こんにちはの先に、もう一言
朝、いつもよりゆっくり起きた。
今日はレッスンがない。
パソコン作業をして、図書館へ借りていた本を返しに行く。
今日こそ司書さんに「こんにちは」以外の言葉を交わすぞ、と思いながら階段をのぼる。
カウンターには、眼鏡をかけた司書さんがいた。
「こんにちは。本を返しに来ました」
本を渡す。
そのまま終わりそうになる。
「今日もいい天気ですね」
言えた。
「ほんとですね。暑いのが終わってほっとしますね」
「暑くも寒くもなくて、気持ちいいですよね」
「ほんとに。ふふふ。はい、返却確認しました」
図書館を出て、弾むように階段を降りた。
やった。
一言、加えることができた。
こんにちはの先に、もう一言。
それだけのことなのに、ずっとためらっていたけど、今日はその一言が言えた。
家に帰って、少し仕事をしてからショッピングモールへ向かった。
友達の子どもの誕生日がもうすぐで、プレゼントを選びに来た。
去年から文通をしている子だ。
あれこれ見ては、立ち止まる。
シール帳、キーホルダー、ふわふわのペンケース。
どれがいちばん喜んでくれるだろう。
雑貨屋さんで、小さなぬいぐるみを見つけた。
手のひらサイズで、ころんとしてかわいい。
隣には、ポンチョやベッド、ソファが並んでいる。
かわいいなぁ。
よし、これにしよう。
ラッピングをしてもらって、バッグにしまった。
帰りにリンドウとトルコキキョウを買って、家に帰った。
まだ六時なのにリビングは真っ暗だ。
日に日に太陽が沈むのが早くなる。
季節の変化に気持ちが追いつかなくて、
不安と心細さが、ふとした隙間に入り込む。
揺れている自分を感じながら、お風呂に入った。
