鳥の鳴き声はやんでいる
朝、布団の中でまどろんでいると、遠くから鳥の声が聞こえる。
鳥から見える今日の朝は、どんなものなんだろう。
私は私に見えている朝の中で、今日も一日を始める。
起き上がって窓を開け、座ったまま肩まですっぽりと毛布を巻きつける。
からだは温かく、ぬくぬくとして、頬にはひんやりと冷たい空気があたる。
目を閉じて、内側へ意識をつなげる。
レッスンをして、少しパソコンに向かったあと、
お昼に近くの揚げ物屋さんへ行く。
カウンターだけの小さな揚げ物屋さんは、お昼どきでほぼ満席だった。
注文伝票がずらっと並び、おとうさんもおかあさんも無駄のない動きで次々と仕上げていく。
そんな中でも、
「なす、熱いからね。気をつけてね」
「ご飯足りる? おかわりできるからね」
と、ひとりひとりへの声かけを欠かさない。
お客さん同士も自然と譲り合う。
離れた席が空くと、さっとずれて、待っていた二人を並んで座れるようにしていた。
この小さな空間をみんなで気持ちよく保っているようで、座っているだけの私も、その一員になっている気がする。
白身魚定食が、目の前に置かれる。
揚げたての白身フライに、たっぷりのタルタルソース。
キャベツとおしんこ、山盛りのごはんと、あつあつのお味噌汁。
うまい。
からだの中からエネルギーが湧いてくる。
午後、レッスンを一つ終え、抹茶を点てる。
しゃかしゃかと茶筅を動かしていると、薄緑色のきめ細やかな泡が浮かび上がる。
黒糖のかけらと一緒に、ゆっくり飲んだ。
ぬくもりの残るコップを両手で包む。
手のひらがあたたかい。
そのぬくもりが、指先まで伝わっていく。
行き過ぎていた気持ちが、ぴたっと今に戻ったような気がした。
夜、ピアノを弾いて、絵を描いて、最後のレッスンを終える。
お風呂のあとに、目を閉じてからだが自然と動き出すのに任せる。
骨盤がぐるぐる大きくまわり、背骨がぐねぐね左右に動く。
できるだけ意識を小さくしていく。
何も意図せず、何も考えず、
ただ起こることが起こるように。
からだの熱が上がっていく。
鳥の鳴き声はやんでいる。
