【小説】疲れたSS(スクリーンショット)SIerは世界を救えるのか?#1
異世界への旅立ち
今、私の目の前には、中心に大きな壺を持つ女神像をたたえた、直径3mほどの泉がある。ご丁寧にも、女神像が「あ、そーれ」というようなポーズで持っている壺からはちょろちょろと水が出ていたりする。泉に流れ込んだ水は虹色に光っており、泉の淵から虹色の気体になって霧散しているようだった。
泉の向こう側には、これまたご丁寧にパルテノン神殿のような大層厳かな神殿調の建物が建っている。足元には石畳の道があり、泉の周りをぐるっと一蹴した後、パルテノン神殿調の建物へと続いている。
「これは・・・神殿に行けってことですかね?」
私は何となくひとりごちる。
石畳の道を歩き泉に近づくと、泉の水の中には何やら泳いでいることがわかる。よーく目を凝らしてみると、それは羽が生えた鯉のような生物だった。それがうじゃうじゃいる。
「わっ」
と思わず私は叫んだ。
「こ、これは、、、天使ならぬ天魚??」
無表情に泉の中を泳ぎ回る天魚をぼーっと見つめ、私は何となく「あー、私は死んじゃったんだな」と思った。思い返してみれば、IT系の会社に就職が決まったものの、華々しい業務ではなく、お客様のためにせっせと業務マニュアルを作成し、IT機器を管理する毎日だった。
「あー、こんなことならヒマラヤンのマトンカレーをもっと食べておけばよかった・・・」
「アシュトンのケーキももっと食べたかったし」
「ターフィーズのチーズプレッツェルももっと食べておけばよかった。。。」
なぜか思い浮かんできては公開するのは食べ物のことばかりだった。
あーもうこんちくしょー。などと思いを巡らせていると、どこからか声が聞こえてきた。
「おーい、はよ来てくれんかのー?待っとるんじゃがwww」
私は「はっ」と我に返った。声は・・・神殿のほうからする?そう思うと再び
「そうじゃ、そうじゃ、はよきんさい」
という声が聞こえた。もう少し食べ物に思いをはせていたいのはやまやまだったものの、とりあえず声がする神殿のほうへと歩いて行った。
神殿に入ると、入り口からまっすぐ行った祭壇?ステージ?のようなところに一人の老人がたっていた。私はてくてくとそこまで歩いていく。
「あのー」
私が口を開きかけると、それを遮るように老人がしゃべりだした。
「そうじゃ、お前さんが考えている通り、私は神だ」
いや、思ってないし。
「ただし、お前さんが住んでいた世界とは異なる世界の神じゃ」
え?
「お前さん、前の世界で死んでしまったようでの」
あ、やっぱり?
「お前さんのところの神と交渉して、わしんところの世界で活躍してもらうことにした」
勝手だなぁ・・・
「というわけで」
どういうわけだよ!
「お前さんは、わしの世界に転生してもらう」
わぉ、いきなり異世界ものですか?!
「とはいっても」
はいはい、
「いきなりわしの世界に放り込むんでも大変じゃと思うので」
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 神フラグ?
「わしからとっておきのスキルをプレゼントしようと思う」
んー、ベリーグッド、ウェルカム!
「わしの世界に降り立つとともに、プレゼントしたスキルが使えるようになる」
定番展開よね
「わしの世界で目覚めたのち、ステータスと言ってみよ。スキルが確認できる。」
思った通り!
「何か質問はあるかの?」
質問がないわけではない。いきなり異世界転生と言われて「はいそうですか?」と受け入れるのは正直難しい部分もある。しかしこうなってしまったものはしょうがない。これを受け入れていくのだ。今までそうやって何社もの派遣先を乗り切ってきたのではないか。それに比べたらなんてことはない。会社が変われば文化も変わる。会社が変われば世界も変わる。雇用主がこのおじさんになったってことでいいじゃないか!
「しかし、お前さん。心の中でよーしゃべるのー。全部聞こえとるんじゃ。しかも、おじさんではなく神様じゃよ。」
「しかしまぁ、なにはともあれ、受け入れてくれたようじゃから、わしの世界に転生してもらうことにするぞ。」
そういうと、おじさん(自称神様)は、杖を振った。
「おじさんじゃなくて、神様じゃー・・・」
という声が頭の中に鳴り響いていたかと思うと、次の瞬間私はうっそうと茂った森の木々の中に立っていた。
私は自分の手、足をしげしげと確認する。どうやら元の世界の時の姿とほとんど同じ姿で転生したようだ。痛いところは・・・ない。大丈夫そうだ。
と、ここまで確認してみたところで、私はステータスを確認してみることにした。
「ステータス」
いうと、目の前に青白いウィンドウが浮かぶ。
ステータス
名前:藤澤 若葉
レベル:1
職業:SIer
生命力:12 / 15
魔力:10 / 10
力:2
体力:5
素早さ:3
知恵:2
運:1
経験値:0 / 10
スキル:SS
攻撃力:1
防御力:3
武器:なにも装備していない
頭:異世界のヘアゴム
体:異世界の服
足:異世界のスカート
靴:異世界の靴
ん、まぁ、3徹くらいならいけるんで体力自慢ではあったけど、いざ数字で体力高いってのを見ると「私の女子力どうなの?」と思ってしまう。
それよりもスキル。SSだって!SSランクのスキルってことかな?さすがおじさん、いい仕事するぅー。でも、スキル名がないなぁ・・・
などと思いつつよーく目を凝らしてみると、一つ発見が。
スキル:SS(スクリーンショット) Lv1 0 / 10
んーーーー、スクリーンショットですか?確かにマニュアル作成のために画面のスクリーンショットは鬼ほどとったんだけど。え?でもスクリーンショット??
てゆーか、この世界はどういう世界?普通の異世界転生ものだと、ファンタジー世界の冒険が多いと思うんだけど、まさか荒廃した高度科学文明の世界でロボット兵とかが襲ってくる感じ?
などと考えていると、前方からやたらとねばねばした透明な物体が近づいてきた。
「こ、これはまさか、スライム!?」
そうこう考えているうちにもスライムはこちらに近づいてくる。そして2mほどのところで止まったかと思うと、体を震わせ始めた。
と思うと、体を一瞬膨らませたかと思うと急激に細くなり、細くなったかと思ったら、何やらこちらに飛ばしてきた。私はあわててよける。
「わわわわわ。。。」
運よくよけたものの、液体がかかった地面を見ると、地面に生えていた草がジュワジュワ言いながら煙を出している。
「これは・・・いわゆる酸を飛ばす攻撃ですか?」
つぶやきながら、体制を整える。
とはいえ、こちらは素手。スキルもスクリーンショット。どないせい?と思いつつもとりあえずスキルであるスクリーンショットを試してみようと思う。私は右手を前に突き出し、
「スクリーンショット」
とりあえず叫んでみた。
しーん。。。
何も起こらない。
「ぴぎゃー、あほー、神様のばかー」
私は叫びながらスライムから距離を取る。
スライムが再び酸を吐くモーションに入った。私は破れかぶれになりつつ再度叫びながら酸をよけた。
「スクリーンショット」
何とか酸はよけた。
そして、どうやらクローズするまで開きっぱなしのステータスウィンドウの中で変化が起きた。
スキル:SS(スクリーンショット) Lv1 1 / 10
New 酸(弱) モーション 1 / 3
私はこの結果から考えをめぐらし、ある仮設に至った。スクリーンショットとはスキルの発動モーションをキャプチャすることで自分のスキルにできるスキルではないか?
そして再び、スライムが酸を吐くモーションに入ったとき、先ほどとは違うタイミングで叫んでみた。
「スクリーンショット」
ステータスにはまたもや変化が。
スキル:SS(スクリーンショット) Lv1 2 / 10
酸(弱) モーション 2 / 3
おおう。思った通り。ということはあと1回で酸(弱)をひとまずは覚えるはず。私はタイミングをはかり、再度スライムが酸を吐くモーションに入ったときに叫んだ。
「スクリーンショット」
叫ぶと同時に音がした。
「ピロリン」
そしてみるとトーストメッセージが。
「酸(弱)を完全にキャプチャし、習得しました。」
ステータスに目をやる。
スキル:SS(スクリーンショット) Lv1 3 / 10
酸(弱) Lv1 0 / 10
キタコレ。ステータスを確認すると同時に、私は右手を前にかざし再び叫ぶ。
「ダークアシッド」
手から液体が飛び出し、スライムに命中した。スライムは輪郭がやや緩くなっているようだ。ところどころ液体が漏れてきている。この調子で何回か攻撃をすれば倒せそうだ。
「ダークアシッド」
「ダークアシッド」
「ダークアシッド」
・・・
何度か叫ぶ。スキル名が違うんじゃないかって?どうやらこれはスキルをイメージすれば実際に口にする言葉は何でもいいらしい。とりあえずかっこいい感じで「ダークアシッド」と言ってみただけである。
何度か攻撃すると、スライムは完全に動かなくなった。どうやら私の勝ちである。
ふぅ、と一息つき、ステータスに目をやる。ステータスにはわずかな変化があった。
ステータス
名前:藤澤 若葉
レベル:1
称号:中二病(最初のタイトル)
職業:SIer
生命力:12 / 15
魔力:7 / 10
力:2
体力:5
素早さ:3
知恵:2(+1)
運:1
経験値:1 / 10
スキル:SS(スクリーンショット) Lv1 3 / 10
酸(弱)(ダークアシッド(中二病)) Lv2 13 / 30
攻撃力:1
防御力:3
武器:なにも装備していない
頭:異世界のヘアゴム
体:異世界の服
足:異世界のスカート
靴:異世界の靴
経験値は、スライムだし+1でしょうがないか。。。酸(弱)はコメント付きでLv2になっている。中二病とはなんだ、失礼だな!称号効果なのか、知恵が+1になっているのはラッキーかも?
などと思いつつ、とりあえず私は異世界に来て初の戦闘で、なんとか勝利を収めたのであった。
次のお話はこちらになります。もしお時間ありましたらお付き合いください。
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