A34_「AIに定型業務を任せる」本当の意味は、暗黙知の言語化だった
AIに仕事を任せたのに、
結局自分で直すことになった。
そんな経験、ありませんか。
私も先日、まさにそれを6回繰り返しました。
夏休み明けの確認テスト。数学B、確率分布の単元。作問用に自分で育ててきたAIスキルに任せたら、出てきた問題は6回とも突き返しました。
正直に言うと、想定していた通りの展開でした。
定型業務は、AIに預けたい
年間を通して同じ型で繰り返す仕事があります。テスト作り、授業案の作成。教員の仕事は、こうした定型業務が積み重なっています。
ここ数年、こうした定型業務をできる限りAIに任せる土台作りを進めています。自分がすでにできる仕事はAIに下書きを作らせ、自分は完成度をチェックするだけの立場に回ります。そうすることで空いた時間を、もっと別のことに使いたいからです。
別のこととは、カリキュラムを大きく変えることです。地域の方々が魅力を感じる学校をどう作るか。連携や調整だけでは済まない、自分の集中力と能力を全部注ぎ込まないと成果が出ない仕事です。
こういう仕事に全力投球できる環境を作るために、定型で確立できているものはAIに任せます。これが今の私の基本方針です。
でも、「任せられる状態」を作ること自体が楽じゃない
ただし、任せる仕組みを作ることと、実際に任せられる状態になることは、違います。
今回のテスト作成スキルは、6月に2日ほどかけて作りました。過去に作った問題のレイアウトをAIに読ませ、LaTeXで再現できるようにし、配点の考え方もまとめて渡しました。
この時点で、「これでもう自動で回る」と思っていたわけではありません。テストを作るという工程が楽ではないことは、自分がこれまで手を動かして作ってきたからよく分かっています。
だから8月、実際の確認テストで初めて使ったとき、直しが必要になるのは当然だと思っていました。想定より多かったのは、それが6回になったことくらいです。
面白いのは、6回の直しのうち、レイアウトの崩れが原因だったものは一度もなかったことです。LaTeXの組版は最初から最後まで一度も崩れていません。
不十分だったのは、「作問の哲学」でした。知識技能と思考判断表現のバランス、前の小問を間違えると後ろも連鎖して失点する問題の配点の重みづけ、大問ごとの合計点のばらつき。そして最後に発覚したのは、配点を足し合わせると101点になっていたことでした。
配点は固定というルールは、スキルの参照ファイルにすでに書いてありました。それでも起きた。散文でルールを書くだけでは、再発を防げないと分かった瞬間でした。

今回だけ見れば、自分で作る方が早い
この6回のやり取りだけを切り取れば、自分で作った方が早かったはずです。知識技能と思考判断表現のバランスをどう取るか、連鎖失点をどう配点で調整するか。こうした判断基準は、もともと私の中にありました。それを一つずつAIに伝えていく作業に、結局は時間がかかっています。
それでも私は、この直しを続ける方を選びました。
一回の指摘は、貯金箱に硬貨を落とし込むようなものです。今日入れた1枚は、今日の生活を何も変えません。それでも半年後にふたを開ければ、そこには「二度と説明しなくていい判断基準」が積み上がっています。
自分が持っている暗黙知を言語化し、AIに渡していく。この作業を積み重ねることが、AIを自分の分身に近づけていく唯一の道だと考えています。
ここを飛ばして「それらしい出力」で満足すると、量産型の中身のない成果物、いわゆるAIスロップになります。今回だけ効率が悪くても、長い目で見れば分身能力への投資です。

すでに、別のところで回収できている
この投資が実際に回収できるのか。今回のテスト作成スキルについては、正直まだこれからです。でも確信を持てるのは、すでに別のスキルで回収を実感しているからです。
探究授業の指導案から、生徒へ説明するスライド、それを紹介する学校のnote記事まで、一括で作れるスキルを別に育てています。生徒が紙で提出してくる個票のデータを分析し、そこから個票を作る機能まで組み込みました。これが今、めちゃくちゃ役に立っています。
このスキルも、最初から完璧だったわけではありません。同じように何度も直しを重ねて、今の形になりました。テスト作成スキルも、同じ道をたどると考えています。
この土台作りの先に、やりたい仕事がある
定型業務をAIに任せる土台作りは、地味な作業です。派手な成果もすぐには出ません。
でも、この土台の上に、私が本当にやりたい仕事があります。カリキュラムを本気で作り変えること。地域の方々が魅力を感じる学校に、もう一段近づけること。これは、AIに任せられない仕事です。自分の集中力と能力を、全部そこに注ぎ込む必要があります。
今日も、AIが出してきたテスト問題を1問ずつ読み、直します。この積み重ねの先に、自分にしかできない仕事へ全力投球する時間があると、信じているからです。
6回目の直しを終えたとき、ふと思いました。私が本当に育てているのは、テスト作成スキルではなく、自分自身なのかもしれない、と。
あなたは今、AIに任せていますか? それとも、育てていますか?
人生の限りある時間を大切に。シンパクト和 でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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