【ベトナム縦断バイク旅⑥】恐怖の風、そして再会──ニャチャンからトゥイホアへ
前回

海風に吹かれて心地よく進むはずだった
ニャチャンからトゥイホアへの道は、ずっと海沿いを走るルートだった。
時折見える海を眺めながら、心地よい海風を浴びてのんびり進む──そんな旅を想像していた。
でも、それは完全な甘い考えだった。
出発して間もなく、右側から信じられないほどの強風が襲ってきた。
死を悟った風
とにかく風が強すぎた。
荷物の多いバイクは風をまともに受け、重心を保つだけで精一杯。気を抜けば、一瞬で隣の車線まで押し流されそうになる。
左からは猛スピードでバスやトラックが抜けていく。右は崖。
どちらにぶれても、死がすぐそこにあるような状態だった。
そのとき、突風が吹き、バランスを取ろうと必死に姿勢を低くした僕の真横を、バイクすれすれで猛スピードで大型バスが通過してきた。
咄嗟に恐怖でクラッチを握ってしまい、バイクは不安定に傾いた。
下は砂利でバイクが滑った。もう逃げ場なんてなかった。
あと数センチ、あのままいけば確実にぶつかっていた。
放心、そして震える手でバイクを止めた
気づいたときには、数メートル進んだ先にあった脇道のスペースにバイクを止めていた。
風にあおられながら、震える手でどうにか飛ばされない場所を探して。
そこから3時間、動けなかった。
本当に、何もできなかった。

1キロ先にいた仲間たち
ちょうどその頃、ダラットで出会ったカナダ人の男の子と、イギリス人の女の子が、同じ道を走っていて、1キロ先のレストランで休んでいると連絡が来た。
震える心をなんとか落ち着かせ、風が少し弱まったタイミングで、そこまで進んだ。
彼らと再会し、抱き合った瞬間、あふれそうだった涙を必死にこらえた。
全身が安堵感で一瞬にして満たされた。
3人旅の始まり
レストランでみんなで音楽を聴きながら、風が弱くなるのを待った。
本来は2人とももっと先へ進む予定だったけど、想定外の強風のせいで、急遽トゥイホアのホステル「Laé Hostel」を目指すことに。
3人で1列になって、互いの安全を確かめながら走る新しい旅が始まった。
1人じゃない、それだけで心強かった
暗くなって、周囲は真っ暗になったけど、不思議と怖くなかった。
誰かと一緒に走っている。それだけでこんなにも安心できるんだと、心から感じた。
無事にホステルへ着く頃には、もう昔からの仲間みたいな一体感が生まれていた。
風と恐怖をビアホイで流し込む夜
着いたその夜、3人でトゥイホアの夜の街へ繰り出した。
2人に教えてもらったベトナムの生ビール「ビアホイ」を、浴びるように飲んだ。
あの恐怖も、緊張も、全部このビールで流してしまいたかった。

🏠 宿情報
Laé Hostel(トゥイホア)
・静かな海辺の町にあるローカルホステル
・少しレトロで、落ち着いた空間
・地下にバイクを止めるスペース有
次回
トゥイホアからホイアンへ(バイクをバスに乗せて)
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