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G29_総合探究×生成AI。GPTsを用意しても動けない生徒がいた、その理由

動けない生徒が出ることは、最初から分かっていた。

だから昨年は、専用のGPTsを用意して、授業の最初から使わせた。

それでも、何週間も白紙のままの生徒が、複数名いた。


昨年、何が起きていたか

総合的な探究の時間で、最初のつまずきは「テーマ設定」だった。

生徒が仮のテーマを決めるまでに、約1ヶ月かかった。

もちろん、生徒が怠けていたわけではない。

「興味あることは?」と聞かれても、探究テーマとして扱える材料を持っている生徒は多くない。そんなことは、授業を始める前から分かっていた。

だから昨年は、AIを使って材料を引き出すためのGPTsを事前に作り、最初から提供することにした。

生徒がキーワードや関心領域を入力すると、探究の「問い」と「研究動機」の例を5つ生成するというものだ。

でも、うまくいかなかった。

なぜGPTsは機能しなかったのか

想定はこうだった。

生徒が何かを入力する。AIがヒントを返す。そのヒントをもとにもっと情報を入力する。やりとりが続くうちに、自分のテーマが見えてくる。

完璧な材料でなくてよかった。
「なんでもいいから入れれば、AIが引っ張ってくれる」という期待があった。

でも、そうはならなかった。

最初の「なんでもいい」が、出てこない生徒がいたのだ。

AIはヒントを出せる。でも、入力がゼロのとき、AIは何もできない。

火打ち石はある。でも、火元になる枯れ葉がなかった。

問題はAIの設計ではなかった。生徒がAIに渡せるものを、まだ何も持っていなかったのだ。

もう一つの課題:支援の「型」がなかった

探究の授業では、約10名の教員が4つのクラスに分かれて指導している。

各クラスに2〜3名の先生がついて、生徒に声をかけながらサポートする形だ。

動けない生徒に、どう声をかけるか。どう問いを絞らせるか。どこまでが探究として成立しそうか。

これらの判断は、教員それぞれの体験や関心に頼った部分が大きかった。

総合探究の主担当なら、ある程度は勘所がわかる。でも、すべての先生が同じように支援できるわけではない。

生徒に足りなかったのは、やる気ではなく材料だった。

そして教員に足りなかったのは、熱意ではなく支援の型だった。


あなたのクラスにも、何週間経ってもテーマが白紙のままだった生徒が、いませんでしたか?


今年の設計思想:材料先行、AI後

昨年の反省から、今年は設計を変えた。

方針はシンプルだ。先に紙で材料を出す。その後でAIを使う。

AIに「いいテーマを出して」と丸投げするのではなく、まず生徒が自分の生活の中にある小さな違和感や困りごとを言葉にする。その材料をAIに渡して、問いを一緒に広げていく。

AIをテーマを出す道具ではなく、生徒の違和感を掘り起こす壁打ち相手として使うのが今年のコンセプトだ。

探究テーマは、いきなり立派な問いとして出てくるものではない。

最初は「なんか不便」「ちょっと気になる」くらいで十分だ。

2回の授業の設計

45分×2回の構成にした。

第1回:自分の材料を出し、生成AIで問いの候補を広げる

「思考の下書き用紙」を配布し、次の順番で進める。

A. 問いの形を見る
(「本当はどうあるべきか」→「今はどうか」→「なぜ?」→「どうすれば?」の順に考える型を先に確認する。いきなり解決策を考えさせない)
B. 自分の材料を探す
(「最近面倒だったこと」「部活で困っていること」「通学中に気になること」など10の切り口から思いつくものを書く)
C. なぐり書きスペース(単語でも短い文でもよい)
D. 1つだけ選んで整理する
E. 生成AIに入れる前のメモ
F. 今日の途中メモ

最初から完成を求めない。下書き用紙に材料が揃ったら、初めてAIを使う。

下書き用紙に何が書いてあるかが見えることで、主担当以外の先生でも「ここをもう少し広げてみよう」と声をかけやすくなる。これが、支援の型をそろえる仕掛けでもある。

生徒の状況に合わせて3種類のプロンプトを用意した。

  • 方向性はぼんやりあるが言語化できない → メモをもとにAIに一緒に深掘りしてもらうプロンプト

  • なんとなく興味があるものはある → 身近な自分ごとの課題に絞るプロンプト

  • 何も浮かばない → AIに1問ずつ質問してもらいながら探すプロンプト

第2回:問いを絞り、調べ方・試し方まで考えて提出する

前回の途中メモをもとに、AIとのやりとりを続けながら仮の論題を1つに絞る。

最後に5項目の提出フォームへ入力する。

  • ① 自分が気になったこと

  • ② 本当はどうなっているとよいか/でも今はどうなっているか

  • ③ 仮の論題

  • ④ 調べられそうなこと・小さく試せそうなこと

  • ⑤ まだ迷っていること

「まだ迷っていること」を入れるのが大事だ。迷いが見えている方が、次の指導につなげやすい。

これで正解とは思っていない

昨年の失敗から設計を組み直した。今年はこれで動かす。

各校でも、それぞれの工夫がすでに動いていると思う。

「うちはこんなアプローチで解決した」「生成AIをこう使ったら手応えがあった」——そういう話を聞きたいと思っている。

自分のやり方がベストとは思っていない。 もっといい方法があれば、ぜひ教えてほしい。


探究テーマの「決まらなさ」は、生徒の問題だったのでしょうか。
それとも、支援の型がなかった私たちの問題だったのでしょうか。


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