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帰っていくところ

朝、窓を開けて歯を磨いていたら、
どこからか、卵焼きの甘じょっぱい匂いが流れてきた。

卵焼きは出汁か甘い派か、とよく話題になる。
私は子どもの頃からの甘い卵焼きがやっぱり好きだ。

レトルトばかりで家庭の味なんてないと思っていたけど、
父が作る甘い卵焼きや、ポテトサラダ、
おむすび山の青菜のおにぎりは、気づかないうちに私をつくってきた味だった。

洗面所に行くと、今度は焼き魚の香りがしてくる。

誰かの家庭の味が、今日も変わらずそこにあるんだと思うと、胸があたたかくなる。


瞑想をして、ヨガをする。
今日は少し息がつかえている気がする。

ふーーー。

口からゆっくりと吐く。
吐くほどに、自然と息が入ってくる。

何度か繰り返すうちに、
からだの奥が少しずつゆるんでいく。

肋骨が広がり、肩甲骨のあいだがひらいていく。

あぁ。気持ちがいい。
深まる呼吸に身をゆだねた。


お昼は、桜エビと大豆ミートを白菜と青ネギで炒める。
桜エビの香ばしさが立ってきて、木のしゃもじを手に取る。

本来はご飯をよそうものだけど、
このなだらかなカーブと手に馴染むやわらかさが好きで、つい調理にも使ってしまう。


残りの高野豆腐と、さつまいもとなめこの味噌汁と一緒にいただく。

冬の野菜は、食べるとからだの奥がゆるんで、ほっとする。
しみじみたくさん食べた。


そのまま机に向かって、水入れとパレットを広げる。
新しい水彩紙を試してみると、
水がふわっとひろがって、思いもよらない模様になる。
そのゆらぎがおもしろくて、何枚も描いた。



夜、お風呂でからだを洗っていたら、
ふと胸のあたりがひんやりしていることに気づいた。

湯船に浸かったばかりなのに。
手をあてると、どくどくと心臓の音が聞こえる。

あぁ、生きてる音だ。
そう思った瞬間、
「からだから離れたくない」という気持ちが、
切なさと共に内側から湧き上がった。

最近、ホームページの更新などで、
気づけば意識が外に向きやすくなっていたのかもしれない。

もう一度、からだとつながりなおそう。

お風呂から上がり、胸のあたりに意識を置き続ける。
からだをほぐしたくなって、マットをひく。

朝よりずっと呼吸が楽だ。
穏やかな胸の中に、小さな風が流れている。
そこに止まる。

呼吸に帰っていく。
私自身に帰っていく。
すべてが存在しているところへ。


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