、客単価は一人10万円を超えます。2025年に「世界のベストレストラン50」で1位に輝いた「Maido」をはじめ、この地区には世界中から人が訪れる高級レストランが軒を連ねている。ワインペアリングを含めれば、一晩で15万円、20万円という金額が普通に飛んでいく世界です。

店内は、ヨーロッパや北米からの観光客で埋まっていました。料理は確かに学びある内容で素晴らしい。日本の技術とペルーの食材が融合した、非常に高度な教養理解を求める食事です。今日明日の生活には困らない客層が、正直知っても知らなくてもいいようなウンチクを学ぶのにきているとも言える店です。

しかし、食事をしながら、私はずっと考えていました。このまちに住む、この国に住むどれだけの人が、この店で食事する機会を得られるのだろうか、と。おそらく、ほとんどいないでしょう。月収6万円で、一晩10万円の食事はできません。

空港周辺のスラムと、都市中心部の一人10万円のレストラン。この両極端な光景が、同じ一つの都市の中に存在している。ペルーという国の格差は、隠すことも、言い訳することもできないほど、むき出しになっていました。同時に、ディスティネーションというもの、観光産業というものはこのような格差を生み出すものでもあります。

外貨を獲得するレストランエコノミーは豊かであるが、その裾野は二次産業のように広がりはありません。その中で、地域振興とディスティネーションレストランの関係を今一度考えさせられるところでもありました。

今日はリマの経済構造、歴史などから今の状況を改めて考えます。


ペルーのジニ係数は40.3。世界平均より高い不平等

ペルーの所得格差は、統計でもはっきりと現れています。

世界銀行のデータによれば、ペルーのジニ係数は2022年時点で40.3です。ジニ係数は、0が完全平等、100が完全不平等を示す指標で、世界平均は38.33。ペルーは、その平均を上回る不平等な社会だということになります。

2025年1月時点で、ペルーの法定最低賃金は月額約6万円です(1,130ソル、約567米ドル)。一方、ペルーの平均月収もほぼ同水準の567米ドルで推移しています。つまり、多くの労働者が最低賃金水準かそれに近い収入で暮らしているということです。

しかも、ペルーの労働者のうち71.6%がインフォーマル部門に属しています。正規雇用で最低賃金を受け取っている労働者は、約35万人に限られる。大半の人々は、法的保護もなく、社会保障もなく、日々を食いつなぐような働き方を強いられている。

月収6万円の国で、一食10万円以上のレストランが世界中から客を集めている。この矛盾が、ペルーという国の現実なのです。

これは、日本で言えば、月収30万円の人が一食60万円を払って食事をするのと同じです。あり得ない。日本においても高い店はあるし、とんでもないワインを開ければ青天井ではありますが、高級店とはいっても10万、20万とはいえ、今のところは月収比較でここまではいきません。(今後は分からないですが)

しかし、ペルーでは、それが当たり前のように起きている。世界中から金を持った観光客が来て、現地の人々が手の届かない価格で食事をしていく。そして、その店で働く現地の人々は、自分たちが作った料理を、自分では食べられない。この構図が、何十年も、何百年も、続いてきたのです。

植民地時代から続く、大土地所有の構造

では、なぜペルーはこれほどまでに格差が大きいのか。その理由は、植民地時代にまで遡ることになります。

ラテンアメリカ諸国における格差の根深さは、スペイン植民地時代の大土地所有制に起因しています。スペイン人は、征服した土地を「アシエンダ」や「エスタンシア」と呼ばれる大農場に仕立て、先住民を低賃金で雇い、場合によっては土地を収奪しました。この構造は、後に欧米諸国が持ち込んだプランテーション農業にも引き継がれ、富の寡占が続いた。

19世紀にスペインとポルトガルから政治的に独立した後も、土地や鉱山を集中的に所有する一部の者に富と権力が集中する社会構造は、変わりませんでした。植民地時代から1930年代まで、ラテンアメリカは一次産品の対先進国輸出を基盤産業としてきましたが、そこで生み出された富は、ごく一部の支配層に吸い上げられた。

つまり、ペルーをはじめとするラテンアメリカの格差は、数百年の歴史を持つ構造的な問題なのです。単なる経済政策の失敗や、一時的な不況の結果ではない。土地、資本、権力が、特定の階層に固定され続けてきた。その蓄積が、いまも社会を分断しているわけです。

結局のところディスティネーションレストランに来る人達もまた欧州、北米の人たちが多い。そういう意味では収奪への抵抗としてのレストランの存在はあるな、とも思います。アンデスなどのテロワールを理解させたり、原住民族の調理などの話なども含めて、ルーツを元にして、かつて収奪した国々の金持ちから金をとる。リベンジ的な構図も感じ取れます。

リマの「恥の壁」が象徴するもの

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