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「イクメンですね」って言われた日の話

「イクメンですね」
その一言、
なんでこんなに引っかかるんでしょうね。

褒められてるはずなんです。

悪気なんて、たぶん一ミリもない。

なのに、素直に
「ありがとうございます」って言えなくて、
変な愛想笑いだけが顔に貼りつく。

あの感じ、わかる人にはわかると思います。


先週、
パパ友経由で知り合った
Aさんと立ち話をする機会がありました。

世間話の流れで、
「そういえば、先週末、娘と二人でお出かけしたんですよ」って
何気なく話したら、

「わー、イクメンですね」

って、まっすぐな笑顔で言われました。

正直に言うと、
一瞬、ちょっと嬉しかったんです。

認めます。

娘と手をつないで歩いただけで
褒められるなんて、
こんなに割のいい仕事があるかと。

心の中でガッツポーズしかけました。

でもその0.5秒後くらいに、
じわっと嫌な感じがきたんですよね。

だって、
その「お出かけ」って、
私にとっては特別な行事でも何でもなくて。

お妻さまが毎週、
当たり前の顔でやってることを、
私はたった一回やっただけなんです。

お妻さまは平日、
娘を送り出して、
迎えに行って、
習い事に連れて行って、
それを誰にも「すごいですね」って
言われたことがないんですよね。

少なくとも、私は聞いたことがない。

「いやいや、そんな大したことじゃないですよ」

そう言いながら、
頭の中では別のことを考えていました。

この「そんな大したことじゃない」を、
お妻さまの日常にも
同じ温度で言えているだろうか、って。

家に帰って、
娘に「今日パパ、イクメンですねって言われたよ」って
冗談っぽく言ってみたら、

「イクメンってなに?」

と、テレビを観ながら一瞬こっちを見て、
またテレビに戻っていきました。

子どもってこういうとき、
こちらの期待に
まったく付き合ってくれません。


その夜、
お妻さまには結局この話をしませんでした。

言おうとして、
一回口を開きかけて、
でもうまく言葉が見つからなくて、
そのまま「お風呂沸いた?」とか
別のことを聞いてしまいました。

なんて言えばよかったのか、
今もちょっとわかりません。

「イクメンって言われて複雑だった」
なんて言ったところで
「じゃあ言わなきゃいいのに」って
返されそうな気もするし。

かといって黙っているのも、
なんだかフェアじゃない気がするし。

ソファでくつろいでいる
お妻さまの後ろ姿を見ながら、
なんとなく席を立って、
シンクの前に立ちました。

そして、何も言わずに
洗い物を始めました。

これでバランスが取れるとは、
まったく思っていません。

ただ、
何も言えなかった分だけ、
手を動かしておきたかったんだと思います。

たぶんまた同じことを言われたら、
同じように愛想笑いをして、
同じようにモヤモヤして、
家に帰ってくるんでしょうね。

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