見出し画像

6. 部屋が空っぽになってしまった。

前の話はこちらです。

彼の部屋に遺品整理の業者さんが入る日。
あのソファもベッドも棚も、全部運び出されています。
一緒に作ってきた生活が、全部ガラクタになってしまいました。
彼の痕跡が、全部なくなってしまいました。

掃除が苦手な彼らしく、埃まみれです。
靴下は真っ黒。

わたしが彼の部屋の掃除をしようとすると、
「そんなのいいからゲームしようよ」って
ニコニコ言ってくるので、
ほとんど掃除ができませんでした。
今となっては、この埃すら彼のかけらのような気がしてしまいます。

最後に空っぽの部屋に頭を下げて出ました。
長い間ありがとう。
この部屋には本当にお世話になりました。
本当に楽しかった。
本当に幸せだった。
まだ来られると思っていました。

この街には、もう二度と来ないんだろうな。
いい街だったな。
寂しいな。
この前もぐるぐる歩きましたが、
一緒に歩いたあたりをぐるぐる歩きました。
またいつでも一緒に歩けると思っていました。

この部屋に引っ越した時、
彼は「一緒に住もう」って言ってくれたけど
「この広さでは無理」って断ってしまったんです。
住んでみたら、彼のものだけでいっぱいで
わたしが入る余地はありませんでした。
ほら、言ったとおりでしょ?
彼はばつがわるそうに頭をかいていました。

もっと広い部屋に引っ越して一緒に住みたかったよ。
やっぱりお互いの個室は欲しいよね。
だとしたら最低でも2LDKかな?
ゴミの分別が複雑じゃないところがいいな。
24時間ゴミ出しできるといいね。
宅配ボックスは必須だよね。
冷凍庫が大きい冷蔵庫がいいね。
食洗機どうする?
洗濯機は縦型がいいよね。
乾燥機買おうよ。乾太くんがいいらしいよ。
掃除機はパック式がいいんだけど、
トルネードがいいなら、ゴミ係やってね。
ティファールは温度が何段階かになってるのがいいよ。
ソファーっているかな?物置にならない?
お互い何があるかわかんないからさ、
家の中のことはきちんと共有しようね。
わたしが入院とかしてもちゃんと回せるようにしておこうよ。

そんな未来が全部なくなってしまいました。
これで全部おしまい。


いいなと思ったら応援しよう!