下は上で、裏は表
朝、目を閉じて瞑想をする。
内側の捉えようのない空間に入ると、前後左右の感覚がなくなって、どっちが上でどっちが下なのか、自分が今どの位置にいるのか分からなくなる。
すると思考が動き出す。
これはどういうこと?
今何が起きてる?
把握しようとしたとたん、空間からほんのわずかにずれてしまう。
問いに答えないまま、また空間に漂う。
終わりを感じて目を開けると、二時間近く経っていた。そのまま机の前に座って紙とえんぴつを出す。
どうしたらもっと内なるものを絵で表現できるんだろう。今の状況を一枚の絵にしてみたら…。
雑紙の裏に枠を描く。意識は内側に置いたまま、えんぴつの動きを腕に任せる。
えんぴつの芯から、乾いた石のような匂いが時折鼻をかすめる。
出来上がった絵を見ると、涙を流す黒い丸を中心に、黒い海が下の方に広がっていた。
細長い四角が十字のように重なり、竜巻のような下向きの渦が、黒い丸を押さえ込んでいるように見える。
どこにも行き場がない感じ。窮屈さ、暗さ、重さ。
あぁ、私、自信がないんだ。
そういえば子どもの頃から、態度は大きいのに人一倍気は小さかったっけ。
気の弱さ、自信のなさ。そこにとどまって味わう。
胸の真ん中に重く尖ったものが張り付いている感じがする。
両腕で自分を抱きしめると、さらに深く食い込み、痛みが増す。
私にできるのは感じることだけ。
すべてを感じ切ったあと、必要なことは必要な時に自ずと現れる。
ふと何かが気になり、絵を手に取る。横にして、それから逆さにしてみた。
逆さにした絵をじっと見る。
渦は上向きになって黒い丸を下から押し上げ、涙は雨に変わり、大きな空から降り注いでいる。
下にあった細長い十字は斜め上になり、行く先を示す道標みたいだ。
黒い丸が、上からも下からも支えられている絵になった。
恵みの雨。上昇するエネルギー。
力を抜いて、この運命に任せればいい。
そう絵が教えてくれているようだった。
下は上で、裏は表。
どちらも同じところにある。
逆さにした絵をもう一度ひっくり返す。一番はじめに描いた位置に戻ったけど、もうしっくりこなくなっていた。
逆さに戻して、机の上に立てかけた。
