【Part-1】ブルガリアのラベンダー研究論文2本のデータを使って、英国品種ラベンダーとフランス品種ラベンダーのオイル組成特徴をむりっっっくり探る試み!
今は一面白銀世界の真冬・ラベンダーオフシーズンですが相変わらずラベンダー熱が高すぎて『"イングリッシュラベンダー"謎の扉』をこじ開けてやりたいエフゲニーマエダでっす!
(普段は芳香作物普及家です)
最近スキーとか山登りしてなさすぎて生活習慣が乱れに乱れまくってるせいか、20:00ごろにカフェイン(至福のコーヒータイム)をキメてしまったせいで頭が冴えてしまってですね、カフェインの魔力とも言いますか、突然凄まじいアイデアが爆誕してしまったのですよーーー!!
ではではカフェイン熱が冷めやまぬ前に作ってワクワクしてきましょう…!
現在の課題、悩み:英国産ラベンダーのオイル組成データ、論文が無い。
かなり延々と、暇さえあればラベンダー論文を毎日サーフィンしまくってるエフゲニーマエダなんですが、英国のキンロス(エディンバラ北部)にあるラベンダーファームさんが作ってたホームページ(いわゆる旧サイト)で全世界各国のラベンダー精油の組成表をまとめていたんですね。
けどなぜかしらホームページのリニューアル工事によりそのページが吹き飛んでしまっていまして、貴重なマニアックデータだったのになぁ〜という嘆かわしい現状なんです。
ほんとよくここまで調べたなぁ…!!と感心するばかりのデータ参照・リストアップ数だったんです。
たーぶん、たしか英国産および英国品種でも精油の分析データ表乗ってたはずなんだけど、2025年のいまや銀河のその彼方です。。。
テロワール(ワイン用語:その地域の気候風土によって同一植物でも香りが変わる)的に考えると、「ブリテン島内で育ったラベンダーのオイル組成」というイングリッシュラベンダーの秘密の扉は、非常に価値がある情報なのです。
なんせしっかりラベンダーについて研究してデータと論文を出しているのはフランスやブルガリア、東欧諸国やアメリカ、日本、中国、インドだからです。
イングリッシュラベンダーと名付けた当の英国ではそれが全く無い、見つからないんDE!SU!YO!
あるいは英国品種という、推定4〜20世紀近くはブリテン島内でひたすら世代交代されて作り上げられた英国品種ラベンダーはおそらくどの地域に移しても、オイルの組成について固有の特性を持って発揮しているはずなのです。
仏産品種を日本:北海道をはじめ、さまざまな国(オーストラリア、北米)に持っていっても、元来の高い酢酸リナリル率を誇ることは数々の調査文献で証明されていることなのですね。
ちなみについこないだのイランの研究論文がそのうちの一つにあたります。
上記論文では、基本的に仏産品種はオイル品質が連年を通じて上々のラインを維持するが、英国品種は"クセのようなものがあるがソレが何なのかはハッキリしなかった”という何とも惜しく歯がゆい結論に。。。
確か降雨があれば安定する的なニュアンスだったかな?
非常に、とても、惜しい論文がある。
https://www.sciencedirect.com/org/science/article/pii/S0428029624001707
論文タイトル「ラベンダーのエッセンシャルオイル - 原産地のサンプル間の隠れた関係」を読んで字のごとく、全地球規模での各国各地域で販売されている市販精油?を取り寄せて成分の偏りをクラスター分析→グルーピングして考察した論文。
何が残念かというと、英国産のデータがほぼ無くて全体数に対してすっっっくなすぎるんですよ。
それも総99サンプルあるうち英国サンプルはたったの1サンプル。…おい!「イングリッシュラベンダー」とは…?
なので無論、英国のたった1サンプルに対してGC-MSのデータ図表は付録されてませんでした。
比較検証に使用する2つの論文
さてさて本日今回のお楽しみというか醍醐味の1つ目!
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13102818.2020.1742788
なにやら難しいタイトルなんですが、すーっごいざっくり言うと、さまざまなラベンダー品種を遺伝子解析して、似たもの同士でクラスター分析グルーピングしたよ!って論文ですね。

なによりおもろいのが、日本でも名の知れた子達が属する英国品種グループは、英国品種みんなしっかりイングリッシュラベンダーグループ(FV)に収まってることですね!
すごい、同じLavandula angustifoliaの栽培品種なのに遺伝子検査するとこうやってしっかり近所同士は近所同士で並べて出せちゃうもんなんですね…!
FV:英国品種グループはマンステッドから始まり、超淡い色品種として有名なブルーアイスまでがクラスター中の1グループにまとまったようです!
これぞ、Theイングリッシュラベンダーグループですね。
次に注目なのが、そのイングリッシュグループ:いわゆる英国品種にどちらかといえば近寄りなのがブルガリア次世代品種'D1'から始まりセブトポリスまでで内包されてる英国品種寄りクラスターグループ。
これがおそらくの"英国品種の血を引くブルガリア品種たち"です。
確かソ連時代の1920年代に英国から導入された子達のはずです。
そして最も最外殻に示されているのが対極的なフランス産の血を引くクラスターグループ。
特にヘムスだけは遠いよ!と示されていますね。
カルロヴォとラヤが親フランス品種ということを覚えておきましょう。
そして醍醐味論文2つ目!!
https://www.sciencedirect.com/org/science/article/pii/S0428029623001415

各品種を16〜2020年までの4年間分, LI/LA比として示している
これは2023年のブルガリアによる国産ラベンダー品種についての論文なのですが、ざっくり説明すると4カ年分でブルガリア国内の主要な栽培品種たちの成分…というかリナロールと酢酸リナリルの数値に絞って連年動態を示してみたよ!etc…という論文。
この論文でおもしろいのが、上記のデータ図表は各品種たった1年分のGC-MS組成ではなく、連年で気候変化との関連性、つまり気候動態における反応も見てるわけです。日照の少なかった年や雨の多かった・少なかった年などその年の気候をそれぞれ品種たちがどのように生理応答し、ほかの品種たちと関連づいてるかを見てるんですね。
まぁ学術論文の調査項目としてはちょっとデータ採取箇所数が少なすぎて信頼性が足らない気味なんですが、少なくとも連年でLI/LA ratioは出せてるのでこれは頼りになるデータです。
さて!!
この論文2つのデータ図表を見てて、思い立ったおもしろいことを実践してってみましょう!
品種クラスター(遺伝距離による)の組み直し結果。
結果パート!
早い話というか、つまるところこんな感じ!
2つの論文のデータを並べ替えてみました!
いわゆる親フランス品種グループ(左)と親イングリッシュ品種グループ(右)。

あ、なんか見える気がしません?…しませんか!?笑
考察パート!
親フランスグループにソートされているカルロヴォとラヤは、LI/LA比が比較的揃いやすい傾向にあるよう(有意差統計調査無し!!)で、同等のLI/LA比となっています。
加えて、さらに遠いヘムスも同様の傾向であることが見てとれますね。
個人的に市販のブルガリアラベンダー精油はこのLI/LA比が並ぶ傾向が多いように感じてます。あとはシメン類とカリオフィレンがフランス産より多い点でしょうか。
あとはリナロールが親イングリッシュグループに比べて高め水準ですね。
一方で英国寄りグループのドルジュバ, ユビレイナ, ヘバールらは、酢酸リナリルがかなり伸びやすい特性があるようですね!
しかし反面Lowリナロール。
リナロシンターゼ系の酢酸修飾酵素が多いんだろうと考察できます。
セブトポリスだけは、そもそものLI/LA合計値が毎年低い傾向にあるようで、それが意味するは、リナロールと酢酸リナリル以外の芳香分子(シメン類、カリオフィレン、テルピネン等)が多いこと。
つまるところ、ひとつ味わいが無さすぎるか、またひとつまろやかな香りであることを意味します。
ブルガリア精油の特徴といっていいかもしれません。
リナロール&酢酸リナリルと、それ以外との割合も見てみる。
これといった医学的・学術的根拠はないのですが、ラベンダー精油の香りの大部分というか香りの骨格は、精油中の50%~80%を占めるリナロールおよび酢酸付加体の酢酸リナリルによります。
これら2種がラベンダー精油の香り成分の主骨となっている場合が多いです。
そして"端的ではありますが"、ラベンダー精油のグレードを示す簡単な指標として、それら2つの芳香分子を合わせたLI/LA Latio(リナロール/酢酸リナリル比)という示し方があります。
これとかですね。
ラベンダーの香りの骨格たる「リナロールと酢酸リナリルの割合が高水準であれば、甘美でフローラルな美しい香りになる」とされます。とされる仮定が大事。
で、僕が注目してるのが、ラベンダー精油成分100%のうち、主成分であるリナロールと酢酸リナリルの合計値を差し引いた「残りの部分」!!
そうです、ラベンダー精油の香りに絶妙な個性の風味を与えているシメン類やカリオフィレン、テルピネン類、ラバンジュロールなど他微量成分の割合を知りたいのです!
このLI/LA以外の微量成分がどれだけ含まれているかで、ラベンダー精油の味わいが実に艶やかに変わるのです!
てことで、それも作ってみました。

まずLI/LA比の合計値。
表示場所が酢酸リナリルの上なので見た目バイアス的なのにかかっちまいそうですが、あくまで数字が肝心。
ヘムスはLI/LA比が高いと言え、セブトポリスは50%台が多いので低いといえる。
ちなみに各品種ごとLI/LA ratioのAVE.で出すと
🇫🇷ヘムス→75.6%
🇫🇷カルロヴォ→71.3%
🇫🇷ラヤ→68.8%
🇬🇧ドルジュバ→67.5%
🇬🇧ユビレイナ→60.5%
🇬🇧ヘバール→64.0%
🇬🇧セブトポリス→58.5%
おぉ・・・しっかり差が出た、出てる出てる。。。
Part2へ続く。
〜関連記事リンク〜
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13102818.2020.1742788#d1e278
https://www.sciencedirect.com/org/science/article/pii/S0428029623001415
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