なぜ今、BtoB企業の社長はポッドキャストを始めるべきなのか? 市場データから読み解く「音声メディア」の可能性
こんにちは、BtoBマーケティングと営業コンサルティングを専門としている株式会社マイノリティ代表の柳澤大介です。
今回は展示会やSNSマーケティングではなく、「ポッドキャスト」についてお話しします。
最近、支援先の経営者の方からも「ポッドキャストってやった方がいいですか?」と聞かれることが増えました。結論から言うと、BtoB企業の社長こそ、いまポッドキャストを始めるべきだと考えています。
なぜそう確信しているのか。市場のデータと、私自身の実体験の両方からお伝えしていきます。
ポッドキャストを聞いて、仕事を発注した話
まず私自身の話をさせてください。
2年前にポッドキャストを始めた時は、正直ここまで市場が伸びるとは思っていませんでした。きっかけは自分がリスナーとして体験した出来事です。
いろいろなポッドキャスト番組を聞くうちに、そのパーソナリティの方々に対するエンゲージメントが自然と高まっていきました。声を通じて人柄や考え方が伝わるんですよね。テキストや動画とはまた違う、独特の親近感が生まれます。
そして実際に、ポッドキャストを聞いたことがきっかけで仕事を発注したことがありました。
その時に思ったんです。「自分がポッドキャストを聞いて仕事をお願いしたということは、きっとその逆も起こり得るはずでは…?」と。
これは絶対にくる。消費者の立場で実感していたからこそ、自分でも番組を始めようと思いました。
いま振り返ると、あの判断は正解でした。ただ、まさか市場全体がここまで活性化するとは思いませんでしたけどね。
世界5.8億人が聴く時代
ポッドキャストは海外ではすでに巨大な市場になっています。
現在、世界で5.8億人がポッドキャストを聴いており、2028年には7億人を突破する見込みです。アメリカではもう人口の半数以上が日常的に利用していて、生活に欠かせないインフラになっています。
日本はどうかというと、2025年2月時点の月間利用率は全体で17.2%。2020年の調査開始時が14.2%なので、緩やかに伸びているように見えます。
ところが、これを年代別に分解すると面白い数字が出てきます。

15〜19歳の利用率は34.0%、20代は27.3%です。若年層の利用率が突出して高いんですね。これはラジオ受信機を持たずにスマホで音声コンテンツに触れる「ポッドキャストネイティブ」世代が出てきているということ。
既存のラジオ聴取習慣が高年齢層に根強く残っている一方で、若年層はYouTubeやSpotifyを通じて音声コンテンツに触れているわけです。
日本全体でもアンテナが常に張っている層、つまりアーリーアダプターの方々は確実に聞き始めています。
私の周りでいうと、スタートアップの社長だとほぼ聴いていますね。日常の情報収集手段としてポッドキャストが定着している方が多いので、提案してもすごく話が早いです。
15年前のSNS黎明期に近い
この状況は、15年ぐらい前のSNSの黎明期と似ていると感じています。
X(Twitter)やFacebookが出てきた頃、一部のアーリーアダプターが先に始めていて、それが徐々にマジョリティに広がっていきました。いまのポッドキャストはまさにあの時のフェーズ。
企業が自社のアカウントで運営しているポッドキャスト番組は、まだ100にも満たないぐらいの数しかありません。一方のYouTubeには膨大な数のチャンネルがひしめいていて、エンタメ系の面白いコンテンツと同じ土俵で戦わなければなりません。
BtoB企業の社長が真面目に経営やビジネスの話をしたところで、YouTubeではそもそも再生されにくい。一般コンシューマー向けの派手なコンテンツに埋もれてしまうんですよね。
ところがポッドキャストはまだ参入者が少なく、しかもリスナーにはアーリーアダプター層が多い。情報感度の高い方々がじっくり耳を傾けてくれる環境がある。15年前のSNSの黎明期と同じような状況で、今始めればかなりのブルーオーシャンだと言えます。
音声なら、最後まで聴いてもらえる
ポッドキャストの強みとして最も特筆すべきは、エンゲージメントの高さです。
YouTubeの動画コンテンツだと、だいたい35%ぐらいしか最後まで視聴されません。途中で離脱する人がほとんどです。ところがポッドキャストは、全部聴いてもらえる率(聴了率)がYouTubeに比べてかなり高いのです。

確かに、私自身もポッドキャストは最後まで聴くんですよね。
この差が生まれる理由は、視聴スタイルの違いにあります。YouTubeは画面を見ているので、ちょっとでも飽きたら飛ばすボタンが押せてしまう。一方のポッドキャストは画面を見ていないから、最後まで聴き続けることに抵抗がない。移動中や家事の合間に「ながら聴き」できるのも大きいですね。
そして、このエンゲージメントの高さは購買行動にも直結しています。
日本のポッドキャストユーザーの65.1%が番組内で言及された情報を検索し、55.3%が実際に商品を購入したり店舗を訪れたりしているというデータがあります。他のSNS広告と比較しても極めて高いコンバージョン率で、「耳からの情報」が持つ信頼性の高さを裏付けています。
唯一の弱点は拡散性
とはいえ、ポッドキャストにも弱点はあります。
それは拡散性に欠けるという点です。SNSのように投稿がバズって一気に広がるということは起きにくい。知ってもらってフォローしてもらい、ファンになってもらうまで、結構時間がかかります。
ただし、一度ファンになっていただけるとエンゲージメントが非常に高くなる。先ほどのデータの通り、聴いてくれた人の過半数が行動を起こしてくれるわけです。
要はフロー型ではなくストック型のメディアなんですね。すぐにバズる即効性はないけれど、じわじわとファンが積み上がっていく。BtoBのマーケティングにおいて、この特性はむしろ強みになります。
BtoB企業にとって、ポッドキャストが特に効くのは「採用」
では、BtoB企業にとってポッドキャストは具体的にどのような効果があるのか。
うちの支援先でもポッドキャストの制作支援を20社程度やってきましたが、最も顕著に効果が出ているのは「採用」です。
私自身、以前はSNSを使った集客をメインに推していました。しかしポッドキャストで集客効果を短期的に出すのは正直なところ難しい。それよりも圧倒的に効いたのが採用だったんです。
具体的には、社長のポッドキャストを事前に聴いてから面接に来る応募者が増えました。
これはテキストの求人原稿ではなかなか実現できない効果です。社長の声で会社のビジョンや考え方を語ることで、応募者とのあいだに面接前から信頼関係の土台ができている。結果として、採用の歩留まりが大きく改善します。
特に採用の文脈でいうと、ポッドキャストを日常的に聴いている層はアンテナの高い方々なので、そういう方にリーチできるとすごく優秀な人材が採用できる可能性があるんですよね。
もちろん、採用だけではなく、組織力の強化にも効きます。社内外の人に社長の考え方を定期的に発信することで、社員のエンゲージメントが上がったり、取引先との関係が深まったりといった副次的な効果も見えてきています。
ポッドキャスト市場はこう変わる
最後に、少し先の未来について触れておきます。
たとえば2〜3年後に向けて、ポッドキャスト市場にはいくつかの大きな変化が予想されています。
1つ目は、AI生成コンテンツの台頭によって逆に「生身の人間」が語る言葉の価値が高騰するという点です。AIが作った番組が溢れるほど、リスナーは人間ならではの感情の揺らぎや予測不可能性を求めるようになります。
だからこそ、社長自身の声で語ることに意味がある。AIには模倣できない「人生の物語」や「経営者としてのリアルな考え」が、これからますます価値を持つようになるはずです。
2つ目は、検索行動そのものの変化です。GoogleでキーワードをSEO的に打ち込む時代から、AIエージェントに「このテーマについて30分で深く学べる対談を教えて」とリクエストする時代に移行していきます。
構造化されたメタデータや正確なトランスクリプトを持つ番組が、AIに選ばれるコンテンツになっていくでしょう。
そして日本市場に目を向けると、現在の若年層中心の普及が30代・40代・50代以上へと広がり、国内利用率は25〜30%に達すると見られています。
企業が自社で番組を保有する「ブランデッドポッドキャスト」の動きも加速します。テキスト(ブログ)や動画(YouTube)に続く、第3のオウンドメディアとしてポッドキャストが定着する未来はそう遠くないと見ています。
始めるなら、今です
ここまで読んでいただいた方はおわかりかと思いますが、ポッドキャストは今がまさに始めどきです。
市場は明らかに伸びている。エンゲージメントはYouTubeより高い。にもかかわらず、企業アカウントの参入はまだごくわずか。15年前のSNSと同じ状況で、先行者利益が明確に取れるフェーズにあります。
特にBtoB企業の社長が自らの声で発信することは、採用・ブランディング・組織力強化のいずれの観点からも有効です。
そして実は私自身、このポッドキャスト市場の可能性に確信を持って、新しいサービスを立ち上げることにしました。
それについては次回の記事で、新会社設立の経緯も含めてお話しします。
そんな私は2つのPodcast番組をやっています。
ぜひフォローして番組をお聴きください。
