嫌われたくなくて自分を曲げた40代が、孤独を怖くなくなった夜のこと
本音を殺すたびに、
少しずつ自分が死んでいった。
今日もスナックゆきで、一杯だけ頼んだ。
スプリングバンク5年にした。
奮発した。
複雑で、一言では言い表せない。
でも飲むほどに、 何かが見えてくる酒だ。

YouTubeを見ていたら、
CMが流れてきた。
「やりたいことをやろう。
本当に好きなことをやろう。」
画面を止めた。
自分が本当にやりたいことって、何だろう。
考えた。
何も出てこなかった。
私は40代の会社員 佐久間浩一。
大手企業で広報を20年以上担当してきた。 一度起業して失敗し、会社に出戻った。 それでも諦めず、40代から書き始めたエッセイが、 同世代の男性から 「自分のことを書かれているようだ」と 言われるようになった。
それなりに、 いろんなことをやってきたつもりだった。
でも、その夜は、 何も出てこなかった。
3年前までは、
一人でいる時は平気だった。
でも、ふとした瞬間に、
周りの人と自分を比べていた。
友達の集合写真がSNSに流れてくる。
誰かの結婚の報告が届く。
思い出したように、
寂しさが来た。
若い頃はもっとひどかった。
嫌われたくなかった。
ただ、それだけだった。
だから本音を言わなかった。
「わかった」と要求を飲んだ。
無理をして、毎日頑張り続けた。
友人に、彼女に、職場の人間に。
そうやって、
自分を曲げ続けた。
本音を殺すたびに、
少しずつ自分が死んでいった。
気づいた時には、
自分が何をしたいのか、
わからなくなっていた。

周りに人がいても、
孤独だった。
いや、違う。
偽りの自分でいたから、
孤独だったのだ。
嫌われたくなくて自分を曲げた結果、
周りに人がいても、
ずっと孤独だった。
あなたは今、本当の自分でいられていますか。
それから、
小さなことから始めた。
でも最初の一歩は、
思いがけない場所からやってきた。
ある夜、ママに言われた。
「ウフフ、、あなた、 大きくなったら何がしたいの?」
答えられなかった。
40代になって初めて、
自分の心に向き合った気がした。
自分が何をしたいのか。
何をしている時に、
時間を忘れるのか。
そこから少しずつ、
自分の意見を言うようにした。
会議で、少しだけ本音を言った。
ランチで、自分が食べたいものを選んだ。
たったそれだけのことだった。
でも、少しずつ、
自分の声が聞こえてくるようになった。
気づけば、
書くことが好きだとわかった。
書いている時間は、
孤独じゃなかった。

今は、
孤独が怖くない。
孤独が怖かったのは、
自分がいなかったからだ。
今の私にとって、
孤独よりも怖いのは虚無感だ。
好きなものがなくなり、
何をやっても空っぽに感じる、
あの感覚。
だから今は、
「浸り力」を鍛えるようにしている。
心から好きなものに、
とことん没頭する力のことだ。
小説を読む。
映画を見る。
文章を書く。
没頭している時間は、
一人でも孤独じゃない。
今noteを書いているこの瞬間を楽しんでいる。
ただ、それでも寂しさが突然くる時もある。
猛烈な寂しさが来た時は、
「ああ、寂しいな。 めいいっぱい味わってやろう。」
と思うようにしている。
寂しさがあるから、 何かを吸収しようとする。
孤独は、
敵じゃない。
自分を取り戻すための、
静かな時間だったのかもしれない。
たぶん、だけど。

スプリングバンクをもう一口飲んだ。
複雑で、一言では言い表せない。
でも飲むほどに、 何かが見えてくる。
孤独も、
そうかもしれない。
たぶん、だけど。
グラスが空いた。
今日はここまでにする。

はじめてスナックゆきに 来てくれた方へ。
私がどんな人間で、 なぜこのエッセイを書いているのか。
よかったら、読んでいってください↓
よかったらこちらも↓
