もやもやが、ZINEになった朝
朝、いつもより早く目が覚めた。
スマホを開いて、昨日のLINEをもう一度読む。
家族から、からだの具合について書かれた文章。
ただの近況のはずなのに、読むと胸のあたりが曇って、気持ちが尖る。
これが友人や娘からだったら、もっと自然に心が寄っていくのに、それがうまく起きない。
この苛立ちは、どこから来るんだろう。
友人に相談してみようか、それともChatGPTに聞いてもらうか。
指がスマホの上で漂う。
いや、一度感じてみよう。
スマホを閉じた。
すぐに理由を明確にすることも、話してスッキリすることもできる。
けど、そうではない道があることを私はもう知っている。
目を閉じて、からだの中を感じる。
みぞおちの奥に、もやっとした重たさ。
頭の方には、きゅっと力んだようなもの。
「あ、どうぞどうぞ。まあ、座って」
それらに居場所をつくるように、やわらかく感じる。
否定せず、どうにかしようとせず、一緒にいた。
すると、ふいにZINEづくりのことが浮かんだ。
ページ数とサイズを決めよう。
そう思った次の瞬間には、机に向かっていた。
手元にあったZINEや冊子を定規で計り、
自分のエッセイの文字数を数えて、サイズとページ数を決める。
いいなと思っていた本の奥付を開き、印刷会社をパソコンで調べた。
製本の仕方、入稿形態……知らない言葉ばかり。
見積もりフォームに並ぶ項目を一つずつ調べてはメモをして、
紙質のことと、見積もりをお願いできないかを書いて送った。
あれだけ、どこから手をつけたらいいか分からなかったZINEづくりの一歩が、ドミノが倒れていくみたいに次々と進んでいった。
素人が印刷会社に連絡をするなんて恐れ多いと思っていたし、ずっと途方にくれていたのに。
もやもやを感じ切って、机に向かって一時間。
もう、今できることは全部終わっていた。
もやもやの内容とZINEづくりは、直接の関係はない。
けど、停滞していたエネルギーがほどけて、形を変えて流れ出したのだと思う。
LINEはきっかけにすぎない。
溜まっていた力が、からだの引っかかりに触れて動き出した。
その引っかかりを追い払わずにいると、エネルギーは固まった感情をほどいて、原型に近い力に戻っていく。
「苛立ち」という仮の姿がほどけて、別の質に変わり、
滞留していたものは、からだが行きたかった方へ流れ出す。
今回はそれがZINEだった。
思考を越えて、思いもしなかった方へ運ばれていく。
それが、からだを感じることのギフトだ。
パソコンを閉じて、大きく伸びをした。
窓の外は明るく、空気が少しだけ新しくなっていた。
