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手元にたぐり寄せる

朝。やることも締め切りも重なって、
気ばかりが前へ前へと進み、胸が苦しい。

息を吐くと同時に
「あぁぁぁあーーー」と低いうめき声がでる。

「また変な声して」
パートナーからも指摘された。

意識を足裏に向ける。
張りのある床の固さが伝わってくる。

周りの空気を感じる。
からだの中も外もおだやかな流れがある。
忙しいのはこの小さな意識の塊だけだ。

その流れの中に戻るように力を抜くと、背中がゆるみ、腹の奥がしっかりと落ち着いてきた。


それからレッスンを一つして、パソコン作業をした。

お昼はパートナーが作ってくれたシーフードカレーとサラダを食べる。

ココナッツミルクのやさしい甘さと
スパイスの風味が鼻に抜ける。
えびのプリっとした食感がたまらない。

食べ終わるのがもったいなくて、
一口ずつ、ゆっくりと味わった。

パートナーが言う。
「エビが1パック800円、帆立が500円で…大体これ一皿で500円くらいで食べられるんだね」

「500円でこんなに美味しくて豪華なんて、すごいね。」

彼はとっくに食べ終わっているのに、
私が食べ終わるまでテーブルに残って、
とりとめない話をつないでくれるのが嬉しい。


午後のレッスンの終わり頃、横向きに寝ころがる生徒さんたちを、画面越しに見つめる。

丸みを帯びた背中を見ていると、
それぞれに抱えてきたものが見えてくるようだった。

「呼吸へと意識をむけて。ゆっくりと息を吐いて」
そっと声をかける。


午後の仕事をひとしきり終えて、
遠くに青みが残った夕日を見ながら、居酒屋へ向かう。

今日は月に一度の夫婦mtg日。

自分のこと、相手のこと、二人のこと。
それぞれ話して、聞き合う時間だ。

小さなお店の角のテーブル席にすっぽりと収まって、
おつまみと飲み物を片手に、ゆるりと始める。

仕事でやらかしたこと、
甘え方や守られ方のこと、
瞑想のたのしさ、
体調のこと、
そして、二人の時間について。

「最近のひとみはいつも忙しそうじゃ。
二人の時間があんまりないけん。
ちょっと寂しい。ほんと、少しじゃけど」

パートナーが照れくさそうに話す。

そうだった。
最近はやりたいことに夢中になりすぎて、
一緒の時間をほとんど作れていなかった。

「ほんとだ。寂しくさせてごめん」

そこから、
これからの時間のことを、二人で話した。

一緒に暮らしていると、
気づかないうちに時間は流れ続けていく。

「そんなに大したことではないけれど、ちょっと気になってること」を伝え合うこと。

立ち止まって、今の位置を確かめ合うこと。

そのたびに、
大切なものをもう一度、手元にたぐり寄せられる気がする。

帰り道、手をつないで歩く。
大きなあたたかい手が、愛おしかった。






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