【ベトナム縦断バイク旅⑤】ダラットからニャチャンへ──山間部の試練とその先に見た絶景
前回

第1章:綺麗な街に、別れを告げる決断
ダラットは本当に綺麗な街だった。
でも、長居はしないと決めた。今まで滞在した街がどれも魅力的で、2泊以上が当たり前になっていた。
このままだとハノイまでたどり着けないかもしれない──そんな焦りが、背中を押した。
今思えば、あまりに惜しい判断だった。
もともとはホーチミン以外の都市は“宿泊だけしてすぐ移動”するつもりだった。でも、旅が進むうちに気づかされた。そんな想定は、甘すぎた。
この国を本当に味わうなら、2ヶ月は必要だ──そう思った。
第2章:はじめての雨、そして霧の試練
ダラットを出てからの道は、ムイネーから来たときのような“命の危機”はなかった。
整備された山道を下るだけだったし、これは楽勝だなと、最初はそう思っていた。
ところが、ポツポツと雨が降りはじめ、空気が一変した。
標高が高いこの地域で、雨に濡れるというのは想像以上に厳しかった。冷たい風に体温が奪われ、寒さが芯まで染み込んできた。
しかも、道は滑りやすくなり、バイクだからスリップの危険もある。
さらに追い打ちをかけるように、濃霧が視界を奪ってきた。
ここからが旅の醍醐味、試練の本番だった。
第3章:山奥のカフェと、少しの救い
濃霧の中、慎重にハンドルを握り続けていた時、ふと見つけた山あいのカフェ。
小さな集落の中にひっそりとあって、そこに吸い寄せられるように入った。
中ではカッパと手袋を売っていて、迷わず購入した。
温かいお茶を出してもらって、しばらく休憩。店主と少し言葉を交わして、ホッとする時間が流れた。
雨と霧にやられた体を、ほんの少しだけ回復させて、また出発した。
第4章:霧が晴れて現れた、旅一番の絶景
カフェを出て1時間ほど走ると、ようやく雨が止んだ。そして、霧がスーッと晴れていった。
その瞬間、息を呑んだ。
目の前に現れたのは、広大な山々の谷を縫うように続く一本道。
その脇には大きな滝が流れ、まるで誰にも邪魔されない自然の神殿みたいだった。
こんなところを、今、自分はたった一人で、バイクで走ってる。
寒さや孤独を乗り越えて、辿り着いたご褒美のような景色に、心が震えた。
自分がこの大地に挑んでいるんだという実感と興奮で、体の奥からエネルギーが湧いてきた。
第5章:スマホを落とした。終わったと思った。
あとは下るだけ。そう思っていた矢先、日が沈み、あたりは完全な暗闇になった。
山道に街灯なんてなく、バイクのライトだけが頼り。
そんな中、少しの窪みにぶつかりスマホがポロッとスマホホルダーから滑り落ちた。
急いでバイクを停めたけど、暗すぎて見つかる気がしない。
このスマホがなければ、宿の場所すらわからない。
絶望が全身を支配していった。
その時、後ろから大型トラックが通り過ぎ、「ガシャッ」という音を立てた。
恐る恐る近づくと、ヒビだらけのスマホが転がっていた。
電源を押す。まだ動いた。地図も使える。
不幸中の幸い。いや、奇跡だった。
「まだ神は俺を見捨ててない」──そう思えた瞬間だった。

第6章:壊れかけのスマホと、最後の暗闇
壊れかけのスマホとバイクのライトだけを頼りに、真っ暗な山道をひたすら進んだ。
静かで、寒くて、怖くて、でも進むしかなかった。
1時間ほどして、ようやくニャチャンの灯りが見えてきた。
あの光を見たとき、全身がふっと軽くなった。
出発から7時間。ようやく今日という1日が終わった。
第7章:旅人と出会う場所で
宿に着いたのは「Fuse Nha Trang」。
チェックインを済ませて、エントランスにあるバーで一息ついていると、同じくバイクでダラットから来たというドイツ人の旅人に出会った。
お互いに今日の道のりのことを話しながら、ビールを飲んでいた。
言葉も国も違うのに、不器用な英語でも不思議と通じ合えた。次の日宿が主催するイベントに半ば強制的に彼に誘われて参加することになった。
こういう出会いがあるから、やっぱり旅はやめられない。
🏠 宿情報
Fuse Nha Trang
海沿いの街にある交流型ホステル。多くの旅人がいて、バイク旅の旅人も多く、バーやイベントの充実していた。
次回
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