【小説】『Dystopia 25』~楽園~Phase Ⅹ
The Three Chosen partⅨ
≪親愛なるチャーリーへ
あなたは妄想癖に囚われいるの。早く目が覚めて。
あなたは神でも何でもない、ただの一人の男。私を愛し、私に愛される人なのよ。
寂しいわ、チャーリー・・・・・・
私はずっと一人。早くあなたに会いたい・・・・・・
そこにいる先生の話に耳を傾けて、しっかりと現実を見て私の元へ帰って来て。
お願い。愛してる≫
「・・・・・・」
「・・・どうだね?チャーリー君」
「ありえない、そんなはずは無い。どうしたんだ、愛しのハニー・・・これは現実じゃ無い。馬鹿げたことだ。これは・・・これは・・・・・・」
Devil's Forest Upset
パメラは|Forester《フォレスター》が住まう森の集落内をうろうろと、話が出来るふくよかで恰幅の良いフォレスターを探した。
村の子供たちは相変わらず物珍しそうにこちらを見つめて来て、女性たちは横目でチラチラと意識されている。あまり居心地がいいとは言えない。言葉が通じない為に誰かに聞くことも出来ず、とにかく足で探すしかなかった。
集落は器用に木で組まれた小屋や、藁葺で出来た簡易的な物まであり、みんな殆ど裸で生活をしてる。大人の女性、男性は腰布を纏う程度で、昨日のウェルバー確保時に扇動していた戦士風の男や長老のような着飾りは、あまり見られない。ある程度のヒエラルキーはここにも存在していそうだった。
外での生活が日常なために、みんな肌は日焼けで褐色が良くパメラたちとは一見して人種が違うようにも思えるが、骨格や体格、肉付き、瞳の色、髪質髪色などは中の人となんら変わりは無い。
パメラは違うようで違いが無い、その雰囲気に不思議な感覚に襲われていた。
集落を北上した辺りに差し掛かると、パメラが探し求めていた人物に出会えた。ふくよかなフォレスターは目前にちょっとした崖の麓から流れ出ている、澄んでいて綺麗な湧き水を竹筒に汲んでいる。
「・・・ちょっと、いい?」
パメラは何故か気まずそうに、下を向いたまま近づき声をかけた。自分達がセンター教に属していたことなのか、それともこれから聞きたい事の申し訳なさなのか。
「・・・ナンダ」
「もし、私たちが中に戻れたら、その消えた人たちを探させて欲しいの」
「・・・ナゼダ?」
「森のことはあなた達の方が断然、詳しいでしょう?森の悪魔との境目も私たちの境界線なんかよりももっと奥へ、こうやってこれるんですもの。でも中は大変よね。私たちなら、中のことは詳しいわ」
「・・・ソウカ。シカシ、ナゼダ?お前タチ、ソノ意味ナイ。何ノタメ、ヤル?」
「・・・今、中が大変なことになっているの・・・・・・」
パメラは現在、コロニアの中の出来事を詳しく話していった。特に第1の異常な集団proberの反乱については、この悪魔の森の中でさえ影響が及ぶかもしれない。その注意としても、そしてあわよくばここの住人、フォレスター達が何らかの力になってくれるかもしれない。そんな期待も込めて危機的に話していった。
「・・・マサカ・・・先人様タチノ言ッタトオリニ・・・・・・」
ふくよかなフォレスターは目を泳がせ焦った様子で、手に持っている水を飲みほした。空になった竹筒をパメラに無言で渡す。
「ちょ・・・え、先人様??」
全てを信じてくれるとは思わずにパメラは話していったが、何やらフォレスターには身に覚えが、聞き覚えがあるようだ。
「分カッタ、イイダロウ。トリアエズ、お前、小屋戻レ。マタ俺行ク」
そう言ってふくよかなフォレスターはその重い身体を揺らしながら小走りで去って行った。パメラは予想以上の反応に唖然とその場で立ち尽くすしかなかったが、ふと我に返り、手渡された竹筒に再度水を入れ直す。
Colony Ⅱ Liberation
「・・・さぁ、全てを話しました。是非、あなたからもチェバラ先生のことを話して頂けませんか?」
ライトは挑発的な目で相手を見つめる。
「・・・いいだろう。しかし、色々と裏付けが必要となる。先ずはパメラの身の安否だな。お前たちの一時的なその塒の場所を聞こう。直ぐに足軽を送る。そして、第6のセンター教の意見も聞かねばな」
「それでしたら、オーヴィルという者もお訪ね下さい。時期第6代表候補の者です。きっと、お力になれます」
「分かった・・・一旦は、お主の正直な言葉とその眼、そしてその行動に免じて信じよう。しかし、見張りは付けさせてもらうよ」
「構いません。ただ早くパメラさん達と、ここの人達の安全として第1へのプローバー対策、対処とご検討下さい」
「ふむ・・・では、客人をこんな所に幽閉しておく訳にはいかんな」
そう言ってマイオス将軍は右へと消えて行った。
間もなくして、側近の二人がやってきて牢の鍵を開ける。
「・・・ついて来い」
ライトは牢屋から開放された。
その際にふと、隣の男がどんな奴だったのかが気になり左の牢屋の中を覗いて見た。が、そこはただ冷たく開け放たれた鉄格子と石壁がガランとして、ひたすら空虚な空間だけでそこには誰一人も居なかった・・・・・・
Devil's Forest Self-introduction
パメラがみんなの居る小屋へと、汲んだ綺麗な水を持って戻ってみるとそこには足を怪我したフォレスターの少年が、セーラと何かをして遊んでいた。
「あ、おかえりぃ」
「・・・オカ、イー」
少年はセーラの真似をしている。
「た、ただいま・・・何してるの?もう足、大丈夫??」
「オカ、イー!」
少年は怪我をした足をまだ少し庇って歩いているが、問題は無さそうにパメラの所までやってきて、抱き着いた。
「ちょ、ちょっと・・・・・・」
「ふふふ、多分、ありがとうって言いに来たんだと思う」
左腕には少年を発見した当初から、セーラが自分の服を破いて簡易的に作った包帯を巻いていて、また怪我でもしたのかと思ったが抱き着く腕に問題は無かった。
「そう、元気になって、私たちも良かったわ」
パメラは少年の頭をポンポンと撫で、この少年を含めてみんなが無事で何よりだと幸せの空間が小屋の中を包み込む。
「この水で、怪我の洗浄をして・・・・・・」
パメラとセーラがウェルバーとレイアの身体を洗い、再度、新たな薬草を塗って大きな葉で包む。フォレスターの少年は真剣に二人の動作に見入っていた。
「そうだ、あのね・・・・・・」
パメラはふくよかなフォレスターとの会話をセーラに説明して、戻って来たことを報告した。
「そうね、第1のあんなことも、ここの人たちには無関係ってことも無いでしょうしね・・・ただ、中の奥って、本当に何のことだろう・・・・・・」
「もしかして、第8の『監獄コロニー』と関係があるのかしら・・・・・・」
「・・・それとも、上。もしかして上層階と関係があったり??」
二人は何だか嫌な予感、不穏な空気を感じていた。
「・・・オカ、イー!」
少年が葉っぱをパメラに渡そうとしてくれている。恩返しのように、何か手伝いをしたいようだ。
「・・・え、ちょっと、さっきから『オカイーオカイー』て・・・もしかして私の名前、勘違いしてんじゃないの?」
「オカ、イー、オカ、イー!」
「違う違う、パ、メ、ラ。私の名前は『パメラ』よ。あっちが『セーラ』。『パメラ』『セーラ』」
お互いを指しながら、名前を繰りかえす。
「パメ・・ラセーラ・・・・・・」
「そう。私が『パメラ』。この子が『セーラ』。あなたは?」
パメラは少年を方を手で示す。少年は自分の胸に手を当てて
「・・・ア、『チェロ』パメラ、セーラ、『チェロ!』」
チェロはそれぞれを指差しながら、しっかりと各自の名前を把握してくれたようだった。
「チェロ!そう、あなた『チェロ』って言うのね!ふふふ、よろしくね」
「改めて、初めましてチェロ。私はセーラと言うの」
二人と一人はやっと、お互いの心が通じ合った気がした。
Colony Ⅱ Castle
ライトはやけに屋根が低い、敷地としては広大な屋敷内部へと案内された。
そこから更にまた狭い出入口から通されたその一室で、身の確保をしておけと命じられる。
「どうして、こんなに狭く低いのですか?」
案内人に世間話のように話しかけた。
「この狭さであれば、剣や槍は通りにくい。この低さであれば、剣や槍は振るえぬ」
簡潔に淡々と答えられた。なるほど、と、ライトは納得し感銘することしか出来ずに、次の言葉を失った。
後はとにかく待つだけなのだが、こんなにも自分だけがゆっくりとしていていいのかと、ウェルバー達に申し訳ない気持ちになっていた。
Devil's Forest Folklore
翌朝、起きてみるとふくよかなフォレスターがまた新たな医療セットと簡単な朝食を持ってやってきていた。
「起キタカ。ホレ」
パメラは品々を受け取ってお礼を言う。
間もなくして、一緒にセーラの横で寝ていたチェロが起き出した。
「・・・『マオリ』!」
チェロと、少年に『マオリ』と呼ばれたふくよかなフォレスターが二人で何だかを話している。パメラは医療セットを手にしたまま、笑顔で膠着するしかない間が生まれた。
いくつかのやり取りの後、チェロは二人に手を振ってから元気よく小屋を去って行った。
マオリはチェロが帰った所を見計らい、神妙な面持ちで話し始める。
その話とは、フォレスター内にも古くからの言い伝え、伝承がある。遠い先祖から代々の長へと語り継がられ、一部では子供の遊び歌や就寝前の子守歌のように伝説として語られる様な話すらもあるようだった。
ライトがチェバラから聞いた『Fátima Gate正教』から始まる『ファティマ伝記』よりも遥かに昔、何度かこの世界は終焉を迎えては復興を繰りかえしていると言う。
【人が集まりし処、荒ぶれる人現る
悪霊に憑かれし者、悪霊を呼びまた他を憑けし呪いを広げる】
【怒涛の如く、天からの怒号が鳴り響き時、地上では数多の悪魔を引き連れ舞い降りる
高らかな奇音と共に仲間は倒れ、瞬く間に悪霊共々、一掃されて行く】
【天より悪魔が降り注ぎ、人が集まりし処
業火の如く焼かれ夜が訪れず
悪魔が地獄の炎を手に、人々を求め彷徨い歩く】
【コペリとイグルは森を住処にし、勇敢にも数多の悪魔と悪霊を討伐し森を聖地として君臨する】
子供達への物語はコペリとイグルという英雄に纏わる話が大半だが、長老とシャーマン、長である一番の戦士には全てを言い伝えられていて、終焉の時に備えた準備をいつでもしていると言われている。
マオリはパメラの話を聞いて、伝承の一つ目にあたる現象が内部にて起きていると感じ、長老の元へと確認しに行った。
「・・・長老、恐レテイタ。多分、言い伝え、始マル。お前タチ、一緒ニ来イ」
Colony Ⅱ Information
「失礼します」
ライトの部屋の外から声がした。
「・・・はい、どうぞ」
壁の三分の一程度の出入口から、一名の兵士が顔を出す。
「客人が仰っていた洞口へと参った者からの伝達です。洞窟には誰も居ませんでした。ただ、焚き火跡と無数の下足痕が有り。改めて人数を動員し周辺を探してます」
「なんだって?!そんな・・・・・・」
「第1コロニーへの刺客は戻ってきておらず。数名が第1から壁を越えてこようとした者を打ち取っております。その内の一名を生け捕りとしましたが、意思疎通が不可能な程の狂気の沙汰。おおよそ、客人の言った通り」
「・・・やばいですね」
「前述での一件はまだ不確定ですが、後述の第1の事象は一刻を争う事態へと。本日の夕刻、各将軍が集まる軍法会議にて、客人も出席されたし」
「え・・・あ、はい、分かりました」
「では・・・・・・」
木製の引き戸は音も無く閉じられた。鴨居には蝋を丁寧に塗り込まれているのだろう。兵士は終始、低姿勢で頭を下げたまま報告を済ませた。
ライトは緊張と共に、パメラやウェルバー達の心配で気が気ではなくなってしまった。
Devil's Forest Soldiers and warriors
パメラはマオリの後に続き、もう一名のフォレスターが同行した。名を『ナバホ』といい、チェロの父親である。
「ナバホ、村一番ノ戦士。次の長、候補。強イ。頼モシイ」
マオリは、今から第1への道案内として向かう事に不安がっているパメラを安心させる意味で言った。と言っても実際にはフォレスター達にとって森は庭みたいなものであり、そんなことは不必要なので道案内とは表向きである。実際には「人質」という、長老や村長、そしてフォレスター達への名目として同行させる必要があっただけだった。
パメラはチェロの父親だということで、不愛想で筋肉質な身体の男に親近感を感じる。以前であればCheater並みに脅えているはずであった。
「よろしくね」
握手を求めるように手を差し出すが、ナバホは無反応。
「・・・ワタシタチ、ソノ挨拶シナイ。女子供ハ抱き締メル。男ハ腕ヲ逞シク交差サセル」
「そ、そうなんだ・・・・・・」
パメラは考えた結果、拳を握りしめその細い腕を前に出して交差を促した。ナバホは困惑と混乱をしながらも、とりあえずは息子の恩人である者の敬意として腕を出し、交差させた。
「ふふ、よろしくね」
パメラは笑顔で改めて挨拶を交わす。ナバホは真剣な目で視線を合わせ、ただ頷く。
その全ての所作の意味を知っているマオリは、ただ笑顔で微笑ましくその場を見守るだけだった。
センター教が引いた悪魔の森との線引き紐と土手に差し掛かかる。
「この境界線、あまり意味が無いんだね・・・・・・」
「ソンナコト無イ。森ノ悪魔、イイ眼持ッテル。コノ線ハソノ眼ノ範囲ニ沿ッテイル」
「え?悪魔の、目??」
「ワタシタチ、安全ナ道知ッテイル。お前タチ知ラナイ。コノ線ノ内側ナラバ知ラナクテモ安全」
「そ・・・そうなんだ。何だか怖いわ・・・・・・」
間もなく第1コロニー周辺の森へと差しかかる時、一人の男がフラフラと血だらけで今にも倒れそうにどこかへと歩いている。
ナバホが一早くそれを見つけ、マオリとパメラに警戒色を露わにして隠れるように指示をした。
三人の目の前まで何とかやってきたその男の軌跡には、血の跡が点々と続いてい。折れた槍のような柄の部分を杖のようにして何とか歩いている。髪は長く後頭部で一つに束ね、鎖帷子を纏っているその姿は紛れもなく第2コロニーの兵士であった。
・・・ドサッ・・・・・・
パメラ達がやってきたの少し後ろの方で、その第2の兵士は力尽き倒れ込んでしまった。パメラは一瞬、脳裏では助けなければとも思ったが、第2でのチーターのトラウマが深層心理にて身体が拒否反応を示し、二の足を踏ませた。
「アノ血ノ量デハ、ダメダ。トドメを刺シテアゲタ方ガ、イイ」
「え?!ダメよそれは!」
トドメ=殺すという言葉を聞いて、パメラの理性が脳内で押し勝った。
「大丈夫?!」
パネラは隠れていた藪から飛び出し、倒れた男に手を差し伸べた。
「・・・逃げろ・・・第1、プローバー・・・やってくる・・・・・・」
第2の男はパメラの腕の中でその言葉を残して、命の灯火がこと切れてしまった。
やるせなく複雑な心境の中、マオリとナバホは周囲への警戒を解いていない。パメラと死んだ男を中心に、それぞれ手に持っていた弓と短剣を構えながら男がやってきた血の跡の方向に睨みを利かせている。二人は話合いながら耳を澄ませ、目端に集中していた。
・・・ガサガサッ!!
三人が隠れていた反対側の木の影から、顔や身体に赤いペイントをした男が石斧を振り上げながら現れ、凄い勢いで走り込んでくる。警戒していた方向からではなかったが、ナバホが直ぐ様に反応し手にしていた短剣をまるでナイフかのように投げ込み、短剣は深く胴体に食い込んだ。
マオリとナバホは突然、現れた赤いペイントをした男の死体を見下げながらまた何かを話し込んでいる。
話が終わったのか、マオリがパメラの元へと戻ってきた。
「帰ロウ。コレデ十分ダ」
マオリの背後でナバホは剣を引き抜き、そして何度もその剣を振り上げては赤いペイントだった男の身体に振り下ろしていた。
Colony Ⅱ Reconciliation
陽が落ち始め、そろそろ夕方だと思われる頃。
「・・・失礼する」
今度はマイオス将軍の声がしてきたと思いきや、戸は開かれ堂々と入って来た。
「少しは休めたかね?」
「あ、はい、お陰様で・・・・・・」
実際には会議に参加する、という大事となってきたことに緊張して気が休まることはなかった。
「それは良かった。しかしすまないね、色々と身内を撒くのに手間取ってな。やっと一人になれたんだ。会議前に君と腹を割って話しておきたくてな」
牢獄であった第一印象とは少し違って、なんだか話しやすそうな印象へと変わった。武器や甲冑を脱ぎ、ラフなスタイルで現れたからかもしれないと、ライトは思う。
「ああ、それはありがとうございます。僕も、聞きたいことは山ほどあります」
「だろうな。さて、娘は居なかった。何かがあって移動したか・・・攫われたか、だ」
「ええ、とにかくそれが僕も心配です。兄のウェルバーが付いていますので、滅多なことにはならないと思いますが・・・・・・」
「あの洞窟は森の境界線のすぐ近くだ。森の奥へと行くとは思えぬが、ただ残された下足痕は奥へと続いておった」
「なんですって?!兄やみんなも流石に・・・では、攫われたってことですか?!」
「かもしれん。もしくは、何者かに追われて逃げた先が・・・かもしれぬ」
「追われて・・・まさか、第1のプローバーが・・・・・・」
「壁やCSタワー内部の通路は我々が監視しておる。しかし、外は別の話だ。我らが送った足軽も戻って来ん・・・第2上層部はやられたとして報復か上告を検討している」
「!?そんな悠長なことを・・・・・・」
「まぁ待て、言いたいことは分かる。組織を動かすには筋が必要なんだ。・・・お前、パメラとの関係からも察するに、第3との繋がりもあるんだな?」
「ええ、まぁ僕は少しですが・・・兄が第3の元女帝と婚約中ですので遠くは無いです」
「ほぉ、あのアマゾニスの女帝とか。やるではないか」
「兄も弱い男ではありません。なので、そこまで心配はしていませんが・・・・・・」
「・・・お主、第3での、ここ第2の話はどういった事を聞いておる?」
「え?・・・ええっと、第3とは逆で厳格な男社会で、それに反対するチーターが生まれてパメラさんは狙われて第3に逃げることに。好色男爵って人が女性を好き勝手にするような裏社会をつくる程にまでなり、それを兄が討伐・・・あ、いや、その・・・・・・」
「!!ほほう!お主の兄が、あのバロンを殺ってくれたのか?!ガハハハハハ!そりゃあいい!ガハハハハ!!」
ライトは思わず余計な事を言ったかと思ったが、マイオスの反応は意外にも好感触だった様子だ。
「・・・あ、もしかしてあのバロンって人、ここの反逆側の??」
「ああ、そうだ。あいつはセンター教の偉いさんの親族でな。わしらも手を焼いておったのじゃ。ここの女はみんな従順でな。それをいいことにあの下衆はこの第2までわざわざやってきて、放蕩の限りを尽くしておった。わしらは散々、上へ奴の悪行を申告するも親族の圧力しか掛からん。やれ反省文だの罰金だの、軽い刑だけで全く何にもならんかった。みんな”森流しの刑”にするべきだと言ってたんじゃが、センター教上部のバックアップがありながらと、そして反逆者どもとは意思意向、その思考が意気投合し共通している分、裏で繋がっていて奴の言う事であれば反乱軍も聴き耳を立てるという、誠に厄介な奴だったんじゃ。上も一部の人間も、奴が仲介者としての役割を持たせおって変に権力を持つことで誰も手が出せずにいたんだ。それを・・・お主の兄には、感謝しなきゃだのう」
「そうだったんですか。兄もみなさんにとっては本当に良い事をしたんですね」
「そうだ。・・・パメラのチーターの正体を教えてやろう」
「え?!は、はい!」
「そのバロンの息子じゃ」
「?!そうだったんですか!・・・あ、だから、マイオスさんは個人的にもバロン一家に恨みが・・・そして、将軍という肩書がありながらも手が出せず、パメラさんを第3へと送ることになったんですね?!」
「その通り。これも表向きはこのクソガキも『恋愛』だ『求婚』だの、綺麗事をぬかしておってな。周囲からも政略結婚や地位も安泰するだの言われたが、バロンの裏の顔を知っている者であればそんな綺麗事も政略だの言っておられん。しかし、その表向きを使われては無下に拒否すればわしらもここでの暮らしが危うい。なので第3での修行、勉強として送り込んだ。まだその時は幼かったというのに・・・・・・」
「・・・え、おいくつの時ですか?」
「確か・・・十才前後じゃったかの。そんなまだ幼子を下衆親子は狙いを付けおった。その意味が、分かるだろ?」
「なるほど・・・あ、因みにそのバロンの息子を暗殺したのも、兄のウェルバーです」
「!!なんと!?」
「兄は第3の元女帝、レイアさんと前から親密な関係でしたから、その側近の者たちとも仲が良くパメラさんからチーターの悩みを聞いて、速攻で暗殺してくれたとパメラさんから聞きました」
「・・・ガッ、ハッハッハッハッハッハー!なんじゃ、ではお主の兄はわしらの救世主じゃな!!ハハハハハハ!!」
豪快に笑うマイオスにライトは少し引いていたが、しかしただ単純に目の前でこんなに喜んでもらえる事は気持ちが良かった。思わずライトも顔に笑顔が溢れてくる。
「だからあの好色下衆野郎は、第3への遠征に拘っていたのじゃな?・・・気に入った!こんな所ではなんだ、わしの部屋に来い!お主はわしらの救世主の弟。同じようなもんじゃ!!ガハハハハー!!」
Devil's Forest Awakening
パメラ、マオリ、ナバホの三人はフォレスター達の集落へと戻ってきた。
ナバホは休むことなく無言でそそくさと村の奥へと去って行く。手には重そうな麻袋の底、内部から色濃い血がまだ滴っていてそれを見るとパメラはつい先ほどの光景を思い出し、胸から胃の内容物が込み上げてくる。
「お前の言葉、信ジル。奴ラ何トカシナイト大変。中、外、言ッテラレナイ。一緒ニ戦ウ」
「・・・うん」
パメラにはまだこれからどうなって行くのか、先の未来への実感が持てなかった。しかしフォレスター達は危機感を持っているようで、その緊張感はパメラにも伝わってくる。
センター教の教えとしては、何が在ってもCSタワーが守ってくれるという『タワー崇拝』が小さい時から言われ続けられた為に、タワーから一番遠いであろうこの地が不安でならなかった。なんとか意志を保てるのは、まだ休養中だがレイアとウェルバーが手の届く所に居るという信頼と自身の求愛があってこそであり、皆の回復と身の安全、先の未来よりもすぐ目の前の出来事の処理で精一杯な部分もある。
マオリはパメラに一言、言い残してからナバホの後を追うように去って行った。
パメラがみんなのいる小屋に戻ると、ウェルバーが目を覚ましていた。
「ウェルバー様!!」
急いで駆け寄ると、ウェルバーは笑顔で待ち構えた。
「ああ、パメラ・・・すまない、なんか、色々と迷惑をかけたみたいで」
どうやらセーラが経緯を説明をしてくれているようだった。
「いいえ!とにかく、ご無事でなによりです」
パメラの目には涙がもう、零れ落ちていた。つられてセーラも目に涙を浮かべる。
「ここの者にも、悪い事をしたみたいだね。・・・それに、レイア・・・・・・」
ウェルバーは愛おしい者を見る目と、心配な目をしてレイアを一瞬、見つめているいる。パメラにはその顔を見ることは直視出来ないでいた。
「レイア様も、まだ意識は戻っていませんが何とかお身体は大丈夫なようで、ご安心ください」
「ああ、聞いたよ。フォレスター達には感謝し切れないな。後でお礼と謝罪に行きたい」
「まだ、もう少し安静にしてて下さい。せめて、後一日ぐらい様子を見ましょう」
セーラがまるで主治医のように指示をする。それはしかし妥当とも言える立場であった。
「ああ、分かった」
「・・・で、パメラどうだった?第1の様子は」
「あ、えっとね・・・・・・」
パメラは改めてウェルバーに説明をするためにも、マオリとの会話やフォレスター達の状況、そして現状を伝えた。
「・・・そうか。事態はどんどんと広がっているな」
「ええ。その代わり、仲間も増えている。バラバラだったこの世界のみんなが、共通の敵を前にして団結していくかもしれない。そんな気もするの」
「だと・・・いいんだがな」
ウェルバーはこの世界の未来に、何を見ているのか。それ以上は語らずにまた眠ってしまった。
Colony Ⅱ Thought
「・・・よいかライトよ、私たちは決して女を卑下しているのではない。誤解だ」
ライトは熱弁するマイオスに圧倒されていた。
「できる事ならば男も女も平等に、同等に『可能であれば』したいものだ。しかし、現実にはどうだ?男が子供を生めるのか?力で女が勝てるのか?そこを否定するのはこの生命やら神やらに反するようなものだ。私たちは『守りたい』のだ。力が強い男が女を守る。大昔からそれで成り立っていたんだ。そうだろ?」
「あ・・・ええ、まぁ、そうですね」
ライトは現状の立場的にも、そう言うしかなかった。
「第3の現状もそうだ。一部の強い女”だけ”はそれでいいかもしれん。しかし大半の女性はまだ弱いんだ。肉体的だけじゃあない。精神的にも感情の制御が難しく、争いの火種は根深く燻ってしまっている。陰謀、暗殺、裏切り、謀反、主権争い・・・もちろん、ここでも第4でもそういった争いが無いなんてことは言わない。しかし、根深くは無いんだよ。分かるよな?」
「ああ、そこは分かりますね」
「我々がもし、ただの非人道的な思考であれば、まぁ、好きにしなさい、勝手にすればいいとすることは可能だ。見捨てて全てを自己責任で全うできるのならば、それでいいさ。しかしその末路がどうだ?恐らくは第8や第1のような結果となるだろう。それでいいのか?それが望みか??」
「いや、僕に言われましても・・・・・・」
「・・・ああ、そうだな、すまない。ついいつものクセでな」
いつも何をやっているんだろうか。そんな疑問がライトの頭に過った。
「ゴホンッ・・・ああ、そうだ。ライトよ、折り入って話があるんだが、その前にチェバラの奴の話をしなければな」
「!!はい!是非」
「結論から言おう。お前は上へ行け。チェバラも上に行ったと思われる」
「僕が?!しかし、どうやって・・・・・・」
「そこはまた改めて説明して行く。チェバラがここに来た理由までは知らない。ただここ第2の元代表と共に忽然と消えた・・・その原因がチェバラの可能性が出て来ておったのだ」
「!!!」
「今ではもはや未解決事件みたいなものだが急遽、選挙で今の代表を決定して色々とバタバタな展開でな。いつの間にかその事件も風化し、内乱もあってうやむやになりおった。しかし、まだ元代表を指示している者も第2の上にも居てな。一部ではまだその事件を追っている者もいる。なのでここではお主がチェバラの子だとう事は極力、申すなよ」
「は・・・はい、分かりました」
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