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からだの声に従う日

朝、目が覚めたら喉が痛い。

からだの内側を見つめると、頭が鈍く重く、背中もこわばっている。
起き上がってリビングに行くと、パートナーも咳をしていた。

「もしかして風邪ひいた?私も喉痛いんだよね」

「おー同じだ。朝から咳が止まらん」

二人揃って風邪をひいたみたいだ。

「風邪には気をつけましょう!」
そうおどけて言って、パートナーは仕事に行った。

念入りにうがいをして、瞑想へ。
呼吸法を入れて、からだのバランスを見る。
背骨の内側に沿って、息の通り道をなぞった。


Zoomの画面を開いて、生徒さんを待つ。
「そろそろかな」そう思ってスマホを手に取った瞬間に、強い揺れが来た。

ガタガタガタ。

楽譜が落ちて、写真立てが倒れる。

周りの音が急に鮮明になる。
からだが一気に外の気配へひらいていく。

二度目の大きな揺れが来て、部屋の扉を開けた。

大丈夫だろうと思う自分と、
危ないかもしれないと焦る自分がいる。
変に大げさに身構えるのは恥ずかしいという気持ちもある。

ぐちゃっと混ざって、こういう時にどうしていいか分からなくなる。
手にしたままのスマホがやけに重い。

画面の向こうに生徒さんが現れた。

「遅くなってすみません。WiFiがうまく繋がらなくて。地震大丈夫ですか?」

「うん。まだたまに揺れてますけど大丈夫ですよ。体調はいかがですか?」

レッスンが始まると、意識が今に戻ってきた。
役割があると、人は迷いに飲まれにくいのかもしれない。

夜、熱めの湯をためて、お風呂に入る。

熱が肌を刺す。
なのに、からだの奥まであたたかさが届かない。

ふーーーーー。
口からゆっくり息を吐く。
最後の一滴まで、吐き終わりを見届けていく。

何度か繰り返すと耳の後ろに汗が伝ってきた。
滞りがほどけていくのを感じる。


シャワーを浴びる。
水の流れの一筋一筋を追い続ける。
顔から肩へ。背中からお尻。
太ももから足先まで、あたたかさが流れていく。

伝うものに意識を向けていると、輪郭が薄くなる。
ただ同じように、流れていく。


最後は、いつものように水シャワーを浴びる。

蛇口に手をかけたまま、一瞬迷う。
どうしようか。

からだに聞くと、答えは、浴びたい、だった。

頭から水をかける。
息が浅くなり、頭と肩がじんじんとしてくる。

冷たさの奥にある静けさが、からだを覆っていく。

お風呂から上がるころには、頭の重さが少し抜けていた。


部屋の窓を開け、カップにお湯を入れて、
ラベンダー、ホーリーフ、レモンをたらす。

湯気にのって、香りがやさしく広がる。

目の上にあずきカイロをのせて、横になった。

風邪は私にケアすること、からだの声を聞くことを思いださせてくれる。

電気を落とすと、目の上のあずきカイロがじんわり重く、息が胸の奥まで下りてきた。



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