『人望が集まる人の考え方』 読書共有【第36弾】
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はじめに
今回はレス・ギブリン『人望が集まる人の考え方』(弓場隆訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2022年)からの共有です。
本書は人間関係の本質をシンプルかつ力強く説いた名著で、1950年代に書かれたにもかかわらず、「半世紀を超えて読み継がれる人間関係のバイブル」として今でも多くの人々に影響を与え続けています。そして間違いなく私にとってのバイブルでもあり、研修の際にも紹介することがある本です。
誰しも人間関係が上手くいかないときがあるでしょう。本当に人間関係に悩んでいるときには、派手なテクニックも小手先のテクニックも役に立たず、問題解決どころか問題の悪化や深刻化を招きかねないことが多々あります。
そんなとき、何か大切なことを見落としていることに気づけるチャンスかもしれません。本書では、殊に人間関係において悩み多き現代人に対して、人間の本性に対する理解にもとづいた「基本原理」を紹介することに主眼が置かれています。
人としてどうあるべきかを問いかけつつ、忙しさの中で忘れかけていた大切な感覚を思い出させてくれるのが本書の魅力です。「まずは自分から与える」という成功哲学の基本原則を著者なりに発展させたものとしても評価し得るでしょう。
人間関係に悩んでいる人、人と関わる仕事をしている人、信頼を得たいと思っている人、自分の魅力を高めたいと考えている人に、特にオススメの一冊となっています。
本書の主なポイント
◇人間関係を築く技術が成功と幸福をもたらす
どんな成功も幸福も、人間関係の質に大きく左右される。成功と幸福の実現は、他者とどのような関係を築くかにかかっている。
◇相手が求めているものを与える
自分が求めているものを入手するのと引き換えに、相手が求めているものを与えることが良い人間関係の秘訣。特に相手の自尊心を満たすことが大切。
◇自分の成功や幸福が他人を押しのけるわけではない
幸福な人は不幸な人より多くの幸福を振りまき、成功者は失敗者より多くの恩恵を周囲にもたらす。
相手の話に耳を傾けること
本書からは本当に得るものが多く、どこをピックアップしたらよいのか迷ってしまうほどですが、以下では「相手の話に耳を傾けること」とそれに付随する良い結果について共有してまいります。
ギブリンによれば、「相手の話に耳を傾ける習慣を身につけると、自己中心的な性格を克服することができる」とされています。これまでの読書共有でもたびたび「傾聴」について触れてきましたが(例えば下記リンク参照)、この傾聴が自己中心性の克服という点でも大きな意味合いを持っているというのは新しい観点だと思います。
しかし自己中心性の克服と言っても、これは完全に己を捨て去ったような悟り的な境地を指すわけではなく、飽くまで一時的ではあれ自己への意識を逸らすことで、相手へと自分を開くことを指すと考えられます。ギブリンは次のように言います。
「心理学者は、利己的な本能を捨てるのではなく、自分のことから意識をそらすことが重要だと説く。そうすれば、利己的な本能をなくすことはできなくても、自己中心的な性格を克服できるからだ」
これは非常に人間味のある解釈であると言えるでしょう。またこの傾聴により、人間関係において幾つかの良い結果も生まれてくると考えられます。
まずギブリンが指摘するのは、「聞くことで相手の自尊心を満たすことができる」という点です。ちなみに相手の自尊心を満たすことが1番であるというのが、ギブリンの成功哲学の根本テーゼです。ギブリンは次のように述べています。
「相手に最高の評価を与える方法のひとつは、相手の話に耳を傾けることである。辛抱強く聞くことは、「あなたの話は聞く価値がある」という意思表示になるからだ。そうすることによって相手の自尊心を満たすことができる」
さらにギブリンは、「人間関係のトラブルの主な原因は、相手の話を聞こうとしないこと」であり、「人とうまく関わりたいなら、相手の発言にじっくり耳を傾け、相手が何を求めているかをよく知る必要がある」と言います。つまりあらゆる人間関係の失敗は、そもそも傾聴による信頼関係が成立していないことに起因すると言えるのではないかと思います。
上手く話そうとうすることも大切ですが、それ以上に傾聴がまず先立つべきだと言えるでしょう。日頃から私がよく書いている手紙においても、お客様の話に耳を傾けていないと書けないような内容を盛り込むことを意識しています。
ほめ言葉と感謝の言葉
ここで、傾聴によって得られる重要な点をもう一つ挙げるとすると、傾聴すると話し手に対しての「ほめ言葉と感謝の言葉」が見つかる点です。
ギブリンによると、「ほめ言葉と感謝の言葉」は「奇跡的な力を持って」おり、ほめて感謝した自分自身も幸福を感じるというWin-Winの事象が起こり得るとされています。
「もしある人が何かを持っていて、それを与えれば与えるほど、手元にますますたくさんそれが残るとしたら、あなたは奇跡だと思わないか?」
「これこそが、あなたが他人をほめて感謝することによって幸福を与えるときに起こることだ。つまり、他人に幸福を与えれば与えるほど、自分の幸福感が高まるのである」
ここでは、「他人に幸福を与えれば与えるほど、自分の幸福感が高まる」というWin-Winの関係が成立しており、まさに「奇跡的な力」が働いていると言えます。おそらく傾聴なしには、トンチンカンな褒め言葉や感謝の言葉にしかならないと考えられる点で、ここでもまずは自分から「相手の話に耳を傾けること」が肝要だと言えるでしょう。
さらに注目すべき点は、こうして他者に対して「ほめ言葉」や「感謝の言葉」を見つけることで「他人の中に素晴らしい点」を発見することができ、その結果として自己中心性も克服されるということです。ギブリンは次のように言います。
「他人の中に素晴らしい点を探す努力をすることは、自分にも奇跡的な効果をもたらす。それは自己中心的で独善的な傾向を和らげ、他人に対する理解を深め、寛容の精神を培ってくれるからだ」。
以上のように、「相手の話に耳を傾けること」で人間関係がより良くなり、さらに「ほめ言葉と感謝の言葉」によって「他人の中に素晴らしい点」を見つけることで「自己中心的な性格を克服すること」ができ、その結果として自他の幸福に大きく貢献する可能性が示唆されています。
最後に、この「自己中心的な性格を克服すること」について考察を展開していきたいと思います。
自己中心性の克服
私たちは、誰もが多かれ少なかれ「自己中心的で独善的な傾向」を持っていると言えます。これはもちろん性格による場合もあるでしょうが、おそらく元々の性格がどうこう以前に、私たちの認識の仕方が無意識のレベルで「自分が見たいように見て、自分が聞きたいように聞く」という在り方をしている点も見逃せない要因だと思います。
誰もが「自分が見たいように見て、自分が聞きたいように聞く」。これと表裏一体なのは、私たちが見ている世界がそのまま真実とは限らないということでしょう。アプローチや視点こそ異なるものの、心理学・哲学・脳科学・人類学・言語学・社会学・量子力学など数多くの分野で、私たちが見て知っている世界がそのまま「現実」や「真実」とは限らないことが明らかにされてきています。
ということは、「自分が見たいように見て、自分が聞きたいように聞く」という「自己中心的で独善的な傾向」は、むしろデフォルトとして私たちの存在に組み込まれていると考えることができるでしょう。
こうしたことに気づけたとき、おそらく学問的な観点からの気づきも大切でしょうが、特に人間関係の中で称賛と感謝を通して実践的な観点から気づけたとき、私たちは自己中心性を克服しながら他者との充実した関係性をより深めていけるように思われます。
こうして、「他人の中に素晴らしい点を探す努力をすること」は、「自己中心的で独善的な傾向を和らげ、他人に対する理解を深め、寛容の精神を培ってくれる」と言えます。
最後に、「感謝」をめぐって私なりに大切であると感じた2つのポイントを挙げておきます。
①感謝の気持ちは無言でも伝わるというのは幻想である
「自分が感謝していることを言わなくても相手がわかってくれると思ってはいけない。相手の行為に対する感謝の気持ちをきちんと伝えることによって、相手はあなたのためにもっと尽くしたくなる」
②感謝は習慣になるまで意識的に練習する必要がある
「相手に感謝すべきことを意識的に探してみよう。それが思い浮かぶまで待ってはいけない。感謝の気持ちは人間の自然な性質ではないから、それが習慣になるまで練習する必要がある」
このように、「感謝」というのは日々のトレーニングであると言えます。前回の読書共有でも「感謝」の素晴らしい効果について紹介いたしましたが、今回の読書共有では上記のように別の観点からも掘り下げることを試みました。「感謝」に対する深い理解と日々の実践につながることを願って。
おわりに
今回も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。
日々少しずつ閲覧数やリアクション数、フォロワー数も増えてきて嬉しい限りです。今後も最低週1回の更新を目指して頑張ってまいります。
あえて本の要約といったことはメインとせず、私なりの観点から面白いと思った箇所の共有という限定的な内容にしております。それが少しでも皆様の記憶に残り、日々の読書体験の深まりや具体的な行動・実践に繋がるのであれば幸いでございます。
それでは今後とも宜しくお願い申し上げます。
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