2025年ベストカルチャーコンテンツ(書籍編)
2025年も名著に囲まれた楽しい日々だった。
読了した52冊のなかから特にお気に入りの10冊を記しておきます。(4冊目以降は順不同)
映像編も別途書いているのでよければ是非…!
🥇朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』
朝井リョウさんの新作本当に面白かった...!
”推し活”がメインテーマなのだけど、それを起点に繰り広げられる「若者の生きづらさ」「中年男性の孤独」というテーマがあまりにも鋭くて刺さった。
10月に発売されたがその時期に邦ドラでは『じゃあ、あんたが作ってみろよ』『ぼくたちん家』といった作品が「男性のケア」を扱っていて書籍と映像で横断的に触れることができたのも非常に面白かった。
男性のケアに関する熱量そのままに、リアルサウンド様で執筆させて頂きました。
🥈村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』
2007年刊行の村上春樹のエッセイ。各所で引用されていたので気になって読んだけど、走ることを通じて体力強化、思考の整理、そして自己との対話を繰り返していて走るモチベーションに繋がった。
自己免疫システムを作り上げ、長期にわたって維持していくには、生半可ではないエネルギーが必要になる。どこかにそのエネルギーを求めなくてはならない。そして我々自身の基礎体力のほかに、そのエネルギーを求めるべき場所が存在するだろうか?
ハイパフォーマーが筋トレ、ランニング、スポーツ、瞑想などを習慣にするのは、健康維持目的だけではなく、PCでいう「更新して再起動」を行うため。
— 限界読書 (@genkaidokusho) December 8, 2025
脳を一度シャットダウンして、溜まったキャッシュをクリアにする。その後再起動すると、脳の働きが段違いに良くなる。「切断」の効用。
Xで興味深く拝見している限界読書さんも、ランニングの効用を「PCでいう『更新して再起動』」と表現していて本当にそうだよなと膝打ちまくり。
働くなかで意思決定や段取りの大部分を、ありがたいことに任せてもらっているので、クリアな状態で判断・行動できるように意識していきたい。
2026年も走るぞ🏃♂️🏃♂️

クッション性と反発力がすごくて気持ちよく走れる

🥉山口周×長濱ねる『未来を照らすコトバ』
経営コンサルタントの山口周×元欅坂46・長濱ねるのラジオが書籍化。
2023年から毎週欠かさず聴いているのだけど、改めて書籍というかたちで世に出て本当に嬉しい。
社会人以降の自分の思考や意思決定の骨格を成しているなと再認識。
本書のための書き下ろしも最高でした!(下記参照)
「時間の確保」っていう考え方がもう筋が悪いと思うんですよね。ウォーレン・バフェットって、50年以上、1日6時間の読書をしている人なんですよ。マーク・ザッカーバーグも年間50冊がだいたい自分のペース、ビル・ゲイツもだいたい50冊。SBIホールディングスの北尾古孝さんも年間100冊くらい。ユニクロの柳井正さんも、年間200冊くらい読む。5時か6時には会社を出て、家で家族と食事をして、夜12時に寝るまで読書している。
要するに時間って、全部のことをやろうとしたら必ず足りなくなるんです。結局何をやめるかって話なんですね。どうやって確保するかっていうことじゃなくて、何を諦めるか。(中略)優先順位が低かったら確保できないのは当たり前の話ですよね。
「今年はこれをやるぞ」っていう目標を立てる人いるでしょう。それはやめた方がいい、と思います。逆に、「今年はこれをやめるぞ」っていうのを決めた方がいい。「やること」と「やめること」を同時に決めないといけない、とも思います。

⭐︎森下彰大『戦略的 暇』
「私たちが思うように力を発揮できないのは『ケイパビリティ』ではなく『キャパシティ』不足が原因なのではないか」という問題意識からスタートする本書。「すべて投げ捨てて休もう!」という見当外れな自己啓発かと思いきや、歴史や社会学的なアプローチがふんだんに盛り込まれていて読み応えあった。
例えば、バックス・マーナ(ローマの平和)期やルネサンス期、江戸時代など平和かつ経済的な安定を迎えた時代の折々には文化が華開いたという指摘や、
人生の転換期にはふとした空白があるのではという仮説(スティーブ・ジョブスは大学中退後も哲学やカリグラフィーなど好きな授業だけもぐっていた。そして、興味本位で学んでいたカリグラフィーは後ににiPhoneで採用されることになった)話は非常に説得力があり、面白かった。
”選択と集中”ももちろん大事ではあるが
”あえて”意味のないようなことをやること
”あえて”不便益を取り入れことは中長期的にみると大事なことだよなと再確認させてくれる。
⭐︎三宅香帆『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』
お世話になっている三宅香帆さんは2025年も勢い凄まじかった…!!
『考察する若者たち』『文体のひみつ』等も面白かったけど本書が最推し。
三宅さんのインプット術を惜しみなく提示されていて、とても勉強になった。
この1冊で150冊をこえる書籍や40本をこえる映像作品が取り上げられており、開いた口が塞がらない。
⭐︎スズキナオ『家から5分の旅館に泊まる』
スズキナオさんの旅行紀エッセイ
高級なホテルや名所を巡るのではなく、閑静な地域や見知らぬ土地で感じたことを巧く言語化されていて、羨ましいな~~
⭐︎西森路代『あらがうドラマ』
邦ドラの評論をまとめたものって稀有なのでこういう名著が生まれてくて本当に嬉しい…!!
西森さんの視点は自分ひとりではできないドラマの見方・奥深さを与えてくれて、ドラマライターとしてこういう文章が買えるようになりたい…!と日々思っている。
⭐︎山口周『人生の経営戦略』
データやエビデンスなど”サイエンス”ではなく、人文学のアプローチで人生のコンパスを授けてくれる山口周さん。
書籍の冒頭に必ずある「はじめに」ですが、こんなにワクワクする「はじめに」は初めて。
本書では、経営学の基本的な概念や理論を解説し、それを「人生の経営戦略」にどう適用するかを具体的な例を交えて説明していきます。それは例えば、競争戦略論のポジショニング理論を用いて「自分の居場所」を見定め、マーケティングのライフ・サイクル・カーブの理論によって「人生の順番とタイミング」を考察し、ゲーム理論の「絶対優位の選択」に基づいて「他者とは異なる逆バリ」を選択し、財務理論の正味現在価値の観点から「長期リターンの大きい選択肢を選ぶ」といったことです。
経営学の理論が列挙されていて「何だ?何だ?」ってなるけれど、分からないなりに面白そうだぞと興味が湧いてくる最高の導入。
⭐︎東畑開人『カウンセリングとは何か』
カウンセリングは「人間が自由な個人となり、そしてそのことで孤独と責任を負うことになった近代の副作用に対処するために生まれてきたテクノロジー」なのだから無関係な人などいない。
カウンセリングはどこか他人事だと思っていたので良い意味で釘を刺された気分。
自由な社会を生きるということはカウンセリングと隣り合わせであるということなんだな。
⭐︎阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』
文章を書くにあたってめちゃめちゃ参考になる1冊。
文章の指南書としてだけでなく、筆者の熱い思いも見どころ。
なぜ人文学という学問が公的機関において保護・支援されていてよいのか。文学部不要論や、「人文学ってなんの役に立つの?」といった問いにたいして、さまざまな回答を目にする。わたしの回答はシンプルだ。それは世界から暴力を減らしているのである。暴力を減らすための言論活動の価値が世界から消えることはない。
平野啓一郎が『文学は何の役に立つのか?』を出版したり、沼野充義が「それは君が何をどう読むかだ」を『現代思想』に寄稿(2024年)していたりと、人文学の存在感が高まっているな~~と感じた。
おわりに
今年もたくさんの素晴らしい書籍に出会えることができてよかった。
『チ。ー地球の運動についてー』『ひゃくえむ。』『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』などの魚豊作品に大きな影響を受け、2026年は通信教育で哲学を学ぼうと思っているし、『遊びと利他』(北村匡平)、『シン・ファイヤー』(稲垣えみ子/大原扁理)『ファスト教養』(レジー)といった作品からは余白をつくっていくことの重要性を感じ取った。
本は自分さえ気づいていなかった情動や感性に気づかせてくれたり、悩んでいる時の羅針盤になったり、そして豊かさをもたらしてくれるかけがえのないものだ。
2026年もどんな書籍に出会い、どんな自分に出会えるのか。
胸躍らせながら、今年も私はページをめくる。
