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【高校受験:息子|ep10】進学するのは私じゃない

前回までのお話し



A校の見学を終えた帰り道。

「今のところここが第一かな」

息子がそう言った時、

正直、私はほっとしていました。

先生から薦められた学校。

私自身も、いい学校だと思った学校。

だからです。

けれど。

最後に見学へ行ったD校で、
息子は私の予想とはまったく違うことを言いました。



D校は、自宅からも通いやすく、

同じ中学校から進学する生徒も
多い学校でした。

ただ、今の息子の成績だと、

入学後も少し頑張る必要があります。

親子揃って参加する学科体験授業。

設備も整っていて、
校舎も綺麗でした。

ただ、授業の進み方や雰囲気は、
これまで見学した学校とは少し違っていました。

私は、

「息子にはどう感じるんだろう」

そんなことを考えながら見ていました。

体験が終わり、
帰り道で聞いてみました。

「どうだった?」

すると息子は、

「ここが一番よかったかも」

と答えました。

そして続けて、

「第一希望は、ここにしようかな」

と言ったのです。

思いがけない言葉でした。

どこがそんなに良かったのか。

その時は、詳しく聞いても
うまく言葉にならないようでした。

だから、その日はそれ以上聞きませんでした。



夏休みが終わり、

進路希望調査票を提出する時期になりました。

「どこを書くの?」

そう聞くと、

息子は迷わず言いました。

「第一希望はD校」

「第二希望はA校」

あの時の気持ちは、
変わっていなかったようです。

私は念のため聞きました。

「D校にするなら、
二学期も少し頑張らなあかんし、

高校に入ってからも勉強は頑張らなあかんよ?」

すると息子は、

「うん。頑張りたい」

そう答えました。



正直なところ、

私はまだA校の方が息子に合っている気がしていました。

自信を育てることを大切にしている学校。

先生たちの関わり方。

あの学校でなら、

息子はもっと安心して過ごせるのではないか。

そんな思いがあったからです。

息子はこれまで、

自分の特性をからかわれたり、

頑張っても勉強が思うようにできなかったりして、

何度も

「どうせ俺なんか」

と言ってきました。

そんな姿を見ながら、

私はずっと思っていました。

成績よりも先に、

この子には

「自分は大丈夫」

と思える経験が必要なんじゃないかと。

だからこそ、

私はA校に惹かれていたのです。

けれど。


進学するのは私ではありません。

息子です。



以前の息子なら、

「めんどい」

「どこでもいい」

そう言っていたと思います。

けれど、この時の息子は違いました。

完璧な自信があるわけではなかったと思います。

それでも、

自分で決めて、

自分で進もうとしている。

その姿が、

私にはとても頼もしく見えました。


私自身、

高校進学では苦い思い出があります。

自分の希望よりも、

親の考えが優先された進路でした。


だからこそ、

息子には自分で選んでほしい。

そう思いました。

「わかった」

「じゃあ、そう書いたらいいと思うよ」

「でも、自分で決めたなら頑張らなあかんよ」

「うん」

そう答えた息子を見ながら、

私は少し胸が熱くなりました。



その日の夕食。

娘も交えて進路の話をしました。

「応援するよ」

「頑張れ」

そんな言葉が食卓に並びます。

息子も、どこか嬉しそうでした。


けれど。

まだ一つ、大きな壁が残っています。

夫への報告と説得です。

私はその壁を思い浮かべながら、

夫にどう伝えるのが一番いいだろうと考えていました。

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