【家電恋愛小説】録音された“迷惑電話”の正体は彼でした|パナソニック見守り電話 VE-GD78DL-W と私の恋の話
母の家に、新しい電話を置いた。
パナソニック見守り電話 VE-GD78DL-W。
迷惑電話を自動で録音してくれるはずが……
そこに残っていたのは、まさか“彼の声なき想い”だった。
ぴかっと光って、声が届いた

「……今の、誰?」
糸島の母の家。
ぽかんと口を開けたまま、千尋は電話機を見つめた。
リビングの棚に置いた真っ白な受話器が、赤く光っている。
「乾燥にご注意ください!」
(え……しゃべった?)

母のために新しく設置した、ちょっと賢い電話機。
温度や湿度を感知して、危ないときにはLEDで光り、音声で注意をしてくれる。
それだけじゃない。
もし“熱中症注意”と判断されたら、自動でスマホに電話をかけてくれるという。
数日前、職場の後輩――岡崎くんに設定してもらったばかりだった。
「通知先、僕でいいですよ」
そう言われて、なんとなくそのままにしていた。
だから今――
ピロンと鳴ったスマホに表示されていたのは、岡崎くんの名前だった。
その声、すこし低くてやさしかった

「通知が来たので……お母さま、大丈夫ですか?」

電話越しの声は、いつもより少し低くて、やさしかった。
「だ、大丈夫です。ちょうど、私が今来てまして……えっと、ありがとうございます」
口調が自然とゆっくりになる。
胸のあたりがふわっとあたたかくなっていた。
「よかった。……千尋さんの声、ちょっとほっとします」
そんなことを言われたら、
こっちが危険信号です。湿度どころじゃないです。
録音されていたのは、誰の気持ち?

ある日、母から電話があった。
「なんか、変な電話がかかってきたの。でもね、この電話、『録音します』って先に言ってくれたのよ。そしたら、すぐ切れたの。すごいねぇ」
(ああ、迷惑電話防止機能か……)

この電話には、見知らぬ番号からかかってくると自動で警告し、録音までしてくれる機能がある。
心配になって、千尋はまた岡崎くんに録音を確認してもらった。
「無言電話ですね。最近、こういうの多いんです」
「でも、録音してくれるなんて……すごいなあ、この電話機」
「すごいのは、ちゃんとお母さんのこと考えて設置してあげた千尋さんですよ」
「え……そ、そんな……」
スマホの画面は光っていなかったけど、
顔のほうが赤く光っていた気がした。
数字の向こうに、名前をさがして

「表示を変えてみたのよ。温度と湿度が見えるようにしてみたの」
母がうれしそうに言う。
画面には、28℃と湿度63%が表示されていた。
それを見ながら、千尋は思った。
(わたし……この数字を見るたび、彼のこと思い出してる)
通知が来なくても、スマホを手に取ってしまう。
「岡崎くんから、連絡こないかな」って。
名前を探してしまっている自分に、気づいていた。
ほんとうは、“通知”じゃなくて

数日後、岡崎くんとカフェでお茶を飲んでいたときのこと。
ふと彼が、小さな声でこんなことを言った。
「……実は、あのときの無言電話。僕なんです」
「……え?」
「本当は、理由なんてなくても電話したくて。でも何もないのにかけるの、変かなって思って……。
だから、つい……無言でかけてみたら、まさか録音されてるとは思わなくて」
「……なにそれ……」
千尋は、頬を膨らませながら、少しだけ笑った。
「それ、迷惑電話じゃないですか」
「……ですよね。すみません。でも、もうちょっとだけ“通知”のままでいたかったんです」
彼の声が、静かに、でもまっすぐに胸に届いた。
エピローグ 赤く光らなくても、届く声

母の家の電話が、また赤く光った。
「熱中症にご注意ください」
それと同じように、スマホにも通知が届いた。
でも今は、通知がなくても。
彼の声は、ちゃんと届いている。
「今日の午後、少し涼しくなるみたいですよ。
……そろそろ、“録音なし”で、会いませんか?」
千尋は、小さく「はい」と声に出した。

もうアラームが鳴らなくても、
あなたの声は、私の心の真ん中にいる。
読んでいただき、ありがとうございました。また次回もお会いしましょう!
◇ 家電恋愛小説 ◇
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