お茶を点てて、視界が明るくなる
朝、ヨガと呼吸法をじっくりやる。
溜まっていたメールを勢いよく返し、
そのままパソコン作業をしていたら、あっという間にお昼になっていた。
インスタで見て、作ってみたかった秋の混ぜご飯を作る。
きのことさつまいも、切り干し大根、鮭を重ね煮の手順で炊き、温かいご飯に混ぜる。
お茶碗に盛って、ごまと大葉をふる。
なめこと大根おろしの味噌汁、
残っていた甘長とうがらしの炒めものと一緒にいただく。
もりもり食べて、味噌汁とご飯をそれぞれおかわり。
お腹いっぱいだ。
午後、Amazonから荷物が届いた。
ダンボールを開けると、ミニキャンバスとパレットナイフ、画材、それから茶筅と茶杓が出てくる。
絵を描く道具と、お茶を点てる道具が一つの空間に混ざっているのが、なんだか自由でおもしろい。
茶道というと、いろいろなことに通じていないとできないものだと思っていた。
けれど少し前に読んだ本で、暮らしの中で気軽に楽しんでいいのだと知り、やってみたくなった。
キッチンに立って手を洗い、やかんにお湯を沸かす。
茶碗がないので、食器棚を探して、口の広いベージュのスープカップを見つける。
よし、今日はこれにしよう。
スープカップに茶筅を入れて、お湯を注いで少し待つ。
茶筅がやわらかくなって、泡が立ちやすくなるらしい。
その間に茶杓で抹茶粉を一杯すくい、抹茶ふるいに入れて、竹べらで漉す。
よし、いい感じ。
スープカップのお湯を捨て、抹茶を入れて、お湯を注ぐ。
茶筅で泡立てる。
脇をしめて、手首のスナップをやわらかく。
あ、そうだ。茶筅を垂直に立てて、mの字を書くように。
頭に入れたばかりのことを一つ一つ思い出しながら泡立てていると、
だんだん泡がきめ細かくなって、きれいな薄緑色になった。
点てた抹茶を持ってテーブルへ移る。
自然と背筋が伸びる。
両手でカップを持って、口に含む。
思ったよりも苦くなくて、やわらかな甘みが広がる。
おいしい…。
からだの奥がゆっくりほどけて、清らかなものが流れていくような気がする。
できた。
私にもお茶が点てられた。
小さな達成感とおいしさを味わいながら、
知らないうちに、自分で枠をつくって、遠ざけているものがあるのだと思う。
これはプロでないとやってはいけないとか、
才能がある人だけのものだとか。
積み重ねた知識や経験によって、同じことをしても見える景色は違うだろう。
それでも、体験そのものは、誰にでも開かれているのかもしれない。
まだほんのり温かいカップを両手で包みながら、
視界が少し広く、明るくなっていく気がした。
